第十五話 王との謁見
ようやく着いたバルドー王国。
その城門には多くの人が列になって並んでいた。
俺たちもその列に加わって、今順番待ち中だ。
周りを見てみると色々な人がいる。
デジンたちと同じような恰好をしているのはおそらく冒険者だろう、商人のような人もいる。
「アルケウスさんは、城内に入ったらまずなにをするんですか?」
「そうですね。急ぎではないのですが先日言った他の用事をかたずけに行こうかと」
「そうですか。僕たちはギルドに向かうので、入城したらそこでお別れですね」
そういえば二人は依頼の帰り道って言ってたな。
「わかりました。短い間でしたが楽しかったです」
「いえいえこちらこそ」
「いつか…ヴィヴィさんのことまた教えてください」
「また会ったらその時に」
そういって彼らは入城していった。
かくいう俺はというと、
「なにか身分証などはお持ちですか?」
俺は昨日二人に見せた物を提示した。
「確認させてもらう…」
衛兵が固まった。
やっぱりあまり見せちゃいけないものだったか?
「すまない、これは本当に君のかい?」
「はいそうです。アルケウス・クロニカです」
「君なんでこんなものを持っているんだい?」
「父からこれを持って行けと言われたので」
「なるほど…ちょっと待っててもらえるかな?」
「え?はい…」
そういうと衛兵の人はどこかへ行ってしまった。
するともう一人が、
「そうしたら君、時間かかるかもだからこっちで待っててもらえるかい?」
そう言われ俺は詰所に通された。
そこから待つこと30分ほどしてようやくさっきの衛兵が息を切らしながら戻ってきた。
「すみませんお待たせしました…ハア…確認が取れましたので…ハア…入城いただいて大丈夫です」
「そんなに急がなくても大丈夫ですのに」
「いえ、王家のサインが入っているものをお持ちの方をお待たせするわけにはいかないので」
「はあ…」
そうして俺は無事バルドー王国の城下町に入城した。
「おお!」
と思わず出てしまうほどの街並み、道も建物もきれいに整備されているまさに異世界の城下町って感じの雰囲気だ。
王城は立派すぎてすぐに分かったからそこへ向かおう。
中央に向かうにつれ、一般的な家屋が増えて露店や人々の賑わいも増えた。
町の中心部には、憩いの場のような噴水付きの大きな広場もあった。
さっきの雰囲気との違いから振り返ってみて気づいた。
この国は、外側に貴族の住む街並みが広がっていた。
普通、王宮の周りとかじゃないのか?
なんて思いつつ、さらに奥に住んでいくと鍛冶場や商人の人が経営してそうなしっかりしたお店に加え、冒険者ギルドの本部が姿を現した。
本部というだけあってかなりの大きさだった。
少し中を覗いてみたが、人が多すぎて二人の姿は見えなかったよ。
そんなこんなで町風景に見とれていたら、いつの間にか城が目の前にあった。
城の門の前にも兵士が二人見張りとして立っていた。
とりあえずあの人たちに声をかけてみるか。
「すみません。ザイン=バルドー様と会う約束をしているのですが」
「ん?約束?お前みたいなのが?冷やかしはよしてくれよ、こっちも決して暇してるわけじゃないんだ」
「いえですから」
「帰れと言っているのがわかんないのか?」
なんだこいつ、俺の見た目で判断してるな?
まあ、こんな15歳の子供がいきなり王子様に合わせてくれなんて言っても門前払いするよな普通。
よし、ならばあれを見せてやったらどうなる?
レイルお手製(らしい?)身分証(?)だ!
「これでもですか?」
「なんだそれは」
そういって俺から受け取ったものを見たこの兵士は、もう一人の兵士に耳打ちをした。
そうするともう一人の兵士が慌てて城内へ走っていった。
またこのパターンね…
「なあ君」
先ほどの兵士に呼びかけられた
「なんですか?」
「まさか貴族の子なんてことはないよね?」
このなりでか?そんなわけないでしょ。
貴族の子供が秘密裏に動いてるなんて思ってるのか?
「いいえ、一般人ですよ」
「さっきは存外な扱いをしてしまったこと、誰にも言わないでくれるか?」
おいおい、あまりにも身勝手だな。
目の前にいる人間がもしかしたら目上の人間かもしれないってなったらこれか?
あとで第二王子にこのことを供述してやろうか?
なんて考えたが、言った後にこいつがどうなるかなんて興味ないし別にいいか。
「別にいいですよ」
「そうか。恩に着る」
「おお!アルケウス君!」
兵士と話していたら、どこか聞き覚えのある声がした。
「久しぶりだね。元気にしてたかい?」
「はい。元気にしてました」
「それはよかった。ささ、早速中で話そうではないか」
五年ぶりに会ったが相変わらずのイケメンだな。
顔立ちはすこし大人びたか?それとも気配がそう感じさせる?うーん分らん。
門を抜けた先は広々な城の庭園だった。
何人かの使用人であろう人たちが手入れをしているのか、綺麗に形作られているものや、道沿いのものは葉先が整えられていた。
「すごいですねここ」
「我が城の自慢でもある」
「どういった物が植えられているんですか?」
「観賞用から食用、あとはうちの魔術師たちが研究に使う用など様々だね」
多種多様なものがあるんだな。
それらを管理する使用人は大変そうだな。
そうして庭園を抜けた先にようやく本殿のお出ましだ。
そのまま二人で中に入っていった。
中はまさしく王城だ。
豪華なシャンデリアに巨大な階段が目の前にある。
俺はその階段を上り二階の部屋に案内された。
部屋の内装的におそらく客室だな。
ここで商談とかしたりするんだろう。
そして俺はいかにもなソファに座った。
「今使用人にお茶菓子を頼んだから少し待っててくれ。長旅だっただろう?」
「私も少し着替えてくるので」
そういってザインは行ってしまった。
少しすると使用人が、紅茶と菓子を持ってきてくれた。
今飲んでいいのか迷ったが、それにしても紅茶なんて久しぶりだ。
うーん。
冷めてしまうのもよくないか。よし。飲もう。
うん。無糖の紅茶だな。
けど久しぶりに飲んだからかとても美味しく感じた。
「すまない。お待たせした」
帰ってきたザインは、さっきよりも軽装な姿できた。
そして俺の座った反対の席に座った。
「どうだいその紅茶。それもさっきの庭園で栽培しているものなんだ」
「初めて飲んだのですが、こういう飲み物があるんですね」
一応前世で飲んだことはあるが、この世界では初めてだし嘘はついてない。
「そうだったのかい?我が国の特産でもあるがオード村にはないのかい?」
「まあ辺境の小さな村ですからね。実際こちらに向かう道中で村に向かう人は見てませんし」
「そうか、であればこの紅茶を村に送っておこう。君の名前でね」
「本当ですか、ありがとうございます。きっと村の人や家族も喜びます」
「それはよかった。では早速本題に移ろう」
ついにきたか。
俺を城に招いた本当の狙い、
「君には、長年続いている魔族との戦争を終わらせるために、魔王を倒してもらいたい」
やっぱりな。
父から以前に聞いた話的にもこうなるんじゃないかと予想はしていたが。
「この国から西に向かった先の海を越えると、魔族が住まう大陸がある。そこにいる魔王を倒して千年にわたる争いを終わらせたいのだ」
「まあ、この加護を持っている地点で拒否権はないですよね?」
「ないわけではない。ただ魔王を倒せるのも君だけなんだ」
「Sランクの冒険者に頼むのはダメなのですか?」
「冒険者は戦争などには参加できないんだ、それに本部はSランクの人たちの居場所は一人しか把握してないと言うし」
へーそうなのか。
今まで聞いてきた話的に、Sランク冒険者はその強さに常識が通用しないらしいから提案してみたが、まあ俺もSランクの冒険者が何人いるかなんて知らないしな。
「やりましょう」
「君ならそう答えてくれると信じてた」
「それでこれからどうすれば?」
「君の意思がとれたからね。これから君には我が父である国王に会ってもらう」
「国王陛下にですか?」
「勇者の加護を持っている人物を連れてこいとうるさくてね、本当は君を見つけた五年前に連れてきたかったんだが、君はまだ10歳だというじゃないか」
「さすがに父上もそんな子供に魔王倒しに行けなんて言わないとは思うけどね。だったら成人してからでもよいではないかと考えたのだ」
まあこの感じそれを言いそうな人なんだろうな国王って。
「わかりました。なるべく粗相のないよう努力します。ちなみにこの格好のままでいいんですか?」
「君は貴族でもないんだから大丈夫だ、私はまた身支度を整えに先に失礼する。時間になったら使用人が案内してくれるのでゆっくりしていてくれ」
そう言ってまたザインは部屋を出て行った。
それから一時間ほどして部屋の扉をノックされた。
開けると使用人がいた。
「アルケウス様、陛下との謁見の準備が整いましたのでご移動をお願いします」
言われた俺は部屋を後にした。
どうやら謁見の間は最初に入ってきた入口の目の前にある階段の裏にあるらしい。
重厚な扉を開けた先にはまさしくといった光景が広がった。
王の元まで続く道のように両脇に並んでいる人たち。
背格好からして大臣とか騎士団長のような人達なんだろう。
部屋の一番奥の玉座にどっしりと構える人物がいる。
あれがこの国の国王か。
見た目は頑固爺のようだが、ひと目見ただけでわかった。
只者ではない。
気迫とか風格っていうんだろか、とにかく直感でこの人は強いと思ったのだ。
そんな国王の脇にザインと、妹だろうか女性が待機していた。
身なりからして王族だろう。
俺は列の一番前の人たちより一歩ほど前の所で膝をついた。
「貴様が、勇者の加護を持つ者か?」
「はい。アルケウス・クロニカと申します」
「よく我が国、そして我が城に来てくれた。貴様にはあの魔族共との戦争を終わらせるために奴らの王、魔王を倒してもらいたい」
「はい。それに関して以前よりお聞きしております」
「だが、我はまだ貴様を信用していない、なにせ何も貴様のことを知らないからな。そこで、我が国の宮廷魔術師である、若き天才、モナ・マナリアと模擬戦を行ってもらう」
「はっ!」
後ろの方で声がしたので振り返った。
隊列から少し出る場所にいるのが、その魔術師なんだろう。
「こやつの実力は国でも指折りの魔術師だ。我もそれは認めている故、模擬戦でこやつに勝てたら貴様を勇者として認めよう」
「わかりました。その模擬戦、お受けします」
「よろしい、ではアルケウス・クロニカよ。我を失望させるなよ」
「模擬戦は明日の正午に行う。それまでは我が城でゆっくり休め」
謁見が終わった後、俺は城の宿泊部屋に案内された。
今日は夕食も提供してくれるらしい。
しかしまさか実力を示せと言われるとはな。
明日の模擬戦の相手、この国で指折りの魔術師って言ってたっけか。
ヴィヴィよりも上の実力なのか?
今の所俺の中の強さの基準が、この世界ではどの程度なのか分からないからな。
もしヴィヴィよりも実力が上なら、接近戦にも対応できるだろう。
そうなってくれば俺の魔剣士スタイルで勝てるのか?
ちなみに国王は直観だと、母やヴィヴィと同等かそれ以上だ。
まあ悩んでも仕方ない、実際に戦えばおのずとわかることだ。
今日はしっかり休んで、明日に備えるとするか。
そう思い俺はその日の眠りについた。
ガルシルド=バルドー 53歳
職業:バルドー王国 第49代国王
魔術:上位魔術は使えない
魔族との戦線を大陸間の海にまで戻した英雄王、頑固なおじいさんのような見た目ではあるが威厳がある
その実力はカエルやヴィヴィよりも上かも?




