第二十七話 死の領域とその主
ようやくパーティメンバーが三人になった。
シャーリーの実力は、想定の遥か上だった。
今の所出会った人物の中では、もしかしたら一番強いと言えるかもしれない。
「シャーリー、そういえばお前、ここまでどうやって来たんだ?」
「一応私も冒険者になってここまで来たよ」
「今のランクは?」
「Cランクだね」
てっきりDランクのまま俺のことを追ってきていた、というわけでもなさそうだな。
まあ、こいつ実力なら早く昇格するのも理解できるな。
個人的にはシャーリーは既にAランクにいてもおかしくはないと思っている。
シャーリーをパーティへ加入させるため、ギルドに来た。
と言っても手続きは簡単だ。
受付に申請するだけ。
あとはカードの更新とかして終わりだ。
「裏面を見てみな」
「本当だ!私もこれでメンバーの一員なんだね!」
シャーリーの冒険者カードの裏面には、魔断の集いの文字が刻まれていた。
「これからよろしくね!アル君、モナちゃん」
「ちゃんはやめてくれる?」
「じゃあモナさん」
「モナだけでいいわ。そのほうが話しやすいから」
モナは相変わらずだな。
「じゃあよろしくね、モナ」
「よろしく、シャーリー」
その後、シャーリーのランクを上げるためにいくつかの依頼を受けた。
Bランクの依頼を受ければ、シャーリーのランクは上がりやすい。
運が良かったのか、一日で二つ依頼をこなせる距離のものがあった。
一つ目の依頼はグールの大量発生。
数は15体ほど。
場所は、イニシ法国の北にある廃村だ。
移動時間も1時間かからない距離だった。
到着後すぐさま戦闘になったが、シャーリーは一人で傷一つ負わず片付けてしまった。
まあ、倒した後の滅却処理は俺とモナでやったが。
それにしても圧巻だった。
戦闘開始から時間にして一分経たずに、すべてのグールの頭が飛んでいた。
アンデット系に対しての剣士のイメージが変わる瞬間だった。
それでもシャーリーからすればいつもと勝手が違うからなのか、不服そうな顔をしていた。
二つ目の依頼はアンデット化したワイバーン三体の討伐だった。
場所は一つ目の以来の廃村から北東に2時間ほど行った場所周辺。
ワイバーンは本来Aランクの魔物だが、アンデット化すると特徴である機動力が大きく落ち、空を飛ばなくなる。
故にBランクになるんだとか。
居場所はすぐに分かった。
他の生き物の死骸が増えてきたころ、その中心部にワイバーン三体は固まるように佇んでいた。
だがこちらの存在に気付くとすぐさま戦闘態勢になった。
周りに生き物が来ない限り動かないようになっていたのか?
シャーリーは圧倒はしていたが、やはり剣士の攻撃ではアンデットでこのレベルの相手になると通用しにくい。
攻撃は通っているが決定打にならない。
そこで俺は唐突にあることをひらめいた。
それは、シャーリーの剣に属性を付与してあげる方法だ。
自分の剣に付与できるなら他人にもできるだろう。
強化魔法をかける要領で、対象を人から剣に変えればいい。
「アル君!これすごいね」
「戦いやすくなったろ?」
「ありがとう!」
アンデット系は炎に弱い。
炎を纏ったシャーリーは肉を焼き切りながら、瞬く間にワイバーンを圧倒した。
モナも炎の槍ですでに二匹を仕留めていた。
なぜか自慢げな表情をしていたが。
とりあえず依頼は無事に完了だ。
「これで私もBランクに上がれるかな?」
「今までも依頼をやってないわけではないんだろ?俺も交渉はしてみるから上がれると思うぞ」
依頼完了の報告後シャーリーは何事もなくBランクに昇格した。
どうやらシャーリーと一緒に依頼を受けたりしてた冒険者達などが、ギルドに実力とランクが見合っていないと言われていたらしく、昇格させる口実が欲しかったっそう。
まあその気持ち分からなくもない。
俺から見ても、シャーリーの実力はAランクだと思う。
―――
翌日
本来は休みにする予定のはずが、あまりにもシャーリーが元気すぎたので今日も依頼を受けることに…
絶対明日は休みにするがな。
今日受ける依頼を探していると珍しいものがあった。
===
ギルド依頼
内容:最近アンデット系の魔物が普段よりも多く発生している原因解明及び調査
ランク:C~
報酬:内容に付随する
追記:原因判明した場合、原因を除去しても可 判断は各々みお任せします
===
ギルド直々の依頼なんて初めて見た。
しかも内容がかなり特殊だ。
アンデットが多くなっている原因の調査か。
たしかに最近、というか昨日の受けた依頼、二つともアンデットだったな。
「ねえ、そんなに依頼を受けるのに悩むの?」
待たせすぎたのか、モナが来た。
「いや、ギルドからの依頼があってさ」
「めずらしいわね、どれどれ…」
「たしかに思うところはあるわね、これをやりたいの?」
「まあ今日は元々休みの予定だったし、楽そうなやつでもいいかなって」
「ただ一つ気になるのが、ランクが『Cから』になっている点だな」
「まあ調査なんだし、まだ決まってないだけでしょ」
「受けるならこれでもいいわよ」
そういうならこれにするか。
どうやらこの依頼は、すべての冒険者が合同で受けれらしい。
全冒険者による大調査クエストだな。
俺たちはまず手掛かりがないか情報確認から始めた。
そこでモナがあることを思い出したようで、
「そういえば、昨日のやつもそうだけど、アンデット系の依頼って北側に多いのよね」
そういわれると確かにそうだ。
昨日の依頼も北方面だったしな。
「つまり原因は北にあると?」
「まあ調査なんだし、行ってみればわかるでしょ」
俺たちはまず、北に向けて調査をしていくことにした。
その過程でやはりアンデット系の魔物は北に行けば行くほど増えていった。
これは確実に何かある。
イニシ法国の北には、大陸を縦断する山脈がある。
そしてバルドー王国から魔族領へ行くには大きく分けて三つのルートがある。
山脈を超えて海を渡る、東から行く最短のルート。
最北の龍族領を抜けて海を渡る、北から行くルート。
イニシ法国を通り抜け海を渡る、東から行くルート。
俺たちは三つ目のルートで行くことにしている。
理由は単純だ。
上記二つのルート上には、ここらでは比べ物にならない魔物がいる。
その最たる例がドラゴンだ。
北の龍族領から追いやられたドラゴンが、この山脈に蔓延っている。
もちろんランクはS。
冒険者の一般常識では、Aランクの5人以上のパーティが2ついて倒せる相手だ。
数日かけてついた山脈のふもと周辺。
森の奥の山岸に開いた空間に、原因はいた。
アンデット化したドラゴン。
ドラゴンゾンビだった。
「こいつの瘴気にあてられて、アンデット化した魔物が増えたのね」
「じゃあどうするの?ここで倒さないといけない?」
「これ以上こいつを野放しにはできないよな」
「じゃあ決まりだね」
「モナ、奴はまだ俺たちに気づいていない」
「ありったけを叩き込むわね」
アンデットとはいえ元はドラゴン。
簡単な相手ではない。
気づいていない今のうちに、ダメージをできるだけ与えておきたい。
「燃え盛る焔槍よ、集い、我が敵を貫け その炎は如何なる敵を打ち砕かん」
モナの詠唱と同時に炎の斬撃の準備をする。
二人同時であれば、多少は威力も上がるはずだ。
「――緋焔槍!」
モナの放った、煌々と輝く炎の槍と炎の斬撃がドラゴンゾンビに直撃した。
周囲が激しく燃え上がった。
そんな炎の中から、ドラゴンゾンビは悠々と姿を現した。
「嘘でしょ、一番火力のある魔法を受けてなんともないの?」
「二人とも!援護をお願い!」
そういってシャーリーが突っ込んだ。
俺は彼女の剣に炎を纏わせる。
「身体強化」
モナが俺とシャーリーを強化てくれている。
シャーリーはドラゴンゾンビの攻撃をかわし、足を狙った。
しかしその攻撃で切ることはできなかった。
なんどもその繰り返し。
モナも援護で攻撃してくれているが効果が薄い。
何かないか、効果的な攻撃は…
―――
攻撃は一発
一撃で敵を屠る
重さを乗せる
―――
まただ。
知らない記憶。
だがこれは使える。
勇者の剣は持ち主に合わせて形状が変える。
今見た記憶と同じ以前グレイブ・ボアを倒した時のような大剣であれば。
気が付くと剣はその時の大剣に変化していた。
「あんたそれ、前にも似たようなことなかった?」
「そうだな、だがこの剣なら奴を切れるかもしれない」
「どうにかして奴の真上に行きたいんだけど、モナできるか?」
「難しいこと言うわねあんた、でもできなくはないわ」
「本当か?」
「ただし、あんたにも難しいことを要求するわ」
モナの発案はこうだった。
モナがシャーリーの援護をしつつ、土魔法で攻撃。
その際に生じる岩を足場にドラゴンゾンビの真上に行き攻撃しろ。
とのことだ。
「お前、魔法の同時発動できるの?」
「私だって練習ぐらいするわよ。二つなら今は行けるようになったの」
こいつも努力してるんだな。
なら信じよう。
「シャーリー!今から隙を作ってくれ!俺が奴を倒す!」
「分かった!」
じゃあ行くか。
「『岩の砲弾』『水の領域』」
魔力を体に巡らせ、ドラゴンゾンビめがけて放たれたモナの岩の砲弾を足場に乗りながら移動。
ドラゴンゾンビの真上に飛んだ。
同時にドラゴンゾンビの足場が水に覆われた。
岩の砲弾が直撃すると同時に、シャーリーが足を重点的に狙い、ドラゴンゾンビのバランスを崩した。
「氷の縛鎖」
バランスを崩したドラゴンゾンビの隙をモナが魔法で固定し動けなくした。
そして落下の勢いと共に大剣を振り下ろした。
ガキーン!
と大剣と骨がぶつかり合う音が響いた。
「くそ、これでも切れないのかよ」
「まだだよ!」
気づくとシャーリーがドラゴンゾンビの体を伝って近くに来ていた。
「やああぁぁあ!」
シャーリーが同じ個所を切りつけた。
剣が食い込み始めたのを見て確信した。
勝った!と
しかしドラゴンゾンビもただではやられない。
動かせた首をこちらに向け、何かをため始めた。
ブレスだ。
今までやってこなかったから完全に油断していた。
口の中に輝くエネルギーが徐々に大きくなっていく。
もうだめだ。
「させると思った?」
ドラゴンゾンビの口はモナの岩の砲弾によって塞がれていた。
行ける!
「切れろおおぉぉお!」
ズズズ……シャッ…
雄たけびと共に、俺とシャーリーの剣がドラゴンゾンビの胴を割った。
「アルケウス!シャーリー!」
モナが叫んだ。
俺は大剣をその場に刺し遮蔽にした。
「シャーリーこっちに」
「うん!」
それと同時にブレスが暴発し、ドラゴンゾンビの頭を吹っ飛ばした。
煙が収まり辺りを確認した。
ドラゴンゾンビは絶命した。
シャーリーも無事だった。
「二人とも!生きてる?」
「ああ!無事だ!」
モナも無事のようだな。
「とりあえずモナの方に行くぞ」
「うん。アル君ありがとう」
無事に合流した俺たちは帰還の準備を始めた。
今回の原因であるこいつの報告をギルドにしないといけないからな。
バタッ…
シャーリーが倒れた…




