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知と記憶の回廊を抜けて:異世界で二度目の生を  作者: 三木 天
獣人編

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第三十六話 夜の狩人

集落を出た翌日。

以前日光の実を採った場所にまでたどり着いた。

眼前には広大なサバンナが広がっている。

そして以前にも見た、大きな都市。

おそらくだが、あそこが獣人族の最も大きな拠点だろう。

集落の見張りが言っていた闘技場に行けば、獣人族の強さというのが分かるかもしれない。

皆が皆ガデムのような強さは持っていないだろう…きっと…


マーラに作ってもらった装備を早速つけて、いざ新バイオームへ。

と、意気揚々と踏み込んだものの、暑い。

とにかく暑い。

森から平原に出た途端、体感の温度がグッと上がった。


「森を出てから暑いね」


「そうね」


しばらく移動して二人が音を上げた始めた。

装備を付けていてこれなら、無い状態でこの場所を旅していたと思うとゾッとする。

風も乾いているからか、涼しさを感じない。


「ねえ、ここって夜になってから移動するのはダメなの?」


「そうしたいのは山々だけど、俺のイメージ的にこの土地柄は夜に活発になる生き物が多いイメージがある」


「そんなの私が全部切ればよくない?」


「明かりが大してない夜に移動するのが危険なのはお前も分かってるだろ?」


前世のイメージだが、サバンナって夜行性の肉食獣が多いはず。

似たような生き物がこの世界にいてもおかしくない。

明かりもないから余計にだ。

だがこの暑さの中、このままではキツイ。

何か案はないか?



思い出した。

前世でやっていたこと。

早速背負っている荷物を下ろし、中に布の余りがあるのを確認した。


「アル君、どうしたの急に?」


「暑さ対策をしようと思ってね。シャーリー、これを三人分に切ってくれ」


「うん」


シャーリーに布を渡すと、彼女はきれいに三等分してくれた。

その間に土魔法で水を入れる器を作った。


「これでどうする気?」


「まあ見てろって」


作った器に、水と氷の魔法で冷水を入れる。

そしてそこにシャーリーが切り分けてくれた切れ端を浸した。

そう。

冷えタオルを作ったのだ。


「二人とも、これを首に巻いてみろ」


「これすごく冷たいけど、これを首に巻くの?」


不思議そうにしながらモナ、そしてシャーリーが冷えタオルを首に巻く。

ついでに俺も。


うん、作って正解だな。

これがあるだけで体感の温度が変わる。

こんな簡単な対策をすっかり忘れていた。


二人を見ると、二人も気持ちよさそうな表情をしていた。


「これ、冷たくていいわね」


「ね!これならさっきよりは楽かも!」


「作り方も簡単だから、冷たくなくなったら言ってくれ」


「私は自分で作れるわ」


「そうだな、シャーリー分かったか?」


「うん!」


満足そうで何よりだ。

この調子なら、この先も大丈夫そうだ。


見立ての通り、森から見えた拠点へ今日中に着くことが叶わなかったので、野営をすることに。

今夜は一応警戒のため、代わり番で見張りをすることになった。

最初俺が見張り番だった。

日中と夜では雰囲気の変わるこの場所。

遠くで不気味な声が聞こえることもあった。

火を決して消さないように注意しながら警戒をする。

自分たちのテリトリーだけでも明るくしておかないと、一寸先は暗闇だ。

多少月や星の明かりがあるとは言え、微々たるもの。

現地に住む生き物はこれを利用する。

自然とはそういうものだ。


「アル君、そろそろ代わるよ」


そんな警戒もむなしく、特に何か起こるわけでもなく交代の時間になった。


「何かあったら遠慮なく起こしてくれ」


「うん。おやすみ」



「アル…アル君!」


シャーリーの呼び声に俺は目を覚ました。


「なんだか気配がする、モナを起こして」


その言葉で一瞬で眠気が飛んだ。


「分かった」


返事と同時にシャーリーが武器を手に戻っていった。

隣で寝ているモナの体をゆすって起こす。


「モナ!起きろ!何か来ているらしい」


「んっ……ん?」


「しっかりしろ、いつも早起きだろ!」


「起きてるから少し静かに…」


どう見ても寝起きすぎて覚醒してないように見えるが…


「で?どうしたの?」


「シャーリーが何かを察知したらしい」


「ん。ちょっと見てみるわ」


そう言いモナは、魔力探知を発動した。

すると一気にモナ目が開き、顔つきが変わった。


「まずいわね」


「魔物か?」


「ええ、囲まれているわ。数は8といったところね」


群れを成す魔物か、厄介だな。

すぐさま装備を整え外に出ると、シャーリーはすでに戦闘態勢に入っている。


「来たね二人とも、敵はもう近いとこまで来てるよ」


装備を整えながら使った探知魔法で敵の位置は俺も把握している。

きれいに包囲されている。

かなり組織的な動きをしているのだろう。

動き出そうにも動けない。

シャーリーもそれは分かっているから動いていない。


「ねえ、どうするの?いつかは動き出さないと向こうから仕掛けてくるわよ」


「こっちから仕掛けたっていうのが最初に分からないように出来れば良いんだけど…」


誰が動いても、敵はその隙をついてくるだろうというのが何となく分かる。


「そうだ」


俺にはあるじゃないか。

敵に悟られない攻撃方法。

しかも最近改良できたおかげで、欠点だった威力の改善もできている。


「風の斬撃ならそれができるな」


「たしかにそうね」


「アル君、一発かましてきて!」


敵の包囲網の配置は、正面に3体、そして俺たちの後方を囲むように5体が配置されている。

ならまずは正面の3体だ。

相手は正面に主戦力を固めて置いている。

最強の攻撃陣がいるが、ここを急に突破したら崩せると踏んだ。


魔力を剣に巡らせ、斬撃の形を形成する。

その形成した斬撃に風属性を乗せ、炎属性をさらに乗せる。

行ける、そう確信した。


「俺が正面の3体にまず攻撃する、そのあと動き出す後方を二人に任せる」


「わかった」「わかったわ」


都合よく3体倒せればすぐに援護に向かう。

作戦は完璧だ。


「行くぞ」


その言葉と同時に俺は、2属性の斬撃を放った。

まとめて葬りたいので、横に一閃した。


攻撃は命中した。

敵は正面から燃えながら切られていった。

しかし真ん中の1体はなんと避けたのだ。


「まじか」



斬撃は横にいた2体が少し前に出ていたんだろう。

その二人がやられるのを確認して攻撃を避けた。

そこで前にカエルが言っていたことを思い出した。

群れを成す魔物のリーダーはほかの個体より強い場合があると。

ならあの残った奴はおそらく群れのボスだ。


後方では、すでにシャーリーとモナが戦っている音がしている。

今すぐ援護に行きたいが、目の前の魔物を倒してから出ないと行けない。

本当にボスなら、3人そろって喰われる可能性が出る。



俺がやらなくてはいけない。



ああ、やってやるさ。

この程度の敵、倒してみせる。

これよりもっと強い存在を俺は知っている。

それと比べたら可愛いもんだ。


魔物がこちらに向かって動き出した。

その動きはなにやら左右に移動しながら迫ってくる。

暗闇でよく見えてないが、魔力探知で見え見えだ。


そして茂みから飛び出してきた。

魔物は前足で掴むように飛んできた。

それを冷静に切り落とした。

だがそれに怯まずそのまま噛みついてきた。

だがそれを躱し、懐に直接手で魔法を送り込む。

その魔法は、電気玉(プラズマボール)だ。

内部に貫通する魔法を直接送り込んだことで、魔物は一撃で絶命した。


「ふう」


おっとまだ戦いは終わっていない。

そう思い振り返ると丁度最後の一匹を仕留めているモナが目に映った。


「そっちは終わったのか」


「ええ、アルケウスは無事?」


「怪我一つないよ、そっちも大丈夫か?」


「シャーリーも私も平気よ」


なんとか夜襲を無事乗り越えれた。

二人の戦いもなかなかのものだったらしい。

動き出した魔物は一斉に来ず、タイミングをずらして来たらしい。

シャーリーがそれに手を焼いたもの、モナの完璧な援護で事をなしたとか。


落ち着いたので魔物を確認したが、なんなのかさっぱり分からなかった。

多分見た目てきにハイエナに近いなにかだろう。

とりあえず明日着くであろう獣人族の拠点で売れないか試そう。


その後は、モナに見張りを変わってもらい、俺とシャーリーは眠りについた。

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