第五十六話 帰る場所(一章完結)
翌朝。
仮ひだまりの食堂は、いつもより早くから騒がしかった。
理由は一つ。
今日こそ、ひだまり孤児院へ帰る日だからだ。
トト「今日こそ帰る!」
マーサ「走らない」
トト「まだ座ってる!」
ガル「心は走ってるな」
ユアン「昨日も同じこと言ってた」
ミリ「ひだまり」
リリィ「猫、引っ越し二回目」
猫「……」
猫は食堂の椅子の上で、尻尾だけをゆっくり動かしていた。
二か月の仮ひだまり生活。
最初は広すぎて落ち着かなかったレオンの屋敷も、今ではすっかり子どもたちの生活の匂いが染みついている。
食堂の席順。
迷子防止の地図。
猫の寝床。
アルトの場所。
かくれんぼ禁止区域。
壁に貼られた仮ひだまり防護二十三か条。
ここは仮だった。
けれど、仮でも家だった。
エルは食堂を見回して、小さく言った。
「ここにも、ありがとうって言いたい」
マーサ「いいね。出る前にみんなで言おうか」
トト「家に?」
マーサ「そうだよ。二か月守ってくれたんだからね」
レオンは黙ってスープを飲んでいた。
今日は朝から、少しだけ表情が柔らかい。
だが、浮かれてはいない。
帰る道が安全かどうか。
それを確認するまでは、帰るとは言い切らない。
フィリア「レオン様、今日はまずギルドからの報告待ちですね」
レオン「ああ」
リュシア「私も遠隔で結界の状態を確認するわ。昨日の時点では問題なかったけれど、最後にもう一度見る」
セシリア「荷物はまとめ終えています。忘れ物確認は三回実施済みです」
トト「俺の訓練棒は?」
セシリア「五本確認済みです」
ガル「増えてるぞ」
ユアン「仮ひだまりに来た時より二本増えてる」
トト「成長したから!」
マーサ「棒は増やすものじゃないよ」
ミリ「すーぷ鍋は?」
マーサ「鍋は帰るよ」
ミリ「よし」
その時、門の方から馬の足音が聞こえた。
全員が少しだけ静かになる。
トトは立ち上がりかけて、止まった。
「門に誰か!」
マーサ「よし。行こうか」
レオンが立ち上がる。
アルトも庭の端で顔を上げた。
門の外にいたのは、ギルドの若い冒険者と、昨日からひだまり周辺の確認に出ていた古株の冒険者だった。
トト「合言葉!」
若い冒険者は少し緊張しながら答えた。
「どこへ帰る? ひだまりへ帰る!」
トト「よし!」
古株が笑った。
「もう慣れたな、この合言葉」
レオン「報告を」
古株は表情を引き締めた。
「ひだまり孤児院周辺、異常なし。街道も問題なし。工事現場だった場所は片づいてる。結界も安定してるって、同行した結界師が言ってた」
若い冒険者も続ける。
「森側の足跡も確認しました。昨日の魔物の残りは近くにいません。王都東門から孤児院までの道、安全確認済みです」
食堂に、ほっとした空気が広がった。
トト「じゃあ……」
ガル「帰れる?」
ユアン「安全確認済みなら」
エルはレオンを見る。
ミリも。
リリィも。
猫も、なぜかレオンを見る。
レオンは少しだけ黙った。
そして言った。
「帰る」
その瞬間。
トト「やったあああ!」
マーサ「走らない!」
トト「まだ跳ねただけ!」
ガル「跳ねるのも危ない」
ユアン「でも気持ちは分かる」
ミリ「ひだまり帰る」
リリィ「猫、帰るよ」
猫「……」
アルトが庭で大きく翼を広げた。
ぐるる。
その声も、どこか嬉しそうだった。
出発前。
みんなで食堂に集まった。
仮ひだまりの食堂。
二か月の間、毎日スープを飲んだ場所。
怒られた場所。
笑った場所。
レオンが書類から逃げようとして捕まった場所。
トトがアルト騎乗許可をもらった場所。
ワイバーン肉を食べた場所。
魔物の群れの日に、みんなで待った場所。
マーサが静かに言った。
「じゃあ、挨拶しようか」
子どもたちは少し照れながら、食堂へ向かって頭を下げた。
トト「仮ひだまり、ありがとうございました!」
ガル「二か月、世話になった」
ユアン「迷ったけど、助かりました」
エル「怖い日も、ここにいられてよかったです」
ミリ「かりすーぷ、ありがとう」
リリィ「猫もありがとう」
猫「……」
猫は、短く鳴いた。
にゃ。
全員が少し驚いた。
リリィ「猫が言った」
ガル「珍しい」
ユアン「本当にありがとうって言ったのかも」
レオンは食堂を一度だけ見た。
自分の家。
普通の家だと言い張っていた場所。
だが、この二か月で、確かに仮ひだまりになっていた。
レオン「……助かった」
マーサ「家に言ったのかい?」
レオン「……ああ」
マーサは少しだけ笑った。
「いいことだよ」
荷物は馬車に積まれた。
子どもたちは歩く者と馬車に乗る者に分かれた。
アルトは空ではなく、地上を歩く。
今日は移動の日。
無駄に飛ばない。
トトはアルトの横を歩きながら、何度も見上げた。
「アルト先輩、帰るね」
アルト「……」
ぐるる。
リリィ「アルト先輩もひだまり住民?」
ユアン「仮住民から正式な外部協力者かな」
ガル「何だそれ」
ミリ「アルト先輩」
フィリア「無理のない速度で行きましょう」
リュシア「道の結界も見ながら進むわ」
セシリア「移動隊列を確認します。先頭、グレン副団長の騎士二名。中央、子どもたち。後方、ギルド冒険者。アルトは右側警戒」
トト「本格的!」
レオン「帰る道だからな」
馬車が動き出す。
仮ひだまりの門がゆっくり遠ざかる。
トトは少しだけ振り返った。
「また来る?」
レオン「ああ」
「遊びに?」
「必要なら」
マーサ「たまには普通に遊びに来てもいいんじゃないかい?」
レオン「俺の家だが」
ガル「もう仮ひだまりでもある」
ユアン「地図も残しておいたし」
レオン「残したのか」
リリィ「猫部屋も」
猫「……」
レオンは少しだけ遠い目をした。
リュシアが笑う。
「諦めなさい。あなたの普通の家は、もう普通じゃないわ」
レオン「前から普通だ」
全員「違う」
道中は静かだった。
昨日まで魔物の群れが押し寄せていたとは思えないほど、空気は落ち着いている。
けれど、冒険者たちは油断しない。
騎士たちも周囲を見ている。
アルトも何度か足を止め、風の匂いを嗅いだ。
そのたびに、トトは止まる。
走らない。
急かさない。
「アルト先輩、何かある?」
アルト「……」
ぐるる。
レオン「問題ない。確認しているだけだ」
トト「確認、大事」
ユアン「二十二番目と同じだね」
エル「危ない時は待つ」
ミリ「待つ」
リリィ「猫は待てない時もある」
猫「……」
やがて。
ひだまり孤児院が見えてきた。
トトが息を呑む。
ガルも目を見開く。
ユアンは言葉を忘れたように立ち止まる。
エルは胸の前で手を握った。
ミリは小さく「ひだまり」と呟く。
リリィは猫を抱き直した。
そこには、前より少し強くなったひだまり孤児院があった。
新しい屋根。
直された煙突。
まっすぐな窓枠。
明るくなった壁。
補強された井戸。
庭の柵。
玄関の上には、小さな木の看板。
『ひだまり孤児院』
文字は前と同じ。
けれど、板は新しい。
トト「ほんとに……直ってる」
マーサはゆっくり歩いて、玄関の前に立った。
しばらく何も言わなかった。
この場所で、ずっと子どもたちを育ててきた。
古い床。
煤けた煙突。
すきま風の入る窓。
湿気のある壁。
それでも、ここは家だった。
そして今。
その家が、強くなって戻ってきた。
マーサ「ただいま」
その一言で、子どもたちが一斉に声を上げた。
トト「ただいま!」
ガル「ただいま!」
ユアン「ただいま」
エル「ただいま……!」
ミリ「ただいま」
リリィ「猫もただいま」
猫「……」
猫はマーサの足元からすっと抜け、玄関の前に座った。
そして、少しだけ鼻を鳴らした。
合格らしい。
レオンは玄関の前に立ち、静かに言った。
「どこへ帰る?」
トトが答える。
「ひだまりへ帰る!」
子どもたちも続いた。
「ひだまりへ帰る!」
門が開く。
玄関が開く。
新しい木の匂いがした。
中へ入ると、食堂は明るくなっていた。
床はしっかりしている。
窓から光が入る。
壁は乾いている。
台所は少し広くなり、煙突もきれいになっている。
マーサは台所へ入り、すぐに鍋の置き場所を確認した。
「よし。使いやすい」
トト「マーサ先生が最初に見るの、そこなんだ」
マーサ「一番大事だよ」
ミリ「すーぷの場所」
ガル「確かに大事」
ユアンは壁を見る。
「ここ、札を貼れる」
エル「二十三か条?」
リリィ「増えたね」
セシリア「仮ひだまりで増えた分も含め、正式に貼り直します」
レオン「全部か」
トト「全部!」
ガル「忘れたら危ないだろ」
ユアン「大事な約束だからね」
ミリ「すーぷも」
レオン「すーぷは約束ではない」
マーサ「七番目にあるよ」
レオン「……あったな」
壁に、新しい紙が貼られていく。
一、かってに外へ出ない。
二、知らない石をさわらない。
三、こわかったら大人に言う。
四、アルト先輩にかってに乗らない。
五、アルト先輩に変なものを食べさせない。
六、手を洗う。
七、すーぷを飲む。
八、地面がへんだったら大人に言う。
九、声が聞こえても、すぐ門を開けない。合言葉をたしかめる。
十、ぜったい帰る。
十一、助けたい時ほど、みんなを呼ぶ。
十二、帰ったら食べる。
十三、知らない荷物は大人が見るまで開けない。
十四、知ってる人でも、いつもと違ったら大人に言う。
十五、勝っても油断しない。
十六、靴ひもをちゃんと結ぶ。
十七、工事中の孤児院には勝手に戻らない。
十八、力は帰る道を作るために使う。
十九、一人で行く日も、ちゃんと帰ってくる。
二十、遊びでも、呼ばれたら返事をする。
二十一、できることが増えても、調子に乗らない。
二十二、帰る日でも、危ない時は待つ。
二十三、強くても、力をいじめに使わない。
トトは十七番を見て首を傾げた。
「工事終わったけど、十七番いる?」
ユアン「歴史として残す?」
ガル「また工事することあるかもしれないしな」
ミリ「こうじ」
リリィ「猫、工事きらい」
猫「……」
マーサ「残しておきな。あの時、ちゃんと待った証拠だよ」
エル「待てた証拠……」
レオンは十七番を見る。
工事中の孤児院には勝手に戻らない。
その約束があったから、誰も危ない場所へ戻らなかった。
十七番は、もう必要ないようで、確かに必要だった。
レオン「ああ。残せ」
トト「採用続行!」
その後、荷物の整理が始まった。
ガルは重い箱を運ぶ。
ユアンは棚の位置を確認する。
エルは自分の部屋の窓を開けて、風を入れる。
ミリは台所周りをうろうろして、マーサに「まだ」と言われる。
リリィは猫の寝床を置く場所を探す。
猫は、なぜか一番日当たりのいい場所をすでに確保していた。
トトは庭へ飛び出そうとして、玄関で止まった。
「庭、見ていい!?」
マーサ「大人と一緒ならね」
トト「レオン兄ちゃん!」
レオン「ああ」
庭も変わっていた。
地面はならされ、危ない石は取り除かれている。
井戸の周りにはしっかりした柵。
木陰には、子どもたちが休める小さなベンチ。
そして、端にはアルトが休める少し広い場所が作られていた。
トト「アルト先輩の場所!」
アルト「……」
ぐるる。
アルトはその場所を見て、少しだけ首を傾げた。
そして、ゆっくりそこへ歩き、座った。
トト「気に入った?」
アルト「……」
ぐるる。
リリィ「たぶん合格」
ユアン「アルト用スペースも正式採用」
ガル「孤児院にグリフォンの場所があるって、普通じゃないよな」
レオン「普通だ」
全員「違う」
その時、門の外から声がした。
「王城より、最終確認に参りました!」
グレンだった。
同行しているのは、王城の結界師と、数名の騎士。
そして。
ルカとアリシアもいた。
トト「ルカ王子!」
ルカ「トト!」
二人は走りかけて、同時に止まった。
トト「走らない!」
ルカ「走らない!」
グレン「よし」
アリシアは微笑んだ。
「ひだまり孤児院、完成おめでとうございます」
エル「ありがとうございます」
ルカは庭を見回して、目を輝かせた。
「ここが、ひだまり……!」
トト「そう! ここが本物!」
ガル「仮じゃない方な」
ユアン「でも仮ひだまりも大事だった」
アリシア「帰る場所が増えたのですね」
エル「はい」
結界師が建物全体を確認する。
「結界、安定しています。黒玻璃の魔力痕への耐性も以前より強い。井戸周りも安全です」
リュシアも水晶を覗き、頷いた。
「問題なし。むしろ前よりずっといいわ」
フィリアは子ども部屋を見て戻ってくる。
「換気も問題ありません。湿気も改善されています」
マーサ「じゃあ、今日からここで寝られるね」
ミリ「ひだまりで寝る」
リリィ「猫も」
猫「……」
ルカは壁の二十三か条を見て、感心したように言った。
「増えましたね」
トト「王城にも貼る?」
ルカ「貼りたいです」
グレン「検討はしますが、そのまま王城に貼ると少し問題があります」
アリシア「七番の“すーぷを飲む”は、王城でも大事かもしれません」
レオン「王城で広げるな」
国王がいれば採用しかねない。
レオンは本気でそう思った。
ルカはふと、レオンの腰を見た。
「レオン殿」
レオン「なんだ」
「それが、灰天太刀ですね」
トト「灰天太刀?」
ガル「剣じゃないのか?」
ユアン「昨日言ってた、太刀?」
リリィ「太刀って何?」
ミリ「たち」
レオンは少しだけ眉間を押さえた。
「広まるのが早い」
グレン「王城ではすでに正式記録に入りました」
ルカ「灰太刀のレオン、とも」
レオン「言うな」
トトの目が輝いた。
「灰太刀のレオン兄ちゃん!」
レオン「トト」
トト「ごめんなさい!」
マーサは笑いをこらえている。
リュシアはこらえていない。
フィリアも少しだけ口元を押さえていた。
エルは真面目に聞いた。
「太刀は、剣と違うんですか?」
レオンは少し考える。
子どもに説明するには、難しい。
だが、誤魔化すことでもない。
「剣は、正面から受けて斬ることが多い」
トト「うん」
「太刀は、流れで斬る。抜く時、動く時、戻る時も含めて斬る」
ユアン「道みたいですね」
レオン「ああ」
エル「帰る道を作るための太刀」
レオンは少しだけ目を細めた。
「そうだ」
トト「かっこいい……!」
レオン「かっこよさで持つものじゃない」
ルカ「僕も同じことを言われました」
トト「やっぱり王城トトだ」
ルカ「王城トト?」
グレン「気にしないでください」
その日の夕方。
ひだまり孤児院の食堂では、帰還祝いのスープが作られた。
派手な料理ではない。
ワイバーン肉でもない。
ただの野菜スープ。
けれど、いつもの場所で食べるそれは、特別だった。
マーサが大鍋からスープをよそう。
「はい、帰還一杯目だよ」
ミリ「ひだまりすーぷ」
トト「いただきます!」
ガル「やっぱりここだな」
ユアン「天井の高さが落ち着く」
エル「窓の光がきれい」
リリィ「猫も落ち着いた」
猫「……」
アルトは庭で専用の肉を食べている。
ぐるる。
ルカとアリシアも、少しだけスープをもらった。
ルカ「おいしいです!」
アリシア「とても温かい味です」
マーサ「たくさんあるから食べな」
グレン「王族にその言い方をできるのは、マーサ殿くらいですね」
レオン「陛下にも言う」
マーサ「言うよ」
全員が少し笑った。
食後。
トトは壁の二十三か条を見た。
「今日、二十四番いる?」
レオン「毎回増やすな」
トト「でも、帰ってきたから」
マーサ「何を書くんだい?」
トトはしばらく考えた。
そして、紙を持ってきた。
ゆっくり、少し曲がった字で書く。
二十四、帰ってきたら、ありがとうを言う。
食堂が静かになった。
ガル「いいな」
ユアン「うん」
エル「今日にぴったり」
ミリ「ありがとう」
リリィ「猫も?」
猫「……」
猫は窓際から、短く鳴いた。
にゃ。
トト「猫も言った!」
レオンはその紙を見た。
帰ってきたら、ありがとうを言う。
仮ひだまりにも言った。
ひだまりにも言った。
帰る場所は、ただそこにあるだけではない。
誰かが守り、直し、待ち、戻ってきたからある。
なら、ありがとうを言うのは当然かもしれない。
レオン「採用だ」
トト「やった!」
マーサが壁に二十四番目を貼った。
二十四、帰ってきたら、ありがとうを言う。
その文字の下で、子どもたちはもう一度食堂を見回した。
トト「ひだまり、ありがとう!」
ガル「ありがとう」
ユアン「またよろしくお願いします」
エル「ただいま。ありがとう」
ミリ「ありがとう」
リリィ「猫もありがとう」
猫「……」
レオンは少しだけ遅れて、静かに言った。
「ありがとう」
その声は小さかった。
けれど、マーサには聞こえていた。
リュシアにも。
フィリアにも。
セシリアにも。
そして、たぶん。
この新しくなったひだまり孤児院にも。
夜。
子どもたちはそれぞれの部屋で眠りについた。
新しい床。
新しい窓。
新しい壁。
でも、同じ匂い。
同じ声。
同じ帰る場所。
レオンは最後に食堂の灯りを落とす前、壁の二十四か条を見た。
増えた。
本当に増えた。
けれど、その一つ一つに意味がある。
黒玻璃。
工事。
仮ひだまり。
アルト。
ワイバーン。
魔物の群れ。
魔族。
太刀。
いろいろなことがあった。
それでも、ここへ帰ってきた。
レオンは腰の灰天太刀に触れる。
剣ではなく、太刀。
斬るためだけではなく、帰る道を作るための刃。
今日は、その道の先に、子どもたちを戻すことができた。
それで十分だった。
外では、アルトが静かに眠っている。
空には、星が戻っていた。
黒い膜は、もうかなり薄い。
けれど、遠くの森の奥には、まだ見えない影が残っているかもしれない。
若い魔族の背後。
黒玻璃とは別の魔力。
そして、まだ名前のない不穏。
レオンは灯りを消す前に、小さく呟いた。
「明日も、守る」
食堂の灯りが消える。
ひだまり孤児院の夜が戻ってきた。
新しくて、懐かしい夜。
帰る場所の夜だった。




