第二十六話 新たなメンバー
1ヶ月ほど経過した頃、そいつは突然やってきた。
いつものようにギルドで依頼を探していた。
そろそろAランクに上がれそうな段階でもある。
けど、いまだにメンバーが二人しかいない…
補充も検討したが、Bランクより下になると実力が離れてしまう。
あくまで俺たちは、魔王を倒すことを目的に旅をしているパーティなのだ。
その目的に興味がなかったり、実力が足りていない人では、一緒に行こうなんて到底言えない。
Aランク以上の人は、大体の人がすでに他のパーティに所属していたりするから、そこからスカウトも難しい。
もっと実力があって、魔王を倒す目的に付いてこれる、そんな都合のいい人間はいないものか…
と、考えに耽っていた時だった。
大きな音を立てギルドの入り口が開いた。
よくあることだから俺たちを含めてほとんどが反応していなかった。
「あ!ようやく見つけた!」
ん?なんか聞いたことある雰囲気の声だなと思い振り返った。
するとそいつはすでに、手を広げこちらに飛び込んできていた。
しかも目の前だった…回避不可。
そのまま俺を壁に押し当てるように突っ込んできたのだ。
「久しぶり!アル君!」
「やっと追いついたよ!」
一片の曇りもなく、清々しいまでの笑顔で真っすぐ突っ込んできて、俺をアル君と呼ぶこいつは、
幼馴染のシャーリー・レイヤだった。
それにしても何でここにシャーリーがいる?
旅に出るのは15になってからじゃなかったか?
俺が今16の歳だから、あいつは今14のはずなんだが…
「お前、何でここにいるんだ?俺を追うといってたのは15になってからとか言ってなかったか?」
「えへへ、我慢できなくてちょっと早いけど来ちゃった」
「母さんたちは知っているのか?」
「知らないと思う。無断で出て来たから」
「お前なあ」
「でも!アル君のお母さんにはもう勝てるようになったんだよ!」
ほう、カエルに勝てるようになったとは、
「本当か?母さん結構な強さだとは思うけど」
「本当だよ、真剣で勝ったんだから」
真剣、つまり本気の打ち合いで勝ったということか。
そうなるとかなりの強さになっていないか?
今の俺でも単純な剣の腕前だと、シャーリーに劣るかもしれない。
「ところで、隣の女の人は誰?」
隣?ああ、モナのことか。
「それはこちらのセリフです。あなたこそ誰ですか」
「とっ…とりあえず二人とも…」
「アルケウス、そしてあなたも、いったん外で話しましょう」
モナに手を引かれながらギルドを後にし、滞在中の宿に行くことになった。
「それで?アルケウス、この子は誰?」
「彼女はシャーリー、俺の故郷の村の修行仲間だ」
「ひどーい、幼馴染でしょ?」
「まあ、そうとも言えるかな」
「アル君、私にも教えてよ。この女の人は誰なの?」
「バルドー王国の元宮廷魔術師で。今は俺と一緒に冒険者をやっている、モナだ」
「よろしくね、モナさん!」
「よろしく…」
とりあえず自己紹介は、こんなところだろうか。
「で?シャーリー、約束の時期より早い気がするんだが?」
「だってアル君に会いたかったんだもん」
「本当にそれだけか?」
「そうだよ!」
まあ、こいつのことだし本当にそうなんだろうな…
ただ、タイミング的には丁度今戦力がほしいと思っていたところ、さっきの話が本当ならシャーリーの実力は申し分ないし、俺が勇者だってことも知っている。
「俺たちは魔王を倒しに向かっているんだが、お前も来るのか?」
「もちろん一緒に行くよ」
「なあモナ、ずっとメンバーを増やしたいって言ってだろ?」
「そうね」
「こいつの実力は俺が保証する。だからメンバーに加えてみないか?」
「あんたが言うんだから本当かもしれない、けど私はまだ実力を見ていないから、それを見せてくれない?」
「じゃあ久しぶりにアル君と手合わせするのはどう?」
「うーん、そうだな。俺も今のお前の実力を確認したいし」
「じゃあ決まりだね!」
というわけで、俺たちは町の外で手合わせをすることになった。
辺り一帯には何もない平原。
ここでなら思う存分できるそんな場所で手合わせをする。
シャーリーとは村で別れて以来だな。
カエルに勝ったと言っていたことが本当なら、かなりの実力だ。
―――
・モナ視点・
「準備はいい?」
二人に尋ねると、二人はうなずいた。
「はじめ!」
掛け声と同時に動いたのは、シャーリーだった。
あっという間に距離を詰め、剣をふるった。
しかしアルケウスもまた辛うじてそれを防いだ。
その後のシャーリーの猛攻をアルケウスは捌いていたが、シャーリーの方が速いのだろう、反撃に転じれていない。
アルケウスが攻撃を弾き、距離をとった。
剣に魔力を集中させた。
あの構えは斬撃を飛ばす構えだ。
「シャーリー、これをお前に見せるのは初めてだったよな?」
「何をする気?」
アルケウスが風の斬撃を飛ばした。
不可視の斬撃はシャーリーの足をとらえた。
シャーリーの右足から血が垂れている。
傷はそこまで深いわけでもない。
「え?何?何をしたのアル君」
「切れる風魔法を飛ばしたんだ」
「へえ、面白いね」
アルケウスは再度同じ斬撃を数発飛ばした。
そこでシャーリーが目をつむった。
そして空中を斬撃の数の分、切りつけた。
「お前、今なにしたんだ?」
「さっき飛ばしたやつを切ったの」
見えない斬撃を切った?
「風魔法の斬撃ででしょ?集中して風の動きを読んだだけだよ」
これを聞いて私は確信した。
この子は強い。
ただしそれは剣だけ。
シャーリーの魔力量はとても低い。
私を100とするなら、この子は10といったレベルだ。
「じゃあこいつはどうだ」
アルケウスが今度は炎の斬撃を放った。
それをシャーリーは後ろに押されながらも止め、両断した。
「アル君すごいね!見ないうちにこんな技を身に着けていたなんて」
そこで私にははっきり聞こえた。
「じゃあ、私も本気出すね」
地面がえぐれるほどの踏み込み、シャーリーの姿が消えた。
「はい、アル君の負け」
気づくと、アルケウスの後ろから首に剣を当てているシャーリーがいた。
「俺の負けか」
「シャーリーの勝ちよ」
「じゃあこれでメンバーに入ってもいい?」
「待って、私もやってみてもいいかしら」
私なら、転移魔法もあるから勝てるかもしれないと思った。
―――
・アルケウス視点・
俺は負けた。
しかも完膚なきまでに。
シャーリーの成長は予想をはるかに上回っていた。
しかも最後のは見えもしなかった。
だがこれはうれしい誤算でもある。
シャーリーの実力は申し分ない。
これならモナも認めてくれるだろう。
と思っていたら、モナも手合わせしてみたいと言い出した。
結果は惨敗。
いやまあ、本来剣士と魔術師って相悪いからな。
当然ではある。
けどモナも一方的に負けてはいなかった。
転移魔法を駆使し、シャーリーの攻撃をよけ、一瞬のスキが生まれたところに魔法を放っていたりもした。
それでもなお、シャーリーは放たれた魔法を切り伏せ挙句には、転移魔法で移動したモナの後ろをとったのだ。
「どう?私二人の仲間になれそう?」
「俺は大丈夫だ。モナ、君はどうだ」
「ええ、むしろ二人とも負けているんだから、断る理由はないわよ」
「やったー!」
こういう純粋に喜ぶところはまだまだ子供っぽいんだけどな。
「ただし、いつかオード村に帰ったときはちゃんと母さんたちに説明をすること、いいな?」
「はーい!」
さて、晴れて我らが魔断の集いに新メンバー、シャーリー・レイヤが加入した瞬間だ。




