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第十九話 灰剣、石切り場を駆ける


旧石切り場へ向かう朝。


ひだまり孤児院の門の前には、いつもより多くの人が集まっていた。


レオン・ガルディア。

セシリア・ノート。

バルド・ロックス。

グレン・アシュフォード。


今回、第三号討伐に向かう四人だ。


門の横では、三つの防護魔道具の一つが淡く青く光っている。

昨日設置されたばかりのその光は、子どもたちにとって小さな安心の印だった。


トト「レオン兄ちゃん」


レオン「なんだ」


トト「無茶しないでね」


レオン「ああ」


ガル「一人で突っ込まない」


レオン「ああ」


ユアン「逃げた敵を追いかけない」


レオン「ああ」


エル「夕飯までに帰る」


レオン「努力する」


ミリ「すーぷまで」


リリィ「猫も待つ」


レオン「……ああ」


ミナ「みんな、言うことが増えましたね」


セシリア「マスターの過去の行動の結果です」


レオン「否定できない」


フィリア・ローレンスは、レオンの包帯を確認していた。


フィリア「昨日よりは良くなっています。でも、完全ではありません」


レオン「分かっている」


フィリア「本当に?」


レオン「本当に」


フィリア「今日は数えません」


レオン「助かる」


フィリア「その代わり、帰ってきたら全部確認します」


レオン「……分かった」


バルドが大斧を肩に担ぎながら笑う。


バルド「心配されすぎだろ、ぴこん隊長」


レオン「バルド」


バルド「悪かった」


トト「でも、今日はぴこん討伐隊じゃないの?」


セシリア「正式名称ではありません」


グレン「騎士団の記録に残せないな」


ミリ「ぴこん」


リリィ「つよそう」


セシリア「強そうではありません」


マーサ・ベルが玄関の前に立った。


その手には、小さな布包みがある。


マーサ「ほら、これを持っていきな」


レオン「これは?」


マーサ「干し肉入りのパンだよ。戦いの前に腹が減ったら食べな」


バルド「俺の分は?」


マーサ「あるよ」


バルド「さすがマーサ先生!」


セシリア「私は?」


マーサ「もちろん」


グレン「ありがたくいただきます」


レオンは布包みを受け取った。


温かくはない。


だが、ずっしりしている。


マーサ「レオン」


レオン「なんだ」


マーサ「勝つことより、帰ってくることを優先しな」


レオン「ああ」


マーサ「子どもたちに、約束を破る大人の背中を見せるんじゃないよ」


レオン「分かった」


マーサ「なら、行ってきな」


レオンは静かにうなずいた。


門を出る前に、トトが駆け寄ってきた。


トト「これ!」


トトが差し出したのは、小さな紙だった。


昨日作った応援札とは別のものだ。


そこには、大きく一文字だけ書かれていた。


『帰』


少し曲がっている。

だが、ちゃんと読める。


トト「帰ってくるの『帰』! セシリア姉ちゃんに教えてもらった!」


レオンは紙を受け取った。


レオン「難しい字を書いたな」


トト「練習した!」


レオン「ああ。よく書けている」


トトは嬉しそうに笑った。


レオンはその紙を、懐にしまう。


レオン「行ってくる」


子どもたちの声が重なった。


「いってらっしゃい!」


旧石切り場は、昨日よりも空気が重かった。


山肌を削った巨大な段差。

崩れかけた石道。

古い滑車。

朽ちた足場。


その奥から、黒い霧のような魔力がゆっくりと流れている。


セシリアが魔道具を確認する。


セシリア「黒晶反応、昨日より強くなっています」


グレン「騎士団は外周を封鎖している。魔物が外へ出た場合はこちらで止める」


バルド「俺たちは中へ入って第三号を叩く、だな」


レオン「ああ。ただし、予定外の深追いはしない」


セシリア「言質を取りました」


レオン「記録するな」


セシリア「しています」


バルド「もう諦めろ」


レオンは石切り場の下層を見た。


昨日見た大きな影。


黒角試験体・第三号。


今日は、あれを止める。


だが、下層へ向かう前に問題があった。


上層から中層にかけて、小型の黒晶獣が増えていたのだ。


黒晶犬。

黒晶鼠。

そして、小さな黒い角を持った黒角獣の幼体。


数は二十を超える。


グレン「増えているな」


セシリア「第三号を守るために配置された可能性があります」


バルド「面倒だな。全部相手にしてたら体力を削られるぞ」


レオンは静かに剣の柄に手を置いた。


セシリアがすぐに見た。


セシリア「マスター」


レオン「無茶はしない」


セシリア「では?」


レオン「下層へ降りる道を開ける」


バルド「一人でか?」


レオン「ああ」


セシリア「それを世間では無茶と言います」


レオン「違う」


グレン「どう違う」


レオン「これは掃除だ」


バルド「言い方で軽くするな」


レオンは一歩前に出た。


「俺が道を開ける。お前たちは後ろで足場を確認しながら進め」


セシリア「第7までです」


レオン「ああ」


セシリア「第8以上は使わない」


レオン「使わない」


セシリア「深追いしない」


レオン「しない」


バルド「完全に子ども扱いだな」


レオン「慣れてきた」


セシリア「慣れないでください」


黒晶犬の一体が、こちらに気づいて唸った。


次の瞬間、周囲の魔物たちが一斉に動き出す。


黒い影が石の段差を駆け下りてくる。


レオンは剣を抜いた。


灰色の刃が、朝の光を鈍く反射する。


彼は呼吸を整える。


第1段階、纏気覚醒てんきかくせい


全身にオーラを巡らせ、筋力と反応を引き上げる。


続いて、気配を読む。


第2段階、戦気感応せんきかんのう


二十を超える敵意。

爪の軌道。

牙の狙い。

飛びかかる足音。

崩れそうな足場のきしみ。


全部が、線のように頭の中へ入ってくる。


レオン「来い」


黒晶犬が三体、同時に飛びかかった。


レオンは走らない。


ただ、一歩だけ踏み込む。


剣に灰色のオーラが宿る。


第3段階、刃気纏装じんきてんそう


一閃。


一体目の背中の結晶が砕ける。


レオンはその勢いのまま剣を返し、二体目の額の小さな黒角を切り落とす。


三体目は横から牙を向ける。


レオンは体を半歩ずらし、牙を空振りさせた。


そして、柄で顎を打ち上げる。


宙に浮いた黒晶犬の背中へ、剣の腹を叩き込む。


結晶だけが砕けた。


三体が、ほぼ同時に倒れる。


トン、と軽い音を立ててレオンが石段に着地した。


バルド「相変わらず、雑魚相手だと化け物だな」


セシリア「結晶だけを正確に砕いています」


グレン「あれで傷が治りきっていないのか」


バルド「治ってたら、もっと嫌な動きするぞ」


黒晶鼠が足元から群がる。


レオンは剣を低く構えた。


刃にまとったオーラを外へ流す。


第4段階、裂空闘気れっくうとうき


灰色の斬撃が地面すれすれを走る。


黒晶鼠の背中に生えた結晶だけが、次々に弾け飛んだ。


体は斬らない。

不要な殺しはしない。


斬るべきものだけを斬る。


だが、それはまだ彼の本当の能力ではない。


あくまで、鍛え上げた技術とオーラの制御だ。


セシリア「道が開きます」


グレン「進むぞ」


バルド「おう」


後ろの三人が進む間にも、魔物は左右から飛びかかってくる。


レオンは前を向いたまま、背後の殺気に反応した。


振り返らず、剣を背中側へ回す。


黒晶犬の爪が刃に触れ、軌道を逸らされる。


そのままレオンは腰をひねり、背中の結晶を砕いた。


バルド「背中に目でもついてんのか?」


レオン「殺気がうるさい」


グレン「便利な感覚だな」


セシリア「便利というより、熟練です」


さらに五体。


崖上から黒晶犬が降ってくる。


レオンはその場で左手を上げた。


第5段階、護天気壁ごてんきへき


灰色のオーラが薄い壁となり、降ってくる魔物の勢いを受け止める。


黒晶犬たちは壁に弾かれ、空中で体勢を崩した。


レオン「落ちろ」


裂空闘気。


斬撃波が宙を走り、五体の結晶をまとめて砕く。


黒晶犬たちは石段に転がった。


セシリア「無茶ではありませんが、かなり派手です」


バルド「本人は掃除って言い張るぞ」


レオン「掃除だ」


グレン「掃除の規模ではない」


黒角獣の幼体が二体、正面に立ちはだかった。


額の小さな黒角が光る。


黒い衝撃波の前兆だ。


セシリア「角に魔力集中!」


レオン「分かっている」


二体が同時に黒い衝撃波を放つ。


レオンは正面から受けない。


右へ半歩。

左へ一歩。


一つ目の衝撃波を避け、二つ目を剣の腹で斜めに弾く。


黒い力が石壁にぶつかり、岩を砕いた。


砕けた石が降る。


レオンはその石を足場にした。


一瞬、空中で体が浮く。


次の瞬間、黒角獣の間に着地する。


一体目の角を斬る。

二体目の角を柄で打つ。

そのまま体を回し、二体の背中の結晶を続けて砕く。


二体が膝を折る。


レオンは剣を払った。


灰色のオーラが、薄く散る。


道が開いた。


二十体以上いた魔物たちは、ほとんどが動けなくなっていた。


命を奪われたものは少ない。


だが、黒い結晶や角はすべて砕かれている。


バルドは口笛を吹いた。


バルド「無茶しない程度の無双ってやつだな」


セシリア「表現はともかく、作戦範囲内です」


グレン「こちらの消耗はほぼない。見事だ」


レオン「下層へ行くぞ」


セシリア「肩は?」


レオン「平気だ」


セシリア「後で確認します」


レオン「分かった」


バルド「今日は素直だな」


レオン「怒られる人数が増えたからな」


四人は中層を抜け、下層へ降りる道へ進んだ。


旧石切り場の下層は、まるで巨大なすり鉢の底だった。


周囲を高い石壁に囲まれ、逃げ道は少ない。

中央には大きな採掘跡があり、そこに黒い霧が溜まっている。


足元には、割れた石材。

折れた木材。

古い鎖。

黒い結晶の破片。


セシリアの魔道具が強く反応した。


セシリア「第三号、近いです」


グレン「騎士団の外周封鎖は完了している。ここで仕留めれば、王都への被害は防げる」


バルド「問題は、仕留められるかだな」


地面が揺れた。


一歩。


また一歩。


黒い霧の奥から、それは現れた。


巨大な四足獣。


狼と熊を混ぜたような体。

岩のように厚い背中。

全身に黒い結晶が鎧のように生えている。

額には、巨大な黒い角。


その角は、ただの結晶ではない。


削られ、整えられ、無理やり魔物の頭に埋め込まれたものだった。


赤い目が四人を見下ろす。


セシリア「黒角試験体・第三号……!」


黒角第三号が低く唸る。


その瞬間、周囲の空気が重くなった。


第6段階、覇圧領域に似た圧。


いや、ただの威圧ではない。


黒い結晶によって作られた、歪んだ圧力。


グレンの盾がわずかに揺れる。


バルドが歯を食いしばる。


セシリアが封印札を握り直した。


レオンは一歩前に出た。


灰色のオーラが静かに広がる。


第6段階、覇圧領域はあつりょういき


黒角第三号の圧を、レオンの覇圧が押し返す。


空気が少し軽くなった。


バルド「助かるぜ」


グレン「これなら動ける」


セシリア「作戦通りに行きます」


レオン「ああ」


黒角第三号が咆哮した。


石切り場全体が震える。


崩れた石が転がり落ちる。


バルド「来るぞ!」


第三号が突進した。


巨体が地面を砕きながら迫る。


速い。


大きさの割に、あまりにも速い。


グレンが前へ出る。


盾を構え、突進の軌道をわずかに逸らす構え。


バルドも横へ回る。


大斧を低く構え、前脚を狙う。


セシリアは封印札を三枚、指の間に挟んだ。


レオンは剣を構える。


まだ本気を出す場面ではない。


まずは角の性質を見る。


第三号の黒い角が光った。


突進の直前、黒い衝撃波が前方へ放たれる。


グレン「っ!」


レオン「下がれ!」


レオンが前へ出る。


護天気壁。


灰色のオーラの壁が衝撃波を受ける。


重い。


中型の黒角獣とは比べものにならない。


オーラの壁がきしむ。


レオンの足が地面を削る。


バルド「レオン!」


レオン「止めるな、逸らせ!」


グレンが盾で突進の横を叩く。


完全には止まらない。


だが、わずかに軌道がずれた。


バルドがその瞬間に踏み込む。


大斧に刃気纏装。


赤銅色のオーラが刃を包む。


バルド「おおおっ!」


大斧が第三号の前脚に叩き込まれる。


硬い。


火花のような黒い魔力が散る。


バルド「浅い!」


第三号の脚が振るわれる。


バルドの体が吹き飛ばされそうになる。


グレンが盾で受ける。


二人まとめて後ろへ押される。


セシリア「封印札、入れます!」


セシリアが札を投げる。


一枚目は角へ。

二枚目は胸の結晶へ。

三枚目は前脚へ。


青白い線が走り、第三号の動きが一瞬鈍る。


レオン「今だ」


レオンが踏み込む。


狙いは角ではない。


まずは背中の小さな結晶。


第三号の強化を支えている外側の結晶を削る。


剣に刃気纏装。

続けて裂空闘気。


灰色の斬撃が走り、背中の結晶の一つを砕いた。


第三号が怒りの声を上げる。


その背中の結晶が、一斉に赤く光った。


セシリア「反応上昇!」


グレン「何か来る!」


第三号の体から、黒い針のような結晶片が飛び出した。


全方向。


逃げ場がない。


レオン「全員、寄れ!」


バルドとグレンが即座にセシリアを守る位置へ動く。


レオンは左手を広げる。


護天気壁。


今度は自分だけではない。


仲間三人を覆うように、灰色のオーラの壁を広げた。


黒い結晶片が壁にぶつかる。


ばちばちと音が鳴る。


壁が揺れる。


レオンの右肩に痛みが走る。


だが、彼は表情を変えなかった。


セシリア「マスター、範囲が広いです!」


レオン「分かっている」


バルド「長く受けるな!」


レオン「ああ」


結晶片が止む。


レオンはすぐに壁を消した。


呼吸が少し乱れる。


フィリアに見られたら、間違いなく怒られる。


だが、今ここにフィリアはいない。


代わりに、セシリアがいる。


セシリア「帰ったら報告します」


レオン「今言うことか」


セシリア「今言います」


バルド「さすが副マスター」


グレン「集中しろ!」


第三号が再び動く。


今度は、まっすぐレオンを狙った。


赤い目がレオンだけを捉えている。


セシリア「マスターを標的にしています!」


バルド「そりゃ、一番邪魔だからな!」


レオン「なら、引きつける」


セシリア「深追い禁止です」


レオン「引きつけるだけだ」


レオンは走った。


第三号の巨体が追う。


石切り場の下層を、レオンが駆ける。


黒い角が何度も迫る。


レオンは紙一重でかわす。


速さだけではない。


戦気感応で殺気を読み、足場を選び、崩れそうな石を避ける。


時には、わざと脆い足場へ誘導する。


第三号が踏み込む。


石が崩れる。


巨体がわずかに沈む。


バルド「今だ!」


バルドが横から踏み込む。


今度は第6段階の覇圧領域を一瞬だけ広げ、第三号の動きを鈍らせた。


バルドの覇圧は、レオンほど静かではない。


荒々しく、相手の正面から殴りつけるような圧だ。


バルド「止まれや!」


大斧が第三号の前脚へ叩き込まれる。


グレンも逆側から盾で押す。


セシリアの封印札が角に貼りつく。


角の光が弱まった。


レオン「いける」


レオンが剣を構えた。


狙いは、角の根元。


だが、その瞬間。


第三号の背中の結晶が黒く脈打った。


セシリア「待ってください! 背中の結晶が角へ魔力を送っています!」


レオンは踏み込みを止めた。


無理に行けば、反撃を受ける。


今までなら、ここで押し切ったかもしれない。


だが、今日は止まった。


約束したからだ。


バルド「止まったな」


グレン「いい判断だ」


セシリア「非常にいい判断です」


レオン「褒めるのは後でいい」


第三号が暴れ、三人を押し返す。


角はまだ折れていない。


背中の結晶も多い。


だが、何も得られなかったわけではない。


レオンは見た。


魔力の流れ。


背中の結晶から角へ。

角から全身へ。

そして、胸元にある一際大きな黒い核。


レオン「胸だ」


セシリア「胸?」


レオン「中心核は胸にある。角は砲口、背中の結晶は補助だ」


セシリアは目を見開いた。


すぐに魔道具を確認する。


セシリア「……反応一致。中心核は胸部です!」


バルド「じゃあ角を砕くだけじゃ駄目か」


グレン「胸の核を露出させる必要がある」


レオン「ああ」


第三号が再び咆哮する。


下層の奥から、さらに小型の黒晶犬が数体現れた。


増援だ。


セシリア「小型反応、六体!」


バルド「ここでかよ!」


レオンは一度、第三号から距離を取った。


そして、短く言う。


レオン「俺が小型を片づける」


セシリア「一人で?」


レオン「無茶はしない。第三号に背を向けない範囲でだ」


バルド「行け。こっちは持たせる」


グレン「ああ。第三号は我々で抑える」


レオン「頼む」


レオンは横へ駆けた。


小型の黒晶犬が、セシリアの背後へ回ろうとしている。


レオンはそれを許さない。


一体目。

結晶を斬る。


二体目。

爪を避け、首ではなく背中を叩く。


三体目。

裂空闘気で角だけを飛ばす。


四体目と五体目が同時に跳ぶ。


レオンは低く沈み、二体の間を抜ける。


剣を左右に走らせる。


黒い結晶だけが同時に砕けた。


六体目は、岩の上から飛びかかる。


レオンは振り向かず、足元の小石を蹴り上げた。


小石が黒晶犬の目の前をかすめる。


わずかに動きが乱れる。


その一瞬で、レオンの剣が届いた。


結晶が砕ける。


六体が、短い時間で沈黙した。


セシリア「……本当に一人で片づけましたね」


レオン「小型だけだ」


バルド「小型だけ、の速度じゃねぇよ」


グレン「だが、助かった」


レオンはすぐに第三号へ向き直る。


息は乱れていない。


だが、肩の痛みは増していた。


それでも、無理はしていない。


まだ動ける範囲。


まだ戻れる範囲。


レオンは自分でそれを確認する。


戦いは続いている。


第三号は、まだ倒れていない。


だが、胸の中心核は分かった。


勝ち筋は見えた。


セシリア「次の一手です」


レオン「ああ」


バルド「前脚を完全に止める必要があるな」


グレン「盾だけでは難しい」


セシリア「封印札を集中させれば、数秒なら止められます」


レオン「数秒で十分だ」


バルド「俺が押さえる」


セシリア「鬼神解放は?」


バルドは少しだけ笑った。


バルド「使うなら一瞬だな。長くは持たねぇ」


レオン「無理はするな」


バルド「お前に言われる日が来るとはな」


レオン「俺も少しは学ぶ」


グレン「では、次で胸を開く」


セシリア「中心核が露出したら、撤退か破壊か判断します」


レオン「破壊できるなら破壊する」


セシリア「ただし、無茶はしない」


レオン「ああ」


第三号が、再び頭を低くした。


黒い角が光る。


胸の奥で、黒い核が脈打っている。


レオンは剣を構える。


第7段階まで。


それで十分だ。


まだ、奥の手を使う時ではない。


守るべき場所がある。


帰るべき場所がある。


懐には、トトの書いた『帰』の札がある。


レオンは短く息を吐いた。


レオン「次で、胸を開く」


バルド「任せろ」


グレン「合わせる」


セシリア「封印、用意」


黒角第三号が咆哮した。


石切り場の下層に、黒い魔力が渦巻く。


戦いは、ここから本番へ入ろうとしていた。


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