知美
知美は、どこにでもいそうで、しかし少しだけ目を引く顔立ちをしていた。肩にかかるくらいの黒髪はゆるく内側にまとまり、前髪は軽く流して額を見せている。大きすぎない目はよく動き、話しているときもどこか周囲を観察しているようだった。服装はシンプルで、今日は薄いベージュのカーディガンに白いシャツ、濃い色のスカートを合わせている。派手さはないが清潔感があり、きちんと整えられている印象を与える。足元のスニーカーだけが少しラフで、その気取らなさが、彼女の気安さを際立たせていた。
知美はマクドナルドの二階席で、片肘をテーブルにつきながらポテトをつまんでいた。細い指先で一本をつまみ、軽く振って塩を落とすような仕草をしてから、無造作に口へ運ぶ。噛むたびに、さくり、と小さな音がして、彼女は特に味わうでもなく、ただ会話の合間を埋めるように食べ続けている。紙の容器はすでに半分ほど空になっているのに、減っていることにすら気づいていない様子だった。ときおり窓の外に視線を投げ、またすぐに戻ってきて、次の一本を探る。その動きはどこか機械的で、けれど不思議と落ち着いていて、彼女の日常そのもののように見えた。
「何だかフワフワして現実感のない人なんだよね」
圭子は気だるそうに話を続けるのだった。
「やばいよね。放置していると。やっぱり、警察に連絡したほうがいいんじゃない」
「うん。それはそう思うんだけど、ひょっとしたら、何かすごいホラー小説を書こうとしているだけかもしれないし」
「ホラー小説なんて、今時、売れるわけないから。無視していいって。あんたの人生なんだから」
「そうね。そりゃそう。でも、あの人にも良いところがどこかにあるかもしれないからなあ」
「あなたの中に、吉介さんが好きな気持ちがちょっとあるんだね」
「ま、そうだよ。それはそうだけど。でも、あんまり付き纏われるのも嫌なんだけどね」
「ふうん」
というと、知美はフィレオフィッシュを受け付けで買ってきて、また戻ってきたのだった。
「ポテトだけだと足りないから、フィレオフィッシュを頼んだんだ」
「ふうん。そういえば、吉介さんも、フィレオフィッシュが好きだった。付き合っているときに、延々と食べていた」
「どうしたの?気分でも悪いの」
「いや、何か、こう、潮目が変わっていったのかなあって」
「うん?ちょっと意味わからないけど」
「かもね。大雑把なあなたには一生わからないかもしれない」
というと、圭子は、窓の向こうで、薄曇りになってしまっている、曇天の空を見上げるのだった。




