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第五十三話 帰る日……


朝。


仮ひだまりの食堂は、いつもより少しだけ浮き足立っていた。


理由は一つ。


ひだまり孤児院の工事が、今日終わるからだ。


二か月。


長いようで、あっという間だった。


レオンの豪邸――本人いわく普通の家――で始まった仮ひだまり生活。


最初は広すぎる廊下に迷い、部屋の数に戸惑い、食堂の天井の高さに落ち着かなかった。


けれど、いつの間にか地図が貼られ、猫部屋ができ、アルトの寝床が整い、庭には騎乗訓練の跡が残った。


そして今日。


本当のひだまりへ帰る日が来た。


トト「帰れる!」


ミリ「ひだまり」


リリィ「猫、引っ越し?」


猫「……」


ガル「荷物、まとめたか?」


ユアン「トトの木の棒が増えてる」


トト「訓練用!」


エル「帰るけど、少し寂しいね」


トト「え?」


エル「ここも、少しだけ帰る場所になったから」


その言葉に、食堂が少し静かになった。


仮ひだまり。


最初は仮だった。


でも、二か月暮らした場所だ。


笑った。


怒られた。


走らない練習をした。


かくれんぼをした。


アルトに乗った。


ワイバーン肉を食べた。


レオンが帰ってくるのを待った。


仮でも、確かにここは一時の家だった。


マーサは鍋を混ぜながら言った。


「帰る場所が増えるのは、悪いことじゃないよ」


トト「帰る場所って、一つじゃなくていいの?」


マーサ「ああ。大事なのは、ちゃんと帰ることだよ」


セシリア「荷物の確認は午前中に済ませます。午後、工事完了の最終確認後に移動予定です」


リュシア「結界の確認も私が見るわ」


フィリア「子ども部屋の湿気と換気も確認します」


レオンはいなかった。


朝からギルドへ行っている。


工事完了の日だからこそ、王都冒険者ギルド側の調整も必要だった。


孤児院周辺の巡回依頼。


引っ越しの護衛。


工事業者への最終支払い。


新しい結界の登録。


全部、レオンが確認することになっていた。


トト「レオン兄ちゃん、朝からギルド?」


マーサ「ああ。帰るための仕事だよ」


ガル「また書類山?」


セシリア「山です」


ユアン「即答」


ミリ「紙山」


リリィ「猫山」


猫「……」


マーサ「まあ、今日は帰る日だ。みんな、浮かれすぎないこと」


トト「はい!」


マーサ「走らない」


トト「はい!」


マーサ「荷物を増やさない」


トト「……はい」


ガル「今ちょっと間があったぞ」


トト「木の棒は必要!」


王都冒険者ギルド。


朝から、ギルドは忙しかった。


受付には依頼書が積まれ、職員たちが走り回る。


冒険者たちは掲示板の前で依頼を見比べている。


いつも通りの喧騒。


いつも通りの汗と革鎧とインクの匂い。


その奥の執務室で、レオンは書類を見ていた。


受付嬢「ギルドマスター、ひだまり孤児院周辺の巡回依頼、更新完了です」


レオン「ああ」


受付嬢「工事業者への最終支払い確認書です」


レオン「置け」


受付嬢「王城への結界登録報告書です」


レオン「置け」


受付嬢「ギルドマスター宛の未処理書類です」


レオン「……置け」


受付嬢「顔が少しだけ嫌そうです」


レオン「少しだけではない」


古株の冒険者が扉の外から笑った。


「今日、孤児院に帰るんだろ? めでたい日じゃねぇか」


レオン「ああ」


若い冒険者「手伝い必要なら言ってください!」


レオン「必要なら頼む」


古株「お、また頼むって言ったぞ」


レオン「仕事に戻れ」


受付嬢「ギルドマスターも仕事に戻ってください」


レオン「……ああ」


その時だった。


ギルドの扉が、乱暴に開かれた。


ばんっ!


中に飛び込んできたのは、探索帰りの冒険者だった。


一人ではない。


三人。


全員、土と血に汚れている。


軽傷ではあるが、息が荒い。


ギルド内の喧騒が一瞬で止まった。


レオンは執務室から出た。


「何があった」


先頭の冒険者が、膝に手をつきながら叫ぶ。


「王都東の森から、魔物の群れが来る!」


受付嬢の表情が変わる。


古株が立ち上がる。


レオン「数は」


冒険者「正確には不明! 少なくとも三十以上! ゴブリン、狼型、牙猪、黒羽の鳥型も混じってる!」


別の冒険者が続ける。


「普通の群れじゃない。種類が混ざりすぎてる。逃げてるというより、押し出されてる感じだ!」


レオン「進路は」


「王都方面です!」


ギルド内に緊張が走った。


昨日のワイバーンとは違う。


空ではない。


地上からの群れ。


市街地に入れば、被害は広がる。


レオンはすぐに指示を出した。


「鐘を鳴らせ。緊急防衛依頼。王都東門と南東外壁周辺に冒険者を集める」


受付嬢「はい!」


「飛び道具持ちは外壁上。前衛は門前。回復役は後方。新人は単独行動禁止。古株と組ませろ」


古株「任せろ!」


「王城へ伝令。騎士団と連携。市民の避難誘導は王城側に要請」


受付嬢「すぐに!」


「ギルド備蓄の矢、回復薬、投網、閃光玉を出せ」


職員「はい!」


若い冒険者が剣を握った。


「俺たちも行きます!」


レオンはその若者を見た。


「誰と組む」


若い冒険者「えっ」


「一人で行くな。昨日言ったはずだ」


若い冒険者は息を呑み、すぐ古株を見る。


「一緒にお願いします!」


古株はにやりと笑った。


「よし。今日は帰り方を教えてやる」


レオン「いい」


ギルド全体が動き出した。


紙の山は、後回しになった。


受付嬢が緊急依頼の札を掲示板に叩きつける。


『王都防衛緊急討伐依頼』


報酬は後で決める。


今は王都を守る。


冒険者たちは武器を取り、走り出す。


ただし、無秩序ではない。


レオンの指示が通っている。


どこへ行くか。


誰と組むか。


何を持つか。


戻る場所はどこか。


それが決まっているだけで、混乱は小さくなる。


レオンは外套を羽織った。


受付嬢「ギルドマスターも前線へ?」


レオン「ああ」


「孤児院は」


レオンは一瞬だけ止まった。


今日は、帰る日だった。


工事が終わる日。


子どもたちが楽しみにしていた日。


だが、今は王都に魔物の群れが来る。


レオン「マーサ先生たちに連絡。仮ひだまりで待機。移動は禁止」


受付嬢「はい」


レオン「アルトにも伝えろ。空と屋敷周辺の警戒」


受付嬢「どう伝えれば」


レオン「グリフォンに慣れた伝令を使え。合言葉も忘れるな」


受付嬢「どこへ帰る?」


レオン「ああ」


受付嬢は頷き、すぐ走った。


仮ひだまり。


荷物の確認中だった食堂に、ギルドからの伝令が来た。


門の前で、伝令はきちんと止まった。


伝令「ギルドから緊急連絡です!」


トトが反射的に走りかける。


だが止まる。


「合言葉!」


伝令「どこへ帰る? ひだまりへ帰る!」


トト「よし!」


マーサが玄関へ出る。


「何があったんだい」


伝令「王都東方面に魔物の群れが接近中! ギルドマスターより、仮ひだまりは待機。孤児院への移動は延期。アルト殿は屋敷周辺警戒をお願いします!」


食堂が静かになった。


トト「魔物の群れ……」


ガル「帰る日なのに」


ユアン「移動は危険だね」


エル「レオン兄ちゃんは?」


伝令「ギルドにて指揮。その後、前線へ向かわれます」


ミリ「帰れない?」


マーサは少しだけ息を吐いた。


そして、はっきり言った。


「今日は帰らない」


トト「でも、工事終わったんだよね?」


マーサ「ああ。終わった。でも、帰る道が危ないなら帰らない」


エル「帰るために、待つ」


マーサ「そうだよ」


リリィ「猫、待機」


猫「……」


アルトが庭で大きく翼を広げた。


ぐるる。


低い声。


普段より鋭い。


リュシアが空を見た。


「私は結界を補強するわ。フィリア、子どもたちを食堂へ」


フィリア「はい」


セシリア「非常用の札と水を準備します」


トト「俺たちは?」


マーサ「食堂に集まる。窓から離れる。勝手に外へ出ない」


ガル「手伝えることは?」


マーサ「あるよ。小さい子を落ち着かせること。荷物を通路に置かないこと。声を聞いたら返事すること」


ユアン「二十番目」


エル「遊びじゃなくても、呼ばれたら返事」


マーサ「その通り」


トトは拳を握った。


「アルト先輩に乗って見に行ったりは……」


全員がトトを見た。


トト「しない! 言ってみただけ!」


アルトが遠くから低く鳴いた。


ぐるる。


リリィ「アルト先輩、今ちょっと怒った」


トト「すみません!」


王都東門。


すでに冒険者たちが集まり始めていた。


外壁の上には弓使いと魔法使い。


門の前には盾持ちの前衛。


少し下がった位置に回復役。


後方には伝令係。


騎士団も合流している。


グレンが騎士を率いて到着した。


「レオン殿!」


レオン「状況は」


グレン「王城側でも群れを確認。市民の避難は始めています。陛下とアリシア殿下は魔法通信で誘導。ルカ殿下は王城内で待機」


レオン「いい」


グレン「数が多いですね」


遠く、地平線近くに土煙が上がっている。


魔物の群れ。


ゴブリン。


牙猪。


狼型。


黒羽の鳥型。


統率されているようで、されていない。


しかし、ただの自然発生でもない。


押し寄せる波のように、王都へ向かっている。


古株の冒険者が唾を吐く。


「嫌な群れだな。種類が混じりすぎてる」


レオン「ああ」


若い冒険者が緊張で剣を握りしめる。


レオンは言った。


「前に出すぎるな」


若い冒険者「はい!」


「倒すことより、抜かせないことを考えろ」


「はい!」


「怖いなら、声を出せ」


若い冒険者は一瞬驚き、それから頷いた。


「怖いです!」


古株が笑った。


「いい声だ」


レオン「それでいい」


魔物の群れが近づく。


弓の射程に入る。


グレンが手を上げる。


「弓兵、構え!」


レオンが静かに言う。


「まだ」


グレンは少しだけ目を細めたが、手を止めた。


群れが近づく。


もう少し。


先頭の牙猪が地面を削りながら突進する。


レオン「今」


グレン「放て!」


矢が降った。


魔法が走った。


先頭の魔物が崩れる。


それでも後続が押してくる。


レオンが前へ出た。


灰天太刀が抜かれる。


瞬灰歩。


灰色の影が、門前を走った。


次の瞬間、先頭の牙猪の脚が落ちる。


狼型の首筋が断たれる。


ゴブリンの武器が弾かれる。


倒す。


だが、追いすぎない。


門の前の線を守る。


冒険者たちが続く。


「右、抜けるぞ!」


「投網!」


「鳥型、上!」


「魔法班、頼む!」


「怪我人下げろ!」


声が飛ぶ。


混乱はある。


だが、崩れてはいない。


ギルド全体が一つの大きな盾になっていた。


レオンは前線の中心に立ち、必要な場所だけを斬った。


一撃。


一歩。


一判断。


派手に暴れない。


全体を見て、穴を埋める。


グレンは騎士団側を指揮しながら、改めて思う。


これが、ギルドマスターの戦い方か。


一人で勝つのではない。


全員が帰れるように、道を整える戦い。


戦闘は長く続いた。


だが、夕方前には第一波の大半が討伐された。


残った魔物は森側へ散り、追撃班が無理をしない範囲で追う。


レオンは追撃を止めた。


「深追いするな」


古株「了解」


若い冒険者「でも、まだ奥に……」


レオン「戻る」


若い冒険者は口を閉じた。


昨日までなら、追いたくなったかもしれない。


だが今は、戻る判断の意味を少しだけ知っている。


「はい」


その時。


森の奥を探索していた斥候班が戻ってきた。


三人。


そのうち一人は肩を押さえている。


フィリアではなく、前線の回復役がすぐに駆け寄る。


レオン「報告」


斥候の女冒険者が息を整える。


「奥に……何かいます」


グレン「何か?」


「魔物を追って、森の深部手前まで見ました。群れは自然に集まったんじゃありません。奥から押し出されています」


レオン「魔力は」


女冒険者は顔をこわばらせた。


「魔族の魔力を確認しました」


空気が重くなる。


周囲の冒険者たちも言葉を失う。


魔族。


魔物とは違う。


知性を持ち、魔力を操り、時に軍勢を動かす存在。


黒玻璃とはまた別の、不穏な名。


グレン「確かか」


女冒険者「はい。昔、北方戦線にいた冒険者が同行していました。その人も同じ魔力だと」


もう一人の冒険者が頷く。


「黒玻璃の気配とは違う。もっと生臭いというか……獣を無理やり押すような魔力だった」


レオンは森の奥を見る。


魔物の群れ。


王都への圧力。


工事完了の日。


ひだまりへ帰るはずの日。


偶然か。


それとも。


レオン「今日はここまでだ」


若い冒険者が驚く。


「奥を調べないんですか?」


レオン「今の疲れた部隊で森の奥へ入れば、帰れない」


古株が頷いた。


「正しい」


グレン「王城へ報告します。夜間警戒を厚くしましょう」


レオン「ああ。ギルドは交代制で見張り。斥候は休ませろ。明日、改めて調査隊を組む」


女冒険者が頭を下げる。


「すみません、奥までは……」


レオン「戻った。それでいい」


女冒険者の顔が少しだけ緩んだ。


「はい」


仮ひだまりでは、夕方になっても誰も外へ出なかった。


食堂に集まり、窓から離れて待つ。


マーサがスープを作っている。


いつもより少し濃い味。


不安な日には、温かいものが必要だからだ。


トトは椅子に座り、拳を握っていた。


「帰る日だったのに」


ガル「明日かもしれないだろ」


ユアン「安全確認が先」


エル「でも、ひだまり、完成したんだよね」


セシリア「職人からの報告では、工事は完了しています。結界も仮稼働済みです」


リュシア「私も見に行けていないけれど、遠隔では安定しているわ」


ミリ「帰れる?」


マーサ「帰れるよ。今日は帰らないだけだ」


リリィ「猫、待てる?」


猫「……」


猫は丸くなっている。


待てるらしい。


アルトは庭でずっと警戒していた。


空を見ている。


屋敷の周りを見ている。


時々、低く鳴く。


ぐるる。


それだけで、子どもたちは少し安心した。


夜が近づく頃。


門の外から声がした。


「ギルドから伝令です!」


トトは立ち上がる。


走らない。


「合言葉!」


「どこへ帰る? ひだまりへ帰る!」


トト「よし!」


伝令は息を切らしていた。


「第一波、撃退! ギルドマスターは無事! ただし、王都周辺警戒継続。今夜の移動は中止とのことです!」


食堂にほっとした空気が広がる。


エル「レオン兄ちゃん、無事……」


マーサ「よし」


トト「帰ってくる?」


伝令「ギルドマスターは、夜間警戒の指示を終えてから戻るとのことです」


ガル「また遅いな」


フィリア「戻ったら食べさせます」


マーサ「もちろんだよ」


その夜。


レオンが仮ひだまりへ戻った時、食堂にはまだ灯りがあった。


マーサが待っている。


フィリアが待っている。


セシリアが待っている。


リュシアも、子どもたちも起きていた。


トトは椅子に座ったまま、半分眠りかけている。


レオン「ただいま」


マーサ「どこへ帰る?」


レオン「仮ひだまりへ帰る」


マーサ「よし。食べな」


レオン「……ああ」


トトが目をこすりながら立ち上がる。


「レオン兄ちゃん」


レオン「なんだ」


「ひだまり、帰れなかった」


レオン「ああ」


「でも、魔物がいたら帰っちゃだめだよね」


レオン「ああ」


トトは少しだけ唇を噛んだ。


「じゃあ、待つ」


レオンはトトを見る。


「ああ。明日、安全を確認する」


ユアン「魔物は?」


レオン「第一波は退けた」


ガル「第一波?」


食堂の空気が少し重くなる。


リュシアが目を細めた。


「奥に何かあったのね」


レオン「ああ」


マーサ「何がいたんだい」


レオンは少し黙った。


そして、子どもたちにも分かるように言葉を選んだ。


「森の奥に、魔物を押し出している何かがいる可能性がある」


エル「黒玻璃?」


レオン「違うかもしれない」


リュシア「別の魔力?」


レオン「ああ。探索班は、魔族の魔力だと言った」


沈黙。


マーサの顔が少しだけ険しくなる。


セシリアは静かに息を吸った。


フィリアは子どもたちの顔を見る。


トト「魔族って……魔王の?」


レオン「まだ分からない」


ガル「強いのか?」


レオン「強いものもいる」


ユアン「王都を狙ってる?」


レオン「それもまだ分からない」


エルは手を胸に当て、呼吸した。


怖い。


でも、言えた。


「怖いです」


レオン「ああ」


「でも、言えました」


レオン「いい」


マーサがスープを置く。


「まず食べな。怖い話は、腹が空いてる時に聞くもんじゃないよ」


ミリ「すーぷ」


リリィ「猫も怖い?」


猫「……」


猫は静かにレオンの足元へ寄った。


珍しいことだった。


レオンは少しだけ猫を見る。


「……そうか」


トトが壁の札を見た。


二十一、できることが増えても、調子に乗らない。


その下には、まだ余白がある。


トト「二十二番目、いる?」


レオン「今書くのか」


トト「だって、今日帰る日だったけど、帰らなかった」


ユアン「安全じゃない時は、帰る日でも待つ」


エル「それ、大事だと思う」


ガル「無理に帰ったら危ないしな」


ミリ「まつ」


リリィ「猫も待つ」


猫「……」


マーサは頷いた。


「いいんじゃないかい」


トトは紙を持ってきた。


少し眠そうな字で、でも丁寧に書いた。


二十二、帰る日でも、危ない時は待つ。


レオンはその文字をしばらく見ていた。


今日は帰る日だった。


ひだまり孤児院の工事が終わった。


本当なら、みんなで荷物を持って帰るはずだった。


けれど、魔物の群れが来た。


森の奥には、魔族の魔力。


帰る場所は完成した。


だが、帰る道はまだ安全ではない。


だから待つ。


それもまた、帰るための判断だった。


レオン「採用だ」


トトは眠そうに笑った。


「やった……」


そのまま椅子で眠りかける。


マーサが毛布をかけた。


外では、アルトが低く鳴いた。


ぐるる。


王都の夜は、まだ少しざわついている。


ギルドも、騎士団も、眠らない者がいる。


森の奥には、見えない何かがいる。


魔族の魔力。


新しい影。


けれど、仮ひだまりには灯りがあった。


スープの匂いがあった。


待つと決めた子どもたちがいた。


壁には、新しい約束が増えた。


二十二、帰る日でも、危ない時は待つ。


帰る場所は、もう完成している。


あとは、帰る道を取り戻すだけだった。


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