第三十五話 過酷な地への旅立ちまで
素材採取をしに、集落を出てから二日が経過した。
涼か草はそこらに沢山あったので問題なし。
フォレストリザード、これもモナの魔力探知ですぐに見つかったので完了している。
ただ最後の素材、日光の実だけがいまだ見つからない。
マーラの言う通り、獣人たちの本拠地のある西の方へひたすら移動しながら探しているが、まったくそれらしき物が無い。
見た目は特徴的だから直ぐに分かると言っていたが、そんな特徴的なものは一向に見当たらない。
そして唐突に森が開けた。
その先に広がる景色は、灼熱の砂漠ではなかった。
森のある大地から一段低い位置に広がるサバンナだった。
生い茂っていた木々が、点々と生えているような環境に、森にいた時とは明らかに違う乾いた空気が吹いている。
少しだけ足を踏み入れて分かった。
あまりにも熱い。
森にいたときは木々に遮られていて、体感の温度は低く感じていた。
しかしそれらが無くなった途端、直接浴びる日の光の暑さに驚愕した。
「たしかにこの暑さは、対処しないとキツイな」
「うん…私もこの暑さの中はなかなかしんどいかも」
シャーリーも根を上げている。
「そうね、私もその装備作ってもらおうかしら」
大丈夫と言っていたモナまでも作らないと、と思うほどなのだ。
装備の重大さを確認して森に戻ろうとした時、遠くに明らかに青い森に似つかない、黄色の葉をつけている木が視界の端に写った。
もしやあれではないか?
「なあ二人とも、日光の実ってあれじゃないのか?」
指さした先を見た二人の顔に笑みが見えた。
「そうじゃない?きっとあれだよ!」
「行ってみましょう」
日光の実のありそうなところに向かうと、そこにはサバンナへ続く斜面に沿って生えている木々が広がっていた。
この木は森の木々と比べるとかなり低い。
そして実を付けている。
日光を多く含んでいるような神々しい実が。
誰が見てもこれだろうと分かるぐらいだ。
「これだよね?」
「これだろうな」
「これね」
三人で確認した後、早速実を回収していく。
「ねえ二人とも!こっち見てみてよ!」
回収中に突然シャーリーに呼ばれた方へ向かうと、さらにとんでもないものが見つかった。
明らかな人工物の塊で、俺たちが初めてみた集落とは比較にならない規模の集落。
一目見て分かった。
ここが獣人族たちの本拠地なんだろうと。
サバンナの中に堂々と佇む集落。
近いように見えているが、今の地点からでも1日はかかる距離はあるだろう。
拠点なんていうもんだからもっと小さいと思っていたが、その大きさは人族の大国の都市に匹敵するほどだろう。
「あれが闘技場があるって言っていた拠点なのかしら」
「おそらくだけどな…」
「大きいね!」
おっといけない。
感傷に浸っている場合ではないな。
早く実を回収して戻ろう。
当初はモナの分は作る予定はなかったが、本人が欲しがっているので多めに回収しつつ、帰り道にほかの素材も追加で採っていくことにした。
行きは数日かかったところ、帰りは1日で集落にたどり着いた。
どうやら真西に進めば、日光の実が生えているところがあったようなのだが、俺たちは少しづつずれていっていたようだ。
というハプニングが判明したが無事に素材を届けると、マーラに数日待っててくれと言われた。
さて待っている間何をしようか…
シャーリーはガデムと一緒に狩りに行ったりしている。
「俺たちはどうする?」
「魔法の研究でもしたいんだけど、ここでできるものでもないのよね」
まだ警戒されているかもしれない他所の種族の拠点で、魔法の研究などしてみろ。
すぐ追い出されるかもしれない。
そんな懸念点があるので、現状俺とモナは手持ち無沙汰だ。
やることがないかを考えていると、ふとガデムの寝床が目に入った。
屋根と干し草だけの自称家らしいこの場所。
なんだか家畜のような生活感だ。
ならばこれを改善してあげるのはどうだろうか。
マーラに対してのお礼ではないが、ガデムはこの集落でも大切にされている感じはする。
彼へのお礼とすればいいだろう。
だがそれをするには、集落の人も俺と同じことを悩んでいるかを知る必要があるな。
早速集落の人々に聞いてみると、やはりみな同じことを思っていたようだ。
改善できない理由は、まずガデムの体が大きい故に普通の家では入れないこと。
次に、彼自身の力が強いので扉を開けたり等の仕草が苦手らしい。
なので本人がそもそも拒絶しているのだそう。
ならそれらの条件のある家を建ててあげよう。
モナに相談し、二人で合作を作ることになった。
家といっても、大層なものにはしない。
土魔法でドーム状の強固な壁を作る。
イメージとしては大きめのイグルーを作る感じだな。
中も干し草を敷き詰める。
少し地面からの高さを変えて、雨が降っても濡れないようにもした。
入り口はガデムの大きさを考慮して高さは4メートルほどにした。
もちろん扉はついていない。
空気の通り道をよくできればと思い少し窓のような穴も開けておいた。
そんな感じで1日ほどで家が完成した。
魔法で作れば、専門的な建築の知識がなくてもある程度簡素なものなら構築できる。
土魔法の壁もガデムの力を考慮して、俺とモナで合わせて作ったからそれなりに頑丈なはず。
全力で壊そうと思ったら壊されるとは思う…が、とにかく大丈夫だろう。
俺たちの装備が完成したそうだ。
マーラの所へ受け取りに向かう。
「これを頭に被ればこの先も問題なく旅を続けられるよ」
そういって出て来たのは、白いターバンのようなものだった。
ターバンのように分厚くはなく、首元まで覆える装備だ。
「これを付ければ、日の光を反射しつつ風通しの良くなる加工をしてあるから、向こうの気候でもかなり快適になるはずだよ」
被ってみるとかなり軽い。
本当にこんなので効果があるのだろうかと疑問を抱くほどだ。
「ありがとうマーラさん」
「いいんだよ。旅の無事を祈っているよ」
「お礼といっては何だけど」
「お礼なんていいよ、素材はあんたたちが集めてきてくれたものだしね」
「そうもいかないので」
そう言ってマーラさんを外に連れ出し、先日立てたガデムの家を見せた。
「これは…」
「ガデムの新しい家です。彼の寝床を少し改善させてあげられればと思い作りました」
「これはすごいね。どうやって作ったんだい?」
折角なので魔法での工程とかをマーラに伝えた。
するとかなり驚いた。
「魔法ってすごいんだねぇ」
「すみませんマーラさんへのお礼ではないんですけど」
「いいんだよ、ガデムは集落一員なんだ。一員の者へのお礼なら集落全体へのお礼と同義だよ」
そういう考えだったのか。
ならよかったな。
「改めて私からもお礼を言わせてくれ、ありがとう」
「こちらも改めて、ありがとうございます」
その後、狩りに行っていたガデムに新しい家を見せると、大層喜ばれた。
サバンナ対策の新しい装備を二人に見せると、俺の時と同じような反応をしていた。
翌日集落のお世話になった人たちに見送られながら集落を後にした。
「じゃあねガデム!元気でね!」
「バイバイ、シャーリー!アルケスス、イエ、アリガトウ!」
なぜか俺の名前だけ言えてなかったが…




