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知と記憶の回廊を抜けて:異世界で二度目の生を  作者: 三木 天
獣人編

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第三十四話 集落と旅支度

食事を終えたところで次に何をするべきか。

そういえば目の前のガデムは獣人族、なら拠点の位置がわかるかもしれない。

そこでガデムに聞いてみた。


「オレ、ミンナガスムトコロ、ワカル」


「俺たちそこに行きたいんだけど」


「ワカッタ、ツイテコイ」


ガデムが立ち上がったので急いで俺たちも移動の準備をした。


移動中、唐突にモナが小さい声で囁いてきた。


「ねえ、アルケウス」


「どうした?」


なんだかかなり真面目な話をしそうな声色だ。


「ガデムなんだけど…魔力がないわよ」


「…はい?」


またですか?

なんだか常識が崩れていきそうだ。


「魔力を持ってない生き物なんているのか?」


「本来はいないはず…こうも短い期間で二度も体験すると狂うわね」


「本当に持ってないのか?」


「ええ。加護の力でゼロと出てるわ」


「また実は隠し持っているとかの可能性もあるよな?」


「そう思いたいけど、ゾルディとガデムが一緒の力とかを持っていると思う?」


そう言われると、否定したくなる。


「もしかしたらそれこそ獣人族特有の魔法とかが関係したりしないのか?」


「私たちが知らないだけで、その可能性もあるわ」


ゾルディは、こういうのを体験させるために俺たちを阻んだのか?

だがこの世界の常識的に、魔力を持たない生き物、魔力を隠蔽する魔法なんて無い。

魔王が使ってくるとか?

それとも魔王がそもそも魔力を持っていないとかか?

どちらにしても謎は深まるばかりだ。


しかしその後俺たちは、ガデムの強さを知ることになった。

数日間森を歩き続けていた。

その間にも魔物の襲撃は何度もあった。

しかし、襲われる度ガデムが真っ先に標的になることがほとんどだった。

おそらく体が大きく鈍感そうだから目立っていたのだろう。

だがガデムはそれらを気にしていないようで、襲い来る魔物の攻撃を受け続けていたのだ。

防ぐ素振りも無くだ。

なのに、ガデムの体は一切傷つかなかった。

攻撃を受け、そのまま魔物を掴み、力でつぶしたのだ。

初めて会った時の血まみれの姿は、ガデム自身の血ではなく、魔物の返り血だった。

それほど頑丈で力強い。

さらに魔術は一切使わなかった。

いや、使ったことがないのだろう。

モナが魔法を発動させた時に驚いていた程だ。


「ねえガデム、君は魔法を使わないの?」


「オレ、マホウ、ワカラナイ」


「そうだよね!私もわからないから苦手なんだよ!」


なんかシャーリーは意思疎通ができているのか、ガデムと仲良くなっている。


「あの二人、意外と気が合うのかしら?」


「そうっぽいな」


似たもの同士…なのかもしれん。



―――

「ココダ」


ガデムがそう言うと唐突に森が開けた。

現れたのは拠点というよりは、小さな集落といったところだ。

家の様な建物が10あるかぐらいの規模だ。


「おうガデム、帰ったか…ん?なんだそいつらは」


「俺たちは冒険者です」


「ここには何しに来た?どうしてガデムと一緒にいる?」


やはり他種族だから警戒されているのだろうか。


「分け合って世界を旅している道中でして、ガデムとは数日前にたまたま出会いました」


「本当か?ガデム」


「ウン」


嘘は言ってないが、なんだか入れるか怪しい雰囲気だな…

情報収集ぐらいはしたいなぁ…


「まあ、ガデムが連れて来たならいいだろう」


あれ?今の空気は何だったんだ?


「ただし少しでも怪しい行動をしたら、すぐにたたき出すからな」


「肝に銘じます」


怪しい行動なんてするつもりなんかないが、とりあえず入れるならいいか。


「二人とも、俺はこの人と少し話をしてから行くから先に行っててくれ」


「わかったわ」


「はーい!」


俺は見張りの人に色々聞きたいのでこの場に残ることにした。


「で?兄ちゃんはなんで残ったんだ?」


「実は少し聞きたいことがありまして…」


そこで見張りの人に、事情を話した。

やはり予想通り、ここは種族の拠点ではなく離れた集落らしい。

もちろんリオンという人物もここにはいない。


「俺たちはある人に一方的に負けまして、そこで他の種族の強さを知るといいと言われたんです」


「なるほどな。それならなおさらリオン様のいる拠点に行くべきだな。あそこには多くの戦士がいるし、強さを競う闘技場なんかもあるからな」


場所を聞くと、この集落から西に向かって数日進めば森を抜けられるらしく、抜けるとすぐにわかるところにあるのだとか。


「一応注意点だが、気候が変わるからその服装だと厳しいと思うぞ」


「どう変わるんですか?」


「リオン様のいるところは木々が少なく日の光を直に浴びる。頭とかをその光を遮れる装備がいい。もし持っていないのなら、集落にマーラというばあさんがいるから頼んでみな」


「分かりました、ありがとうございます」


「気をつけてな」


気候が変わる。

この森の気候は、木々に日光が遮られているから、蒸し暑いという感じだ。

風は涼しいけどね。

それが変わって木々が少なくなるのであれば、砂漠とかなのだろうか?


モナたちと合流して、見張りの人との会話の内容を共有した。


「私は帽子をかぶっているから問題はなさそうね」


「私はないとやばそうだね」


とりあえず一旦は俺とシャーリーの装備が怪しいといったところか。


「ところでガデムは?」


「ここが寝床だって言って、用事があるのかどっか行っちゃった」


え?ここが寝床?

干し草と屋根しかないこんなところがか?

他の人たちは普通に建物に住んでいるのに…

なんて思っていたら、ガデムが戻ってきた。


「ガデムの寝床なのか?ここ」


「ソウダ」


「こんなものでいいのか?」


「オレ、ズットコレ、ダイジョウブ」


そうか。

本人が言うのならいいか…

とりあえずマーラという人物の所を訪ねてみよう。


この集落はそんなに大きくないから、すぐに見つかった。

年老いた優しい印象のおばあさんだった。

簡単な挨拶を済ませ、さっそく装備の作成ができないか聞いてみた。


「そういうことなら作ってあげたいんだけど、作るための素材を今切らしていてねぇ。それを採ってきてくれればすぐにでも作れるよ」


「その素材ってなんですか?」


「涼か草、フォレストリザードの皮、日光の実(ひこうのみ)の三種類だよ」


うーむ。

皮は魔物だろうというのは分かるのだが、他二つの植物に関しては初めて聞くな。


「その草と実はどのあたりにありますか?」


「涼か草は風通りのよいこの森ならそこらに生えているよ。日光の実は日当たりのいい場所に生えている木だね。両方ともかなり特徴的な見た目をしているからすぐにわかると思うよ」


「涼か草って白い見た目のですか?」


「そうだね、旅をしてきたのなら頻繁に見たはずだ」


この森に入ってから頻繁に見ていたのであまり気にしていなかったが、白い花を咲かせていて、花弁が透き通ているように見える花だ。

あれのことだっとは予想外。

この素材はすぐに採取はできるだろう。


「日光の実はどのあたりにあるとかありますか?」


「そうだねぇ…リオン様のいる拠点方面に近づいて行けば見つかりやすくなると思うよ」


やはり砂漠になるのだろうか。

仮にそうなら装備は揃えて行かないといけないかもな。


「ありがとうございます。早速摂りに行ってきます」


「気を付けてねぇ」


というわけで素材採取のクエストを受注したわけだ。

早速向かうとしよう。


「とりあえず、素材を採りに行かないといけないわけね」


「そうだな」


「ガデムも行く?」


「オレ、ココマモラナイト、ダカライケナイ」


「そっかぁ…」


シャーリーが落ち込むほどとは、よほど気に入っていたのだろう。

だがガデムが来ないのは個人的にも残念だ。

彼は強い、間違いなく。

魔物と戦ううえであまりにも心強い。

けどガデムにもこの集落で役割があるのだろう。

無理強いはできないよな。


「じゃあ俺たち三人で行くか」


「そうね」

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