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タロの回転 2


 ペイさんという愉快な先輩がいる。愉快な、と言ってよいのかどうか、少し迷うところはある。というのも、ペイさんはあまり笑わないし、冗談めいたこともほとんど言わないからだ。それでも、なぜか場にいると空気が引き締まるような、それでいて妙に軽くなるような、不思議な感じがある。重くなるのではなく、むしろ無駄なものが削ぎ落とされるような軽さで、その結果として周りの人間の動きがはっきりしてくる。そういう意味での愉快さなのかもしれない。ペイさんは、何かを受け取るときの動作がやけに正確だった。話しかけられれば、ほんの一瞬だけ目線が定まり、必要な分だけの言葉を選んで返す。そのやり取りには無駄がなく、かといって冷たいわけでもない。むしろ、余計な部分が最初から存在していないかのようで、やり取りそのものが一つの動作として完結しているように見えるのだった。俺は何度かペイさんと話したことがあるが、そのたびに、会話をしているというよりも、何かが正確に処理されているのを見ているような感覚になる。問いかけがあり、それに対する応答があり、それで終わる。その一連の流れがあまりにも滑らかで、途中に引っかかりがないため、逆に記憶に強く残るのである。ペイさんは、余白をあまり持たない人だった。タロ先輩がどこかに「間」や「ズレ」を残していくのに対して、ペイさんはそれをすっと回収してしまうように見える。散らばったものを拾い上げ、形を整え、そこで終わらせる。だからその場には何も残っていないはずなのに、なぜか「終わった」という感触だけがはっきりと残る。その感触は時間が経っても消えず、むしろ何度も思い出されるたびに、より明確な輪郭を持っていく。俺はときどき考える。ペイさんという人は、何かを始める人ではなく、終わらせる人なのではないかと。動き出したものを受け取り、そこで区切りをつける。その働きは目立たないが、確実で、しかも避けることができない。そうして終わらせられたものだけが、妙に鮮明な形で残る。

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