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知と記憶の回廊を抜けて:異世界で二度目の生を  作者: 三木 天
バルドー王国編

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第十六話 証明

目が覚めるとそこは知らない天井…ここはいったい…

って、昨日お城に泊まったんだったな。

さて、今日は昼に模擬戦があるのだが、その時間までどうするか。

昨日の周りの反応を見る限り、今日の相手はおそらく手練れだ。

最後に激しい戦いをしたのって、村を出る前日にいつものルーティンでシャーリーとやりあって以来か?

そうなると感覚が鈍ってそうだなー。

ましてや魔術師相手なんて初めてなんじゃないのか。

この城訓練室とかあるのかな。

そう思い立ち俺は部屋の扉を開けた。

すると待機していたのか、女性の使用人がいた。



「お客様、なにか御用でしょうか」


「今日の模擬戦のために体をほぐしたいんですけど、ここって訓練場とかってあります?」


「はい、兵士たちの訓練を行う場所であればございますが、ご利用になりますか?」


「いいんですか?ぜひ」


「かしこまりました。お部屋で少々お待ちください」



そう言って使用人はどこかへ向かった。

10分程おとなしく部屋で待っていると、扉がノックされた。

出ると先ほどの使用人が、



「お客様、許可が下りましたのでこちらへ」



連れられたのは、城の外だった。

いかにもな訓練場、広さは体育館程度だろうか。

さっそくなまった体をほぐすか。

しかしこういう時って、なにをすればいいんだ?

まあ適当でいいか、とりあえず素振りで。

そうして素振りをしていたら、使用人が声をかけてきた。



「お客様少しよろしいですか?」


「はい。ていうかいたんですね」


「一応今回お客様のお世話を仰せつかっておりますので」


「それで?なんでしょうか」


「先ほどから素振りばかりされているのはなぜです?」


「まあなんとなく」


「でしたら不躾ながら私がお相手をして差し上げましょうか?」



そういうとこの使用人、スカートを上げたかと思いきや太ももにナイフを仕込んでいた。

まさにアサシンのようにな。



「私に勝てないようでは、今日の摸擬戦の相手には勝てないと思ってください」


「そうですか、ではよろしくお願いします」


「かしこまりました」



そう言うと使用人の雰囲気が一変した。

俺も剣を構え、魔力を体に巡らせた。


先に動いたのは相手だった。

速い…が、シャーリーやカエル程ではない。

ナイフの軽量さを生かした予備動作の少ない攻撃を、俺は相手の後ろに回り込む形で回避した。

そこから背中目がけての反撃。

しかし相手もこれを避けた。



「私の攻撃、読んでいたのですか?」


「いいえ、普通に避けただけです」


「そうですか」



そういって今度は左手からノーモーションでナイフを飛ばし、自身も追撃に出てきた。

おそらく左足にも装備していたであろう攻撃を弾き、本人の攻撃も武器を手元からはじいた。



「キャ!」



ひるんだ隙に俺は相手の足を払って体制を崩させ、肩をつかみ地面に押し倒し、剣を突き立てた。



「どうします?」


「降参よ」



俺が上からどくと、服を払いながら使用人が起きた。

そこであることに俺は気づいた。



「あ!す…すみません!地面に押し倒しただけでなく覆いかぶさるよう乗ってしまい」


「いいですよ別に、気にしてないので」



本当に気にしてないのか、凛とした態度で言われた。



「それにしてもお強いですね、歯が立ちませんでした」


「あなたも強かったですよ」


「感覚は戻りましたか?」


「おかげさまで」


「それはよかったです。では朝食はいかがなさいます?」


「いただきます」



寝起きの運動にしては激しいものだったが、満足感の高い時間だったな。

あっ…そのあとの朝食は大変美味でございまいた。


―――

「お客様、そろそろお時間になります」



気づけば正午になっていた。

いよいよ模擬戦が始まるのか、なんだか楽しみと緊張の感情が入り混じってるな。

まあ、いつも通りの俺で行けばいい。きっとな。


模擬戦の会場は今朝の訓練場だった。

中にはすでに、昨日の謁見の時にいた人たちがいた。



「来たな、アルケウスよ。さっそく貴様の実力、とくと拝見しよう」



すると、奥から大層な杖を持った小柄な女性が来た。

青を基調とした魔女っ子な服装。

この世界では珍しい黒髪。

この人が昨日の宮廷魔術師、モナ・マナリアか。


カンッ!


モナが地面に杖を突くと、四角い壁のようなもので俺とモナを囲った。



「これは?」


「周りに被害を出さないための結界です」


「必要ですか?」


「あなたの実力がどれほどか分かりませんが、念のためです」



俺は試しにその壁を殴ってみた、確かに丈夫そうな結界だな。

振り返って剣を抜いた。

それを見た相手も、戦闘態勢に入る。



「いつでも始めてよい」



国王様から許可ももらったし、まずは近距離戦ができるのかを確かめるために俺から仕掛けるか。

俺はモナの懐に一瞬で入り、剣を振った。

手に伝わった感触は、空を切った感触だった。

気づけば、目の前にいたはずのモナがいない。

そこで俺は、反射で風の魔法を使い自分の体を横方向に飛ばした。

態勢を整えた俺の目に映った光景、それは俺のいた場所に二本の『アースニードル』が刺さっていた。



「今のを避けれるんですね。驚きました」

「さらに魔法まで使うなんて、あなた魔剣士ですか?」


「そうらしいですね」


「そうですか。どうりで魔力量が多いわけですね」



魔力量を計る魔法なんてあったか?

というかこいつ、さっきから魔法の詠唱を一切していない。

これがヴィヴィの言ってた、対人において詠唱をしない魔術師の強みか。

近接での戦闘もできるし、国で指折りの実力って言うのは間違いない。

本気でやるか。

そう思い俺は体に巡る魔力の出力を上げた。

もっと速く…もっと鋭い一撃を…

背後に回り剣を振った。

その一撃は氷の壁(アイスウォール)で防がれた。

しかし同時に剣に炎をまとわせた俺の一撃を防ぎきれなかった。



「なっ!」



行ける!これは入る!そう確信があった。

しかしまた空を切った。



「ふう、あぶないあぶない」



さっきからいったいどうやって避けているんだ。

剣の間合いでしかも驚いた反応をしていたのにどうやって。



「あなたの実力を少々甘く見ていたことは謝罪します。ですので、ここからは本気です」



次の瞬間、俺の足を凍らせると同時に、モナの周りに12個の火球(ファイアボール)が漂う。

まずい!動けない!



「これで終わりです」



モナが火球(ファイアボール)を飛ばしてきた。

だがそれを俺はすべて叩き切った。



『ミスト』



俺は霧を発生させ、お互いの視界を塞いでいる間に凍っている足を『リトルフレイム』で溶かした。

同時に霧が吹き飛ばされ火球(ファイアボール)が飛んできた。

だが俺も水球(ウォーターボール)で対処する。


しかたない、まだ練習中だけど試してみるか。

剣に炎を纏わせ、構えた。

この技はシャーリー相手には一度も使ってない。

ヴィヴィと練習したオリジナル。

剣を横に一閃すると、炎がモナめがけて飛んだ、炎の斬撃だ。

この攻撃をモナは初めて見て驚いたのか一瞬反応が遅れた。

ギリギリで水壁(ウォータウォール)で相殺した。

その瞬間に俺は彼女の左右と後ろを土壁(アースウォール)で逃げ道を塞ぎ距離を詰めに出る。

モナの壁が消えると同時に俺の剣は彼女の首元に添えられた。



「そこまでだ!」



国王の声が響いてようやく剣を収めた。

それと同時に結界も消えた。



「見事だ、アルケウス・クロニカよ。貴様の実力確かに見させてもらった。その実力であれば貴様を勇者として認めよう」


「完敗よ、あなた結構やるじゃない」


「そういうあなたも強かったです。正直負けるかもと思いました」


「ふん!お膳立てはいらないわ」



まあ、模擬戦だから本来の実力は向こうも出していないだろう。

それでも間違いなく強敵だった。


その後謁見の間で再度国王と話をした。



「先の戦い見事であった」


「ありがとうございます」


「まさか、モナ・マナリアを打ち負かすとは予想外であった」


「彼女も強かったです」


「当然だ、うちの宮廷魔術師なのだからな」

「それよりも貴様に渡すものがあるのだ」



そう言うと隣で待機していたザインがこちらに向かってきた。



「これを」



渡されたのは剣の柄?のような棒切れだった。



「これは何ですか?」


「それは歴代勇者が使っていた武器。言わば勇者の剣だ。」



剣?こんな棒がか?冗談はよしてくれよ。



「そいつは持った者に最も適している武器に変化する。魔力を流してみよ」


「はあ」



試しに魔力を流してみた。

すると棒に魔力を吸われている感触と同時に形が変化していき、最終的に立派な剣になった。

今使っている剣よりも長い剣だ。



「やはり長い剣(ロングソード)になったか、先の戦いで貴様の戦い方には短めの剣(ショートソード)では合っていないと感じていたからな」

「それにタイミングもよい時だ」


「よい時と言うのは?」


「持っている剣を見てみよ、先の戦いでボロボロになっていよう」



そう言われ剣を抜いて気づいた。

所々刃こぼれや溶けてる箇所があった。



「いつのまに」


「モナの火球(ファイアボール)をあれだけ切り伏せたのだ当然だろう。あやつの魔法は基本の魔法ですら威力が高いからな」



そうなのか、まあこの剣はなんだかんだで10年ぐらい使い続けているしな、たしかにいいタイミングかもしれない。



「しかしアルケウス君の実力がこれほどとは予想外でした父上」



なんでザインは誇らしげなんだ?



「アルケウスよ、今後貴様がどうやって魔王を倒しに行くかは貴様に任せる。だが今の実力では魔王には届かないと思え。世界を回って今よりも実力を上げるのだ。時間は問わん。だが必ず魔王を倒せ。よいな」


「わかりました。必ず魔王に勝ってみせます」


「よかろう。我が名ガルシルド=バルドーの名において、勇者アルケウスよ、貴様に魔王討伐を命ずる」



そうして国王との謁見は終了した。

出立は明日、今日は城に泊ってよいとのことなので甘えることにした。


その夜、何かを頼んだわけでもないのに誰かが部屋をノックしてきた。

扉を開けるとそこにモナ・マナリアが立っていた。



「何か御用ですか?」


「少し話をしたくて。中に入ってもいい?」


「それは別にかまいませんが、話って?」



そう言いながら俺は彼女を部屋に招き入れた。

モナは部屋に入るなり俺のベッドに座った。

俺はとりあえず椅子でいいか。



「あなたのその強さどうやって鍛えたの?」


「まあ身の回りの人間にBランク冒険者とかがいましたので」


「へえそうなのね。それなら納得の強さね。」

「ところであの魔法は何?」


「あの魔法って?」


「私を負かす時に使った、剣に纏わせた炎を飛ばしたやつよ」



ああ、あれのことか。



「武器に炎とかを纏う攻撃は魔剣士がやる魔法の特徴だけど、まさかそれを飛ばしてくるなんて予想外だったわ」


「あれは俺のオリジナルです。まだ練習中ですが、まあ発想の転換ってやつですね」


「炎以外もできるの?」


「まだ試してないですが出来るものはあるんじゃないでしょうか」


「ふーん」



なんか納得したのかしてないのか分からん反応だな。



「ところで、あんた。正式に勇者として認められたわけでしょ?これからどうするの?」


「国王様には自由にしていいって言われましたけど、明日には出立しろって言われましたね」


「ハア?!早すぎない?もう少しいるもんだとばっかり…」


「まあ、世界を旅しながら魔王を倒しに向かう予定です」


「そう…まあいいわ。それじゃ話したい事も話したし、帰るわね」



よく分らんが聞きたいことは聞けて満足したのか?



「おやすみ」


「え?」


「おやすみって言ったの!挨拶もできないわけ?!」


「あぁえっと…おやすみなさい…」



そういって彼女は去っていった。

いったい何をしに来たのか分からん。

とりあえず明日出立するための準備をして、今日はもう寝よう。

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