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知と記憶の回廊を抜けて:異世界で二度目の生を  作者: 三木 天
バルドー王国編

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第十四話 一人の旅路

早朝、俺は旅の身支度を整えていた。

剣を腰に携え、旅の装備品を身に着け、先日もらったバックに小道具なんかを入れ、マントを羽織って。

そして家の扉を開けた。

外にはすでに見送りに待っていた人たちがいる。

俺の家族と先生だ。



「アル、無事にな。父さんたちはいつでもお前の帰りを待っている」


「ああ、必ず帰るよ」



そういって俺は突き出された拳を交わす。



「この五年間で母さんの冒険術は教えた。生かすも殺すもアル次第だ。いいね」


「ああ分かってるよ母さん」



俺はそこで母にハグをした。



「アル君、私もそのうち君を追いかけるから、いつか追いついてみせるよ!」


「無理してこなくてもいいぞ?」


「じゃあ絶対行くわ!」


「好きにしな」



シャーリーはおそらく15歳になったら俺を追ってくるらしい。

なんでそんなに俺に執着するのかわからんが、まあ好きにさせればいいだろ。



「私は一応冒険者だからどこかで会うかもね?」


「お金無くならないと、遠出しないでしょ先生は」


「さあ?どうかしらね?フフフ…」



まあ冒険者だからどこかでばったりなんてこともあるかもな。



「お兄ちゃん!」



そう呼ばれて振り返ると、ジルがこちらに向かって走ってきた、そして飛びついてきた。



「どうしたジル?」


「絶対帰ってきてね!約束だよ!」


「ああ分かってる。すぐは無理かもだけど必ず帰ってくるから。次帰ってきたときにジルがどれくらい勉強できるようになったか楽しみにしておくな」


「うん!」



ああ、この純粋な笑顔が可愛いんだよ。

そんなことを思いながらジルを地面に降ろした。



「じゃあ、行ってきます」


(一同)「いってらっしゃい!」



そうして俺はこの世界の故郷であるオード村を後にした。



―――

オード村からバルドー王国までは馬車で半日程度の距離にある。

が、今回は徒歩での移動だ。

長く見積もっても3日ぐらいはかかるだろうな。

特に急ぎってわけでもないから、ゆっくり行こう。

それに、未知の世界への冒険なんだから楽しみたいしな。


歩き始めて2時間ぐらい歩いただろうか、オード村はやはり田舎なのか全然人とすれ違わなねえ。

一応街道沿いに進んでいけば王国には着くって言ってたから大丈夫だとは思うけど、本当にこの道で会ってるのか?

実は全然違う道を進んでて人里離れた場所に向かってるとかないよな?

なんて不安が何度も頭をよぎった。

こんな辺り一面見える人工物といえばこの街道とも呼べるか怪しい道だけ。

話相手もいない状態。

人間一人になると、こうも調子が狂うもんなのか。


さらに数時間後歩き続けた頃におなかの虫が鳴った。

そろそろお昼でも食べるか。

ちょうどよく、野生動物がチラホラいる。

夜も見据えて、そこそこの大物を狩りに行く。

まあイノシシでもいいだろ。

サクッと狩って、解体。

肉以外は捨ててもいいんだが、売れば少しはお金になるだろうから取っておくか。

肉の調理の仕方なんだけど、薪を集めて、火魔法で着火、そして土魔法で作ったフライパンで焼いていく。

匂い対策で近くで採れた木の実やハーブなんかも入れてみる。

土魔法って結構汎用性高くて便利なんだぜ?

出来上がった肉を早速食べてみた。

結果はイメージしてた味とは違ったな。

香辛料とかの調味料の偉大さがわかる…

まあこれはこれで素材本来の味が楽しめたってことにしよう。うん。

そんなこんなでその後も歩き続けたが特にこれといったイベントなんかはなく、あっという間に夜になった。

街灯がないこの世界では夜の移動は危険すぎる。

日が落ちたのなら、今日はここで野宿だな。

夜ごはんは昼に食べたイノシシのお肉。

一緒に入れる木の実なんかを変えてみたりもしたが、やはり満足のいく味にはならなかった。

おなかは満たせたんだけどね。

俺は料理の才能はないのかもな。

寝床も土魔法でソロキャンプ用のテントのような形で作ってみた。

ベッドが固いのが難点だがしょうがない。

この辺は王国に着いたら調達しよっと。



―――

二日目になり王国に向かって歩いていたら、街道から少し離れた所に村を見つけた。

人と会話したかった俺は寄ってみることにした。


村に入ってみると違和感を感じた。

人の気配がしないのだ。

実際村には人がいない、廃村だった。

見渡すと荒らされた形跡があった。

最近滅んだってわけでもなさそうだし、建物は焼けたような痕跡がたくさんあった。

こういう滅んだ遺跡とか場所ってなんか心躍るんだよな。

なんて考えてたら、後ろから殺気を感じた。

振り返ると剣を振りかざして男がこちらに迫ってきた。

俺は咄嗟にその攻撃を剣で防いだ。

金属同士のぶつかり合う音が響いた。



「何者だ?ここで何をしている?」


「あんたこそ!ここで何をやってる?」

「俺は旅の途中にたまたま寄っただけだ!」


「何?」



そういうと相手は剣を収めた。



「本当に旅の途中で寄っただけなのか?」


「ああそうだ」


「…よかったー」



ん?何?どういうこと?



「すみませんいきなり攻撃して、うちのメンバーが強い気配を察知したっていうので様子を見に来たらあなたがいたので」



いやそんなこと言ってもな…せめて先に声をかけるとかあるだろ…



「私たちは冒険者でして、今依頼から帰える途中だったんです」



おお!母さんたち二人以外の初めての冒険者だ!



「せめて一声掛けてほしかったですね」


「本当にすみません、この辺りではあまりない気配だったので警戒してました」



まあそういうことなら仕方ない…のか?



「ちなみにどちらに向かわれていたのですか?」


「バルドー王国に向かっています」


「でしたら丁度我々も向かっている途中なのでご一緒にどうですか?」



願ってもない。

俺はその提案を快く受けた。


彼らはDランク冒険者で、剣士がデジン、魔術師がミミという名らしい。



「アルケウスさんは、なぜ王国に?」


「それは第」



ここで俺は言葉を止めた。

第二王子によばれて…なんていったら騒がしくなってしまうだろう。

理由…理由か…そうだ!



「大冒険をしたくて冒険者になりたいんです」


「なるほど!そうだったんですね。かなりの腕前をお持ちだと思うのできっとなれますよ」



え?冒険者って腕前が必要なの?

そこでミミが話しかけてきた



「アルケウスさんって、今おいくつですか?」


「15です」


「え?15歳でそれだけの魔力を扱えるんですか?すごいですね」


「師匠の教えの賜物です」


「師匠のお名前を聞いても?」


「ヴィヴィ・ドレイクです」


「え?!」



静かめの彼女からは想像できないような反応をした。

もしかして先生って有名人なの?



「有名なんですか?」


「もちろんですよ。ニュースターというパーティは、今でこそ解散していますが有名なパーティです。そもそもソロでBランク冒険者をやっている人はあまりいないし、実力も折り紙付きですし…あ…」


「どうしたんです?」


「すみません、憧れの人の関係者の方と知ってテンションが…」



あんな人でも憧れてもらえるんだな。

なんかアイドルの裏事情を知っている人間みたいな感覚だな。



「僕らもそろそろCランクに上がれそうなんですが、そんな僕らの一撃を止めたんです、きっとアルケウスさんは将来有名な冒険者になるんでしょう」



あの攻撃でCランクになれるのか。

そう考えたら先生とうちの母ってやっぱり規格外の実力者なんじゃないか?



「アルケウスさんは、パーティは組まれる予定ですか?」


「いや、まだ特に決めてないですね」


「でしたら、うちのパーティに入りませんか?」



出会ってまだ数時間しかたっていないのにもう勧誘するのか?



「あなたに来ていただければ戦力も上がりますしまだ二人しかいないので、どうでしょう?」


「そうですね、王国には先に済ませたい用事があるので今はごめんなさい。ただもし冒険者になって入るパーティに困ってたら、頼らせてもらいます」


「そうですか…わかりました、無理強いはしないので」



すまんねデジン、言えない事情があまりにも大きいことだからさ。

二日目の夜は昨日と違い賑やかだった。

俺が三人分の寝床スペースを土魔法で作ると二人は驚いていた。



「『アースウォール』をこんな使い方をする人初めて見ました」


「ああ、あとはあの調理器具だね」



外では基本干し肉のような保存食がメインらしくこういう採れたてをその場で調理することはほとんどないらしい。



「ちなみに王国まではあとどれくらいですか?」


「今日のペースで行けば明日のお昼前には着くと思いますよ」



なんだかんだでもう明日には目的地に到着するのか



「そういえばアルケウスさん、城下町に入る際に身分証とかが必要になりますけどお持ちですか?」



え?そんなものが必要なのか?どうしよう…


なんてことはなく、父からもらった物に俺の身分証が入っている。

旅に出る前に、父が作ってくれたらしい。

どうやって作ったのかは知らない。



「一応これであれば持ってます。」



そういって二人に身分証を見せると、二人はまたおどろいた。



「どうしたんです?」


「これ王国直々のサインが入っているんですけど!?あなたはいったい…」



やべっ!そういうことか、勇者である俺の証明書のようなものか、しまった!



「父が王国に勤めていたので…」



やばい、これしか言い訳が思いつかなかった…


……



「なんだそういうことですか、てっきり王族関係の方かと」


「いえいえ、辺境の村で生まれ育った一般人です」



何とかごまかせたのか?



「ではそろそろ寝ましょう」


「そうですね」


「おやすみなさいアルケウスさん」


「おやすみなさい」


「ええ、お二人もおやすみなさい」



そういって二日目の夜も無事に過ごした。



―――

そうして三日目の昼頃、ようやく城壁が見えてきた。

その大きさからこの国がかなりの大国であることは一目でわかった。



「アルケウスさん、あれがバルドー王国です」


「大きいな」


「はい。人族の国の中で最も大きな国ですから」



まさに中世のような石造りの城壁。

これが、バルドー王国か。

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