↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
知と記憶の回廊を抜けて:異世界で二度目の生を  作者: 三木 天
イニシ法国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/45

第二十九話 頂き

宿にも戻ると、「私だってそうだもん」というシャーリーの声が聞こえてきた。

どうやら何かについてモナと言い争っているらしい。

あの二人は仲が悪いのか、それともいいのか…

扉を開けると二人と目が合った。


「あ…おかえり…」


「おかえりなさい!」


元気になったのかシャーリーが飛びついてきた。


「もう体調は大丈夫なのか?」


「うん!バッチリ!」


「ところで何か言い争っていたようだったけど、何かあったか?」


「特に何もないわよ」


俺は特に関係ないのか?

なら別に気にしなくていいか。


「そっちはどうだったのよ」


「昨日の依頼の件についてだった」


依頼についての話をしようと思ったのだが……

シャーリーが抱き着いたままでは喋りにくいな……


「おい、いつまで抱き着いてる。離れろ」


「はーい」


シャーリーがベッドに座りなおしたとこで、話を始めよう。


「まず依頼については、ドラゴンゾンビが原因で間違いなかったそうだ」


「ということはつまり…」


「依頼は完了した。その報酬として…金貨10枚も貰った!」


「まあそうでしょうね。あんなもの相手にしたんだから当然ね」


「よかった…私の治療費でお金ほとんど無くなったって聞いてたから…」


シャーリーがその点を気にしていたとは意外だった。

まあ、少なからずプラスにはなったので良しとしよう。


「そしてもう一つ朗報があります」


「なになに?」


「それは…」


ドゥルルルルルルル…と頭の中で効果音を鳴らしてみた。

現実では沈黙が流れたが…


「なによ、早く言いなさいよ」


「なんと、俺とモナ、そしてパーティのランクがAランクに上がりました!」


パチパチパチ…と拍手をすると、二人もつられて拍手をしてくれた。


「ん?アル君とモナだけ?私は?」


「先日なったばかりで許可が下りなかったらしい」


「えーそんなー……」


まあ、許可が下りなかったということは、ギルドもシャーリーの実力は認めているのだろう。

実際あの戦闘では、シャーリーがヘイトを買ってくれていたおかげでもある。


「まあ、近いうちにあなたもなれるわよ」


「なんでそんな自慢気なの?」


少し見下している風なモナに対し、ムッとした態度のシャーリー。

やっぱりこいつら仲がいいのか悪いのか分からんな……


その日は昇格祝いと、疲労回復も込めて、豪勢な食事にした。

高級レストランのような店で、三人でなんと金貨一枚分だ。

この世界の食事に慣れてしまったからか、普段の食事と比べれば、高級な分流石に美味しかった。

もちろん前世の世界の方が美味しいのは変わらないのだが…

ただそれでも、二人が満足そうに、美味しそうに食べている姿は、幸せなひと時だったな。


そして俺たちの現在の手持ちは、金貨一枚と少々になった……



―――

俺たちは二週間程滞在して、旅の準備をした。

お金を溜めたり、それで必要な物を購入したりしてだ。

Aランクの依頼も受けたが、やはりドラゴンゾンビは別格の存在だった。

苦労していないわけでもないが、あいつに比べたらかわいい魔物ばかりだった。

今の俺たちなら魔王を倒せるんじゃないだろうかと思えるほど、個人でもパーティで見ても強くなったと思う。

モナやシャーリーもそれは同じように思っていた。

そうして俺たちはイニシ法国を出て、北東にある国境都市ガデスへ向かうことにした。




出立して三日した頃。

そこは周りが大小の岩が多くある地帯だった。

そいつとは突然遭遇した。

反対からやってきた、白いフードを深くかぶった姿の旅人。

今思えば気配がなかった。

通りすがりに突然声をかけられた。


「すまない、一つ聞いてもいいか?」


「俺たちにですか?」


「そうだ」


「なんでしょう」


「君は、勇者ではないのか?」


その言葉を聞いてゾワっとした。

今まで正体を明かした人は数少ない。

もとから知っている人物も、教皇だけだった。

だけどこいつは見た感じ、王族などといった立場の人間には見えない。


「いえ、違いますね。俺たちはただの冒険者です」


「君が持っている剣。それは勇者の剣だろう?」


なんなんだこいつ。

なぜ勇者の剣を知っているんだ。


「え?そうだったの?」


「……」


そういえばシャーリーには伝えていなかった…


「なぜ、こいつの持つ剣が勇者の剣だと分かったの」


「私は先代の勇者に会っている。故に知っているだけだ」


「先代の勇者!?ということは少なく見積もっても200年以上生きていることになる」


モナは王宮にいたからか、先代の勇者について知っているのか。


「あなた、種族は?人族ではないわね。顔を隠しているのはなぜかしら」


そう言うと男はフードを挙げた。

後ろへ伸びた尖った耳、黒い髪、黒い瞳の鋭い目つき、だが顔つきは若々しい見た目だった。


「エルフ…いや、ハーフエルフかしら…なるほどね」


エルフではなくハーフなのか。

見分け方が分からないが、モナが言うならそうなんだろう。


「理由は納得したかな?」


「ええ…もう一ついいかしら」

「エルフ族の住む場所はここから反対、西の果てよね。ハーフだとしてもこんなところにいるのはおかしい。なぜここにいるのかしら」


「私は立場上、人族と魔族の争いに介入できない。だがこのまま無駄死にするのを見て見ぬ振りもできない」


無駄死に?

Aランクにもなった俺たちが?


「無駄死にとはどういうことだ?」


「今のまま行けば、お前たちは魔王に勝てない。その忠告に来たのだ」


「忠告?」


こいつはいったい俺たちの何を知っているんだ?

考えられる可能性は、先代勇者を知っていて、俺たちの実力がそれ以下だってことぐらいか。

はじめましてのはずだが…


「もし俺たちが、あんたの忠告というのを無視して先に進むとしたら?」


「それでも別に構ない。だが、君たちは多種族の領域に踏み込んですらいないのだろう?」

「いかに君たちの見ている、強さの世界が狭いのかというのを理解していない」


だが俺たちは、現にAランクの冒険者だ。

冒険者の中とはいえ、最高峰の実力だと認められているのにか?

それなら、こいつの実力はいったいどれくらいなのだろう?


「そう言うけど、あんたは私たちに勝てるっていうの?」


「そうだな」


男がそう言うと同時に、シャーリーが切りかかった。

だがその一撃は片手……それも指先で摘まむように止められていた。

すぐさまシャーリーが数歩下がった。


「あの人、結構強いよ」

「私今全力じゃなかったけど、あんな風に剣を止めたの初めて見た」


俺だってそうだ。

今の一瞬のやり取りで分った。


こいつは強い


「なあ、一ついいか?」


「なんだ?」


「もしお前に勝つことができたのなら、忠告を取り消してくれないか?」


「かまわないぞ。なら全員できたまえ」


その自信は本当か嘘か…


「全力でいいってよ、二人とも」


「まって!」


モナが急に静止をかけてきた。


「アルケウス、あんたなら気づかない?」


「何が?」


「あの人の違和感」


違和感?

まあ見た目か?

それともあふれでる自信か?

分らん。


「あの人を私加護の力でさっき見たのよ。なんて見えたと思う?」


「もったいぶらずに言ってくれ」




「あの人、魔力がないわ…」


「ん?」


「え?」


その言葉を聞いた俺とシャーリーは驚いた。

それもそのはず。

なぜなら…


「待て待て!魔力がない?そんなことありえるのか?」


「私だって信じられないわよ。でもこの目に映る情報に確かに記されているわ」


「魔力ゼロと?」


モナがうなずいた。

そんなことあり得るのか…

前にレイルも言っていた。

この世界には無機物に至るまでのあらゆるものが魔力を持っている。

持っていない人は存在しないと。

あのシャーリーですら微々たる魔力は持っているのだ。

それなのに、モナ曰く、目の前にいる人物は、完全に魔力を持っていない人物だと。


こいつは生半可な戦いをしたら勝てないと直感で判断した。

本当の本気で戦う。

魔力を体中、剣にも巡らせ炎を纏う。


シャーリーも顔つきが変わり、相手を睨みつけるよう。

まるでオード村が盗賊に襲われた時を彷彿とさせるほどの目力を宿していた。


モナもすでに魔力を巡らせ「緋焔槍」の詠唱をしていた。

全員が本気になるほど、こいつからは異質な何かを感じる。



戦いはモナの魔法が最初に攻撃した。

命中。

一寸の狂いもなく命中したはずだった……

燃え盛る炎の中に男はただ立っていただけだった。


「今命中したはずよね…それなのに傷一つないなんて」


それどころか衣服すら燃えてすらいないようにも見える。

次にシャーリーが攻撃した。

地面がえぐれるほどの踏み込み。

俺と模擬戦をした時と同じ、全力の踏み込みだ。


だがその攻撃もまた先ほどと同じように止められていた。

俺は急いで彼女の援護をした。


溜めていた斬撃を繰り出しながら近づく。

風や雷の斬撃も混ぜながら放った攻撃。

男は受け止めるそぶりを見せない。

すべて直撃している。

だがやはり効果がないのか…くそ。


しかしシャーリーの攻撃は受け止めていた。

なら純粋な物理の攻撃は効くのだろう。

俺は咄嗟に剣の攻撃に切り替え、男に攻撃した。


止められていたシャーリーを投げ飛ばし、俺の剣を片手で弾き、首をつかまれた。


「ぐっ……」


「今代の勇者は面白い攻撃をするな。だが済まない…」

「私には意味を成さない」


次の瞬間、お腹にとてつもない衝撃が加わった。

さらに間を開けることなく背中に衝撃が加わった。

どうやら岩に向かって吹っ飛ばされたらしい。


体中に激痛が走った……

吐血もした……

内臓がやられたのだろう……


「アル君!」


「アルケウス!」


二人の呼ぶ声が遠いように感じる……

立ち上がれない……

それどころか体が動かない……




俺の意識はそこで切れた……



―――

・モナ視点・

あっという間だった。

シャーリーが攻撃をして、アルケウスが援護に行くまでの時間はほんの数秒の出来事だった。

二人の行動は辛うじて捉えられた。

だが、あの男の動きだけは見えなかった。

行動した後にやっと理解できるそんなレベルだ。

そしてあっという間にアルケウスがやられた。


「モナ!私を援護して!」


シャーリーが再度攻撃を仕掛けた。

私は彼女に身体強化(フィジカルブースト)、そして男に向かって鈍化(スロウ)の魔法を使った。

シャーリーの本気の猛攻はすさまじかった。

だがそのすべてを動かず弾いている。

多種多様な角度や方向からの攻撃、いづれもすべて弾かれるかいなされていた。


シャーリーの猛攻が止まった。

いや止められた。


「ハア…ハア…」


男に剣を掴まれ止められていた。

息を切らしているシャーリー。

それほど全力で攻撃していたにもかかわらず。

男は傷どころかその場から動いてすらいない。


「もう終わりか?」


「ハア…あんた本当に強いね…ハア」


言い終わったシャーリーは吹っ飛ばされ地面に転がった。

そしてそのまま動かなくなった。



二人がやられた……


どうする…

私ではあいつに効果的なことができない…

さっきの魔法も意味をなしていたようには見えなかった。


初めて心の底から恐怖を感じた。

足が震え、思考が疎らになる。


「アルケウス…シャーリー…なんで、なんで動かないの!?」


ただ助けを求めることしかできない。


男が私に近づいてきた。


「君は、魔術師だな。お前には違う方法で絶望を与えよう」


そして私は、いかなる変化を見逃さないために、常に加護の力を使っていた目で見てしまった。




それは男の体から発せられた見たこともない程の魔力を…

一瞬にして脳がこいつを見てはいけないという指令をだしたのだろう。

下を向いて嘔吐した。


怖い…男を見れない…


「やはり君は、検知の加護を持っているな。どうだ?君たちの強さの概念が変わっただろう?」


最後に聞こえた言葉だった……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。