第三十一話 帰郷
目が覚めると、すでに朝になっていた。
まだ昨日の激闘の疲れが完全に癒えたとは言えない。
だがそんな理由でここに居続けるわけでもない。
一応昨夜寝る前に、土魔法で作った壁の外からいい匂いがする。
先に目覚めたモナが朝食の準備でもしているのだろう。
「んっ……」
そこでようやくシャーリーが目を覚ました。
「アル君…?」
「おそよう、シャーリー」
「おそよう?何それ」
遅く起きた人に向けての、俺のオリジナルだ。
「具合は大丈夫か?」
「うーん…特には無いかな」
「アルケウス、起きた?朝ごはんが…シャーリー起きたの?」
「おはよう、モナ」
「おはよう、お寝坊さん」
朝の挨拶を済ませ、モナの作ってくれた朝食を食べつつ、昨日の夜にモナと話したことをシャーリーにも伝えた。
まあほとんど理解してないようだったが、ゾルディが強かったことだけは本人もわかるようだった。
本来なら、このまま北上しながら国境都市ガデスを抜け、そこから北東方面へ行き、魔族の住む大陸と人族の住む大陸間が最も近い地点に行く予定だった。
しかし、謎の男ゾルディに完敗した俺たちは、魔王討伐への旅路を急遽変更することにしたことは、シャーリーも承諾した。
「よし、じゃあまずはどこへ向かうか」
「そうね。今まで来た道の反対に向かうわけだけど…」
「そうなると獣人族の領地が一番近いわね」
おお!獣人か。
言われるまで忘れていた。
なにせ見たことがないからな。
「そのための最初の目的地はビスティア王国ね」
「それってどこにあるの?」
「バルドー王国の南方面ね。獣人族の領地に向かうならそこを通らないと」
南か。
ならオード村に立ち寄れるかもか?
「モナ、多分道中に俺たちの村があるんだけど寄ってもいいか?」
「別に構わないわよ。道なりに行くならオード村は通らないといけないし
「ええ。村に帰るの?」
シャーリーが露骨に嫌な顔をした。
そういえばこいつ約束破って飛び出したんだったな。
「ちゃんと母さんたちに説明できるな」
と、シャーリーに笑顔を向けた。
この前の約束を守らせるために圧をかけるために。
「わかったよぉ……」
「今の笑顔、雰囲気だけ笑ってなかったわよ」
というわけでまずは来た道を戻り、ビスティア王国に向かうこととなった。
ビスティア王国へ向行けての旅は、今まで来た道を戻ることになる。
地図上では、道なりに進まず突っ切ってもいいように見えるが。
道が引いていないところ=魔物が蔓延る世界だ。
旅の仕方はほとんど変わらない。
都市や町に着いたら、そこで次の旅の準備のために一週間ほど滞在してから出発する。
なにせ来た道を戻っているだけだからな。
商人の護衛依頼を受けつつ、馬車に乗れるもがあればよかったのだが、あいにくそんな都合のいい依頼はなかったので、歩きで移動することになった。
大きな町や都市の間は、急いだりしないと徒歩で最低一ヶ月はかかる。
イニシ法国から国境都市ワニングへ一ヶ月。
そこから貿易拠点シトまで二ヶ月近くかかった。
久しぶりに来たのでコロニス商会の店を訪ねたが、ラグラさんや娘のレオナさんは既にいなかった。
バルドー王国に行くと言っていたから、おそらく王国にいるだろう。
ただ今回バルドー王国には寄らないから、会えるとしても当分先になるだろうな。
教会もちらっと見てみたが、教皇の言っていた通り違う聖職者らしき人が駐在していた。
なんだか活気も以前より増している?気がした。
シトからオード村までは二週間ほどで到着した。
訳1年半ぶりの帰郷か。
ぱっと見た感じ、村の様子は変わっていなさそう。
復興できていないところも見た感じは特になさそうだ。
「旅の道中でも村を見かけることはあったけど、ここは広々としていていいわね」
確かにそうかもしれないな。
遠目から見たりしただけだが、道中に見た村と比べても、オード村は広々としている。
「あなたたちはどのあたりに住んでいたの?」
「俺たちの家は、少し村のはずれにあるんだ」
「はあぁ…」
「どうしたのシャーリー?そんなに大きなため息なんかついて」
まあ…ね?
俺は何となく察している。
「アル君のお母さん、怒るとめっちゃ怖いから帰りたくないなって」
「約束は約束だからな」
俺的には、カエルはそんなに怒らないと思うけど……
まあ、怒られても自業自得だから仕方ない。
ファイト!シャーリー。
家族やヴィヴィと会うのは久しぶりだな。
みんな元気にしているかな。
そうだ。
ヴィヴィがいるなら、斬撃に複数の属性を乗せる方法の模索を聞いてみたり。
ゾルディについて聞いてみたりしてもいいかもしれないな。
それこそレイルなんかに勇者関連について聞くっていうのもありだ。
そんなことを考えながら、俺は生まれ育った家の扉をたたいた。




