表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/71

第三十四話 門の外の声


翌朝。


ひだまり孤児院の食堂では、トト・ミルクが壁の札を見上げていた。


昨日までは七か条だった。


だが、今は違う。


『ひだまり防護八か条』


一、かってに外へ出ない。

二、知らない石をさわらない。

三、こわかったら大人に言う。

四、アルト先輩にかってに乗らない。

五、アルト先輩に変なものを食べさせない。

六、手を洗う。

七、すーぷを飲む。

八、地面がへんだったら大人に言う。


トトは腕を組み、真剣な顔でうなずいた。


トト「完璧だ」


ガル「自分で作ったからって偉そうだな」


ユアン「でも昨日は守った」


エル「今日も守れたら二日目」


ミリ「二日目」


リリィ「猫も二日目」


猫「……」


猫は食堂の椅子の下で丸くなっている。


特に何かを守っている様子はない。


トト「今日は三日目を目指す!」


ガル「二日目じゃないのか?」


トト「気持ちは三日目!」


セシリア「記録上は二日目です」


トト「記録は厳しい!」


レオン・ガルディアは、いつもの席でスープを飲んでいた。


その横で、リュシア・アルヴェインが菫色の水晶を覗いている。


フィリア・ローレンスは子どもたちの顔色を確認し、マーサは鍋の前で湯気を見ていた。


外の庭には、白銀のグリフォン、アルトがいる。


空はまだ閉じられたままだ。


地面の下にも、黒い魔力の探り糸が伸びていた。


昨日、それを見つけた。


そして今日は。


リュシア「……嫌な静けさね」


トト「静けさ?」


リュシア「ええ。空の膜も、地面の根も、昨日より動きが少ない」


ガル「動いてないなら、いいんじゃないのか?」


リュシア「普通ならね。でも、敵が急に静かになった時は、別の手を準備していることがある」


ユアン「別の手……」


エル「空、地面の次?」


リュシアは少しだけ目を細めた。


「心」


食堂が静かになった。


トト「心?」


レオンがスープの器を置いた。


レオン「怖がらせる。焦らせる。怒らせる。外へ誘い出す。そういう手だ」


トト「……ずるい」


レオン「ああ」


セシリア「敵は、こちらが八か条を作り、勝手に動かないようになったことを嫌がるはずです」


フィリア「だから、守れなくなるようなことをしてくるかもしれません」


マーサ「怖い声や、急ぎたくなる声には気をつけな」


ミリ「こわい声?」


リリィ「猫の声?」


猫「……」


トトは眉をひそめた。


「でも、本当に困ってる人だったら?」


レオン「だから、一人で行くな」


トト「……」


レオン「助けない、ではない。大人を呼んで、確認してから助ける」


トト「確認してから」


レオン「ああ」


リュシア「もし本当に助けが必要な人なら、大人が行けばいい。子どもが一人で行く必要はないわ」


フィリア「それが守るということです」


トトは壁の八か条を見た。


三、こわかったら大人に言う。


一、かってに外へ出ない。


それは、逃げるための決まりではない。


ちゃんと助けるための決まりでもある。


トト「分かった」


レオン「本当にか?」


トト「本当に」


セシリア「記録します」


トト「信じて!」


セシリア「信じるために記録します」


トト「そういう信じ方!?」


朝食後。


いつものように、孤児院の仕事が始まった。


マーサは台所。


フィリアは体調確認。


リュシアは魔力結界の調整。


セシリアは王城へ送る報告書の整理。


レオンは門と外壁の確認。


子どもたちは庭と食堂まわりの掃除。


そしてアルトは、庭で周囲を見張っていた。


トトは門の内側に立っていた。


ただし、今日は門に近づきすぎないよう、地面に線が引かれている。


その線より外へ行ってはいけない。


トト「ここまで」


ガル「ちゃんと守ってるな」


ユアン「線があると分かりやすい」


エル「トト向け」


トト「俺向けって言うな!」


リリィ「猫にも線」


ミリ「猫、守る?」


猫は線など気にせず、食堂の日なたで寝ていた。


ガル「猫は自由だな」


トト「猫は怒られないのずるい」


セシリア「猫は王城へ教本を送りません」


トト「それは俺の話!」


午前中は平和だった。


空は少し重い。


地面は少し冷たい。


だが、異変はない。


トトは何度も門の線を見て、足を止めた。


ガルが小声で言う。


ガル「行きたくなってる?」


トト「なってない!」


ユアン「なってる顔」


エル「でも止まってる」


トト「止まってるならいいでしょ!」


ガル「まあな」


トトは少しだけ胸を張った。


その時。


門の外から、声が聞こえた。


「……たすけて」


小さな声だった。


子どもの声。


弱く、震えている。


トトの体が固まった。


ガルも顔を上げる。


ユアンとエルが、同時に門を見る。


ミリが小さくリリィの袖を握る。


リリィの猫が、ぴくりと耳を立てた。


もう一度。


「……たすけて」


トトの足が、一歩前へ出かけた。


線の手前。


ぎりぎりで止まる。


ガル「トト」


トト「……分かってる」


声は、また聞こえた。


「だれか……いないの……?」


トトの顔が苦しそうになる。


「本当に困ってるかもしれない」


ユアン「でも、決まり」


エル「大人に言う」


トトは拳を握った。


助けたい。


今すぐ門を開けたい。


誰かが泣いているなら、放っておきたくない。


でも。


昨日、レオンが言った。


助けない、ではない。


大人を呼んで、確認してから助ける。


トトは大きく息を吸った。


そして、叫ばずに言った。


「レオン兄ちゃん! マーサ先生! 門の外から声がする!」


すぐにレオンが来た。


リュシアも、フィリアも、セシリアも来る。


マーサは小さい子たちを食堂の奥へ下げた。


アルトはすでに立ち上がっていた。


翼を少し広げ、門の外を睨んでいる。


レオン「声は?」


トト「子どもの声。助けてって」


リュシアはすぐに水晶を出した。


菫色の光が門の前へ伸びる。


また声がした。


「……たすけて」


フィリアが表情を変える。


「本当に子どもなら、急がないと」


リュシア「待って」


水晶の中の星が、かすかに黒く濁る。


リュシアの目が鋭くなった。


「声に魔力が混ざっている」


セシリア「偽物ですか?」


リュシア「声そのものは偽物。でも、完全な幻ではないわ。何かを使っている」


レオン「門を開けるな」


トト「……はい」


その声はまだ続いている。


「おなか、すいた……」


ミリが小さく震えた。


リリィが猫を抱きしめる。


ガルは歯を食いしばった。


「嫌なやり方だな」


レオン「ああ」


静かな声だった。


だが、怒りがあった。


レオンは門へ近づく。


ただし、開けない。


リュシアが星の光を門の隙間から外へ流した。


光が地面をなぞり、何かに触れる。


ぱちり。


黒い火花が散った。


「見つけた」


リュシアが指を動かす。


門の外、石畳の端に、小さな黒い欠片があった。


涙の形をした黒い石。


それが、かすかに震えている。


「たすけて……」


声は、その石から出ていた。


トトは息を呑む。


「石が、しゃべってる……?」


リュシア「声を覚えて、真似する魔道具ね。たぶん、どこかで拾った子どもの泣き声を混ぜている」


フィリアの顔が険しくなる。


「悪趣味です」


マーサ「本当にね」


レオン「壊すか」


リュシア「待って。触らずに封じるわ」


レオン「任せる」


リュシアは短く詠唱した。


星の光が細い輪になり、門の外の黒い石を包み込む。


声が歪む。


「たす……け……て……」


次の瞬間、石は音を失った。


静かになる。


トトは胸を押さえた。


「……本物じゃなかった」


レオン「ああ」


トト「でも、本物だったら?」


レオン「その時は、俺たちが助けに行く」


トト「俺じゃなくて?」


レオン「ああ」


トトは少しだけ悔しそうにした。


でも、うなずいた。


「俺、大人呼んだ」


レオン「正解だ」


その一言で、トトの目が少し潤んだ。


「正解……」


セシリア「記録します。トト、誘惑音声に対して門を開けず、大人へ報告」


ガル「すごいじゃん」


ユアン「守った」


エル「二日目」


ミリ「トト、守った」


リリィ「猫も聞いた」


猫「……」


トトは鼻をすすった。


「泣いてない」


ガル「誰も言ってない」


フィリアはトトの頭をそっと撫でた。


「怖かったですね」


トト「怖くない」


フィリア「では、苦しかったですね」


トトは少し黙った。


それから、小さくうなずいた。


「苦しかった」


マーサ「助けたいって思えるのは悪いことじゃないよ」


レオン「ああ。だが、助けたい時ほど、決まりを守れ」


トト「うん」


その後。


門の外の黒い石は、リュシアの魔法で封じられたまま、王城へ送られることになった。


もちろん、直接触れない。


魔力封印箱に入れて、グレンたち騎士団が回収する。


しばらくして、グレン・アシュフォードが到着した。


彼は黒い石の報告を聞くと、眉をひそめた。


グレン「声で誘い出すとは……卑劣だな」


レオン「子どもの声を使った」


グレンの顔がさらに険しくなる。


「陛下に報告する。アリシア殿下とルカ殿下にも注意が必要だ」


セシリア「王城内にも同様の魔道具が置かれる可能性があります」


リュシア「ええ。声を使うなら、王族や近しい者の声を真似る可能性もあるわ」


トト「レオン兄ちゃんの声も?」


リュシア「ありえるわ」


トトはレオンを見た。


レオンもトトを見る。


トト「でも、偽物なら分かるかも」


レオン「なぜだ」


トト「レオン兄ちゃんは、俺に勝手に門開けろって言わない」


レオンは少し黙った。


「そうだな」


トト「あと、昼ごはん抜けって言わない」


セシリア「それは確実ですね」


フィリア「絶対に言いません」


マーサ「言ったら本物じゃないね」


ミリ「すーぷ飲む」


リリィ「本物のレオン」


レオン「判別方法が食事なのか」


リュシアは笑った。


「でも、良い合言葉かもしれないわね」


グレン「合言葉?」


リュシア「偽物の声に騙されないための確認。たとえば、レオンが本当に呼ぶ時は、必ず決まった言葉を言う」


トト「合言葉!」


ガル「なんかかっこいいな」


ユアン「必要かも」


エル「声を真似されるなら」


セシリア「採用を検討できます」


レオン「合言葉か」


マーサ「子どもにも分かりやすいのがいいね」


ミリ「すーぷ」


リリィ「またすーぷ」


トト「じゃあ、『第0段階』!」


レオン「敵に知られている可能性が高い」


トト「あっ」


ガル「広めすぎたな」


セシリア「広まりすぎました」


トト「俺のせい?」


全員「少し」


トト「少し!」


リュシアは少し考えた。


「なら、もっと個人的なものがいいわ」


フィリア「ひだまり孤児院の中だけで分かる言葉」


マーサ「でも、小さい子でも覚えられるもの」


トトはうーんと唸った。


ミリも考える。


リリィは猫を見る。


猫は何も言わない。


その時、ユアンが小さく言った。


ユアン「……帰る?」


レオンがユアンを見る。


ユアンは少し恥ずかしそうに続けた。


「トトの札にもあったから。帰る、なら分かるかなって」


トト「『またかえる』!」


ミリ「かえる」


リリィ「帰還」


マーサ「いいじゃないか」


セシリア「以前の帰還札にも繋がります」


フィリア「覚えやすいです」


リュシア「意味も良いわ」


レオンは少し黙った。


トトが以前くれた札。


『またかえる』


あの時の言葉が、またここに戻ってきた。


レオンは静かにうなずいた。


「合言葉は、それにしよう」


トト「本当に!?」


レオン「ああ」


セシリア「確認形式にしますか?」


レオン「そうだな」


リュシア「たとえば、外から誰かが呼んだ時に、まず中から聞く」


フィリア「『どこへ帰る?』」


マーサ「答えは?」


トトが手を上げた。


「ひだまり!」


ミリ「ひだまり」


リリィ「猫もひだまり」


ガル「分かりやすいな」


ユアン「うん」


エル「覚えられる」


レオンは少しだけ目を細めた。


「合言葉は、『どこへ帰る?』。答えは、『ひだまりへ帰る』」


セシリア「記録します」


トト「かっこいい!」


リュシア「それに、温かいわね」


マーサ「うちにぴったりだ」


グレン「王城にも共有しておこう。殿下たちにも、ひだまり関係者を装う声があれば確認するように伝える」


トト「王子様にも?」


グレン「ああ。ルカ殿下は喜びそうだ」


セシリア「王城トトですから」


グレン「それは否定できない」


昼食前。


食堂の札に、また新しい項目が増えた。


『ひだまり防護九か条』


九、声が聞こえても、すぐ門を開けない。合言葉をたしかめる。


その下に、トトが大きく書いた。


『どこへ帰る?』

『ひだまりへ帰る!』


ミリが太陽の絵を描いた。


リリィが猫の絵を描いた。


ガルが門の絵を描いた。


ユアンが小さく『またかえる』と書いた。


エルがその横に、手をつないだ子どもたちの絵を描いた。


トトはそれを見て、満足そうにうなずいた。


トト「これで九か条!」


セシリア「増加速度が早いですね」


レオン「増やしすぎると覚えきれないぞ」


トト「大丈夫! 大事なことだから覚える!」


マーサ「覚えるだけじゃなくて、守るんだよ」


トト「はい!」


フィリア「今日も昼食を抜かずに」


トト「はい!」


ミリ「すーぷ」


リリィ「第0段階」


レオン「そこは変わらないな」


昼食は、いつもより少し静かだった。


門の外から聞こえた声。


助けて、と言った声。


それが偽物だったと分かっても、子どもたちの心には少し残っていた。


マーサはその空気を見て、スープを少し多めによそった。


マーサ「今日は温かいのをしっかり飲みな」


ミリ「すーぷ」


トト「第0段階、心にも効く?」


マーサ「効くよ」


フィリア「温かいものは、体にも心にも良いです」


リュシア「それは魔法じゃなくても本当ね」


トトはスープを飲んだ。


温かい。


さっきの声でざわざわした胸が、少し落ち着く。


「……効く」


ガル「本当に効いてる顔だな」


ユアン「安心する」


エル「うん」


リリィ「猫も安心」


猫はリリィの膝の上で眠っている。


安心しているようだった。


午後。


王城から返事が来た。


国王エルドラン直筆の短い文も添えられていた。


『卑劣な手で子どもを惑わすとは許しがたい。ひだまりの合言葉、王城でも共有する。なお、アリシアとルカには私から直接伝える。二人が心配である。とても心配である。大変心配である』


セシリアが読み上げると、食堂が少し静かになった。


レオン「心配が三回ある」


リュシア「親バカね」


グレンからの追記もあった。


『陛下は現在、王女殿下と王子殿下に合言葉を説明されています。ルカ殿下は「ひだまりへ帰る!」を大変気に入られました。おそらく大声で言います』


トト「王子様、絶対言う!」


ガル「似てるもんな」


ユアン「王城トト」


エル「ひだまりへ帰るって、王子様も言うの?」


マーサ「いい言葉なら、誰が言ってもいいんだよ」


トトは少し嬉しそうにした。


「じゃあ、王城にもひだまり合言葉ができた」


セシリア「広まりましたね」


レオン「また広がったか」


リュシア「でも、今回は良い広がり方よ」


レオン「そうだな」


夕方。


門の外の黒い声石は、王城へ運ばれた。


リュシアの封印箱に入れられ、グレンが直接持っていった。


その時、グレンはトトに言った。


グレン「今日はよく耐えたな」


トト「俺、門開けなかった」


グレン「ああ。それは、簡単なようで難しいことだ」


トト「助けてって聞こえたら、開けたくなる」


グレン「だからこそ、よく守った」


トトは照れたように笑った。


「ありがとう」


グレン「ルカ殿下にも伝えておく。よい先輩だったと」


トトの顔がぱっと輝く。


「先輩!」


レオン「調子に乗るな」


トト「はい!」


返事は早かった。


だが、顔はやはり調子に乗っていた。


夕飯の時間。


食堂では、今日の出来事をもう一度確認した。


声が聞こえた時は、すぐに門を開けない。


合言葉を確認する。


分からなければ大人を呼ぶ。


本当に困っている人かもしれない時も、必ず大人と一緒に助ける。


トトは何度もうなずいた。


トト「助けたい時ほど、決まりを守る」


レオン「ああ」


トト「今日、それ覚えた」


セシリア「重要な学びです」


フィリア「とても大事です」


リュシア「今日のトトくんは、本当に強かったわ」


トト「少し?」


リュシア「今日は、かなり」


トトは一瞬固まった。


そして、にやけた。


ガル「調子に乗るぞ」


ユアン「もう乗ってる」


エル「顔」


トト「今日は乗ってもよくない!?」


レオン「少しだけならな」


トト「やった!」


マーサ「じゃあ、少しだけおかわりもするかい?」


トト「する!」


ミリ「すーぷ」


リリィ「心に効く」


猫「……」


外では、アルトが低く鳴いた。


ぐるる。


トトは窓の外へ向かって言った。


「アルト先輩、今日も守ったよ!」


アルトはもう一度、低く鳴いた。


それはまるで。


“よく守った”


そう言っているようだった。


その夜。


子どもたちが眠った後、レオンは門の前に立っていた。


リュシアが隣に来る。


リュシア「今日は、剣を抜かなかったわね」


レオン「ああ」


リュシア「でも、守った」


レオン「子どもたちがな」


リュシア「あなたもよ」


レオンは黙った。


リュシアは門を見る。


「声で誘うなんて、次はもっと嫌な手を使うかもしれない」


レオン「分かっている」


リュシア「怒っている?」


レオン「ああ」


リュシア「静かね」


レオン「怒鳴っても、子どもが怖がるだけだ」


リュシアは少しだけ目を細めた。


「本当に、変わったわね」


レオン「そうか」


リュシア「ええ。昔なら、一人で廃塔へ向かっていたかもしれない」


レオンは答えなかった。


図星だった。


リュシアは小さく笑う。


「でも今は、帰る場所がある」


レオン「夕飯を食べる場所だ」


リュシア「はいはい」


その頃。


遠く西の廃塔。


黒い結晶の前で、ラザルは静かに立っていた。


床には、砕けた黒い声石の残響が赤黒く揺れている。


ラザル「門は開かなかったか」


背後の影が低く唸る。


額に小さな黒い角を持つ、第二号の欠片。


ラザルは欠けた仮面の奥で、愉快そうに目を細めた。


「子どもが耐えた。面白い」


黒い結晶が震える。


ラザル「だが、心は揺れた。助けたいという心は、弱点にもなる」


影が床を掻く。


ぎり、と石が削れる。


ラザル「次は、声だけではない」


赤黒い光が、廃塔の奥へ広がる。


そこには、小さな黒い檻があった。


中で、何かがかすかに動く。


ラザル「本物を混ぜれば、彼らはどうする?」


白い仮面の男は、静かに笑った。


黒玻璃の影は、さらに卑劣な手へ進もうとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ