↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
知と記憶の回廊を抜けて:異世界で二度目の生を  作者: 三木 天
獣人編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/45

第三十二話 故郷で得たもの

「はい、どちら様…アルか?」


そう言いながら出て来たのはカエルだった。


「ただいま。母さん」


「ああ、おかえり」


見た感じ元気そうだな。


「それと、シャーリー?」


俺の後ろに縮こまって隠れているシャーリーの肩が、ビクッと動いた。


「えっと…ただいま…?」


「後で話してくれるよな?」


「はい…」


あれ?怒ってる?

まあ、怒られるの俺じゃないしいいか…


「それでアル、後ろの魔術師は誰だ?」


「紹介するよ。俺のパーティメンバーの」


「モナ・マナリアです。初めましてアルケウスのお母さん」


「カエルだ、よろしくなモナ」

「せっかく帰ってきたんだ、とりあえず中で話そう」


「そういえば父さんとジルは?」


「バルドー王国の学校に通っているジルの迎えだ」


ジルは王国の学校か。

前から勤勉だったし、将来はレイルに似て学者にでもなるのだろうか。


久しぶりの我が家はあまり変わっていない。

まあ一年ちょっとしか空けていないからな。

なんて考えている横でシャーリーは一生懸命弁明していた。

勝ったからとか会いたかったとかなんとか…


カエルに冒険者ランクがAであることを伝えるとそれはもう驚いていた。

カエル自身はCランクで終えているしな。

それにしても、旅を通して分かった。

カエルの実力はCランクなんかじゃない。

低く見積もってもBランクだ。

というのを伝えたが本人は相変わらずだ。


「(ねえ、本当にあんたのお母さん強いの?)」


「(本当だよ。だから俺はシャーリーが母さんに勝ったというの疑ってる。それぐらい強い)」


「(へえー。あとはあんたに魔法を教えた人にも興味あるわ)」


ヴィヴィか…

あの人今村にいんのか?

お金ないとしばらく依頼こなし続けて帰ってこないからな…


「(村にいたら紹介するよ)」


とりあえずシャーリーとカエルの問答が終わらなそうだから、実力を見せる口実で終わらせてもらおう。

ついでにモナにカエルの強さを見せられるしな。


「二人とも、俺から名案がある」


「どうした?」


「母さん、シャーリーは俺のところに来た時に、剣で母さんに勝ったから来たと言った。けど俺はそれをこの目で見ていない。だから今から二人に実際に戦ってもらう。もしシャーリーが勝つことができたのなら、許してやってくれない?」


「そうか……」


「いいねアル君!それで」


「シャーリー?静かにしてくれな?」


「まあ、いいだろう。ただし私が勝ったら」


あれ?そんな展開は予想外だな…


「シャーリーとアルにきついお仕置きをしてあげよう」


なんで俺まで!?


「俺も!?」


「もちろんだ。お前たちは兄弟弟子のようなものだろう。連帯だ」


シャーリー!

絶対勝ってくれ!

兄弟子として応援しているぞ!


というわけで早速カエル対シャーリー、救いか罰かを決める模擬戦が行われることになった。

といってもルールは簡単。

純粋な力と力のぶつかり合い。

魔法は禁止。

といっても二人は使わないが。

体のどこかしらに木刀が一撃でも入ったら負け。

以上だ。

そして俺とモナは庭の少し離れた位置でテーブルを囲んで座っている。

茶という名の水を飲みながら観るのだ。


「アル、合図を頼む」


「二人とも準備はいいか?」


沈黙、即ち同意


「はじめ!」


俺の合図と共に両者が動く。

初めから激しい撃ち合いだ。

お互い激しく、攻撃し合い、防ぎ合いの攻防。


すごいなシャーリー。

本当にカエルに勝ったのだろう。

そう思えるほど、俺の記憶にある二人の戦いとはかけ離れていた。


「あんたのお母さん本当に強いわね」


「あれで元Cランクの冒険者。強さだけなら絶対それ以上だよな?」


「私たちに紛れても遜色ないわよ」


モナもそう思うよな。うん。


そして決着は唐突に到来した。

なんと二人の木刀がぶつかり、共に折れたのだ。


「あっ…折れちゃった」


「そうだな…アル、どうだった?」


どうだったとは?


「私たちの試合を見て、シャーリーが嘘をついていないと思ったか?」


たしかにそうだな。

あれだけスゴイ試合を見せられたんだ。

モナにも聞くように顔を見た。

彼女も納得できたようで、頷いてくれた。


「シャーリー、疑って悪かったよ」


「じゃあ…!」


カエルが頷き、言った。


「お咎めはない」


「やったぁー!」


その日の夕方に父レイルと弟であるジルが帰ってきた。

出会ってすぐにジルは俺に飛び込んできた。

ジルは今は八歳で今年九歳になるはずだ。

そんなジルに最近ハマっているものは何か聞くと、歴史の勉強なんて言ってきた。

正直驚いたが、シャーリーも同じような顔をしていた。

見たことのない人、つまりモナを見たジルは早速彼女に懐いたのか、根掘り葉掘り質問している。

小さい子の相手が慣れていないのか、あたふたしているモナを見るのは面白かった。


夕食は久しぶりの家族そろってで食べた。

もちろんモナも一緒にだ。

久しぶりの我が家の料理はおいしく感じた。

そういえば、カエルとモナが一緒に料理をしていたのか、いつの間にか二人の距離が近くなっていた。

まあ、馴染めているようで安心したよ。


夜になりジルとシャーリーは先に寝た。

4人になった俺たち。

そこで俺とモナはあることを二人に聞いた。


「二人に聞きたいんだけど、ゾルディって人のこと知ってる?」


しかし二人そろって誰だ?という顔をした。

そこで経緯を話した。

魔王を倒しに行く途中で遭遇したゾルディのことを。


「私は特に心当たりはないな。すまん」


「ハーフエルフだったんだよな?本当に?」


どうやらレイルはもしかしたらがあるのかもしれん。


「そうですね。あの特徴からして間違いないかと」


「父さんは何か心当たりでも?」


「いや、モナさんがそう言うなら違うかもしれないけど、不死魔族だったんじゃないかと思ったんだよ」


不死魔族?なんだそれ。

名前からして魔族なのは分かるが…

不死?ということは不死身ってことか?


「父さん、そいつらって何?」


「王国の歴史書で見たぐらだし、稀に遭遇したって話を聞いたことある程度だけど、世界には4体の不死魔族がいるらしいんだ。その強さは常軌を逸している強さで、名前の通り死なないらしい」


「そんなに強い魔族がいるのに、どうして争いが続いてるんだ?」


「王国の歴史書に、戦争にそもそも参加していないと記載があったなぁ」


「見た目の特徴とかないの?」


「よく聞くものだと、青白い肌に白い髪だったとかか?」


あまり情報はないのか。

だとしてもあのゾルディとは特徴が合わない。

常軌を逸した強さっていうのは合っているが…


「おそらくちがうでしょう。ゾルディの見た目の特徴はまさにハーフエルフそのものでした」


「なあ、そのハーフエルフの特徴ってなんなんだ?」


「本来のエルフは尖った耳を持っているけど、その耳が横に広がっていること。ゾルディは後ろに伸びていた。これはハーフエルフによく見られる特徴よ、それに髪色もエルフにはない色だったし」


へえ、そうなのか。

そんな見分け方があったんだな。


「そもそもあんな所にいるのもおかしいのよ」


「どうして?」


「旅の道中でもそうだけど、他の種族ってあまり見なかったでしょ?」


「たしかにな」


「あれには理由があるの」


理由?なんだろうな。

この世界には奴隷とかの文化は今のところない。

まあ見たこと無いだけでそうとは言い切れないが、とにかくまだ見たことはない。


「他種族って、自分のテリトリーの外に行っても得られるものより失うものが多いのよ」


「例えば?」


「エルフで言うなら、精霊と一緒に住んでいてその恩恵を受けて暮らしている。それが彼らの領域から出ると受けれなくなるそうだよ」


レイルが唐突に口をはさんできた。


「詳しいんだね父さんは」


「まあ、一応知り合いにエルフ族の人がいるからな」


それは初耳だ。

ぜひ一目本物を見てみたい。

って思ったけど、旅のルート的にエルフ族の領は通るから見れるな。うん。


結局、ゾルディの正体については謎が深まるばかり。

やっぱり次に会ったときに直接聞くしかないのだろう。



―――

モナがヴィヴィにどうしても会いたいと言うので、家にやってきた。


コンコン…


ノックをしても返事がない。


「留守なの?」


「一応確認するかぁ。モナ、こっちへ」


こういう時にもう一つある確認方法。

寝室直通の窓から確認すること。

早速中を見てみると、いた。

やはり寝ている。

相変わらずだ。


「この人がそうなの?」


「こう見えてBランクでソロ冒険者…」


「信じられないわね…」


「ちょっとまってて」


モナを少し後ろに下げてから、窓を思いきり叩いた。

すると体をビクッとさせベッドから落ちた。

顔を上げこちらを見た。

すると寝起きの顔がみるみる笑顔になった。


バーン!


「アルケウス!いつ帰ってきていたのかしら?」


「昨日です先生」


「あら、その呼び方をされたのは久しぶりね。フフフ」


相変わらずの妖艶さだな。

この人40超えてるはずなんだけど…


「あら?後ろのかわいこちゃんはどちら様?」


「初めまして、モナ・マナリアといいます」


「これはご丁寧にどうも。私はヴィヴィ・ドレイクよ」

「それで?この子とはどういう関係なの?アルケウス」


「どういうって、パーティメンバーだよ?」


「ふーん」


ん?何?その目?

なんか如何わしい関係性でも疑っているのか?

本当に何もないのだが…


「モナって名前、確か王国の宮廷魔術師の名前と一緒ね?」


「私がその魔術師です。正確には元ですが」


「やっぱり。一年ぐらい前にやめちゃったって王国で噂になっていたものね」


そうだったのか。

まあ当然か。

国に使えていた魔術師が突然やめたのだから。


「まさかアルケウスと一緒に冒険者やっているだなんて。あなたたちパーティ名は?」


「魔断の集いって名前だよ」


「本当に?Aランクになったって噂の?あのパーティはあなた達だったのね、納得したわ」


そうなのか。

噂になっているのか。

俺たちあまりその辺気にしてないからな…


「それで?そんなAランクの冒険者様たちが、Bランクの私に何か御用?」


「モナが魔法の先生に会いたいっていうから連れて来たんだ」


ん?待てよ。

ふと思ったが、いい機会じゃないのか?


「あと、先生と作った剣から飛ばす魔法について相談があるんだ」


「懐かしいわね、それで相談って?」


「どうにも複数の属性を纏おうとするとうまくいかないんだ」


「なるほどね、一緒に模索しましょうか」


それから数時間三人で繰り返し模索と実験を繰り返した。


「ねえアルケウス。今までどうやって属性を纏わせていたの?」


「それは先生も知っているでしょ?剣に直接だよ」


「そうよね。だからそこから変えてみない?」


変えるっていうのはどういうことだ?

剣に属性を纏い、それを飛ばす斬撃なのに…


「剣に属性じゃなくて、魔力の斬撃を纏うの。そしてそのまとった斬撃に対して属性を付与してみるのはどうかしら?」


「たしかにそれなら行けるかもしれないわね。やってみなさいよアルケウス」


二人が言うなら試してみるか。


まず刀身に魔力を流し、魔力で刃を形成。

そしてできた刀身に炎を付与させる。

ここまではいい。

そして、風を付与。

これもできた。

だが、今までもここまではできている。

この後飛ばすと離散してしまうんだが、果たして…


「行きます!」


木に狙いを定める。

そして剣を振るった。



何も起きない。

失敗か。


だがそう思った次の瞬間、狙った木が突如燃えながら切断されたのだ。

これはつまり、


「成功した?」


「ええ」


「やったわねアルケウス!」


不可視の燃える斬撃が誕生した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。