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遅刻


「いっけね。遅刻しちゃう」


ピーナッツバター付きのトーストを咥えて、あたしは坂道を下ってゆく、朝早い空気がとても涼しく、ここでずっと佇んで街の景色を眺めていたいが、学校に着かないと遅刻してしまうので、走っていると角を曲がって……


「ところで、今朝のお母さんはどうしてあんなことを言ったのだろう」


ということが頭の中に渦巻いていた。それは、十何分前の話であったが、いつもは朝の軽い番組を見ていた母が、能のDVDを再生したのであった。母は、「よおおお。よおお」と言いながらご飯を渡してくる。父は、東洋経済を読んでいた。


「新聞よりは経済の雑誌だよ」


と言うのが父の持論である。でも、父の経済予測は当たったためしがない。髪の毛を紫色に染めている女性経済評論家のファンである。彼女の本において、「ハッピー」という要素が経済には必要だと説く。まるで、矢沢永吉じゃないか。


「うん?俺がどうして経済を予測しないかって?そりゃ、関係ないじゃん。食えるぶんだけ稼げば良いじゃない?って気持ちもあるよ。あるけど、これ、俺だけの意見かもしれないけど、それやっちゃうと、じゃあ、誰もロッカーやんないよね。夢壊れるよね。そこなんだよね」


 ということとか、まあ、色々あるけど、そんな会話をしていると、突然、母がこう言ったのだった。


「トランプ大統領の子供を産んで良い?」


その言葉は食卓を暗くした。遂に、母は越してはいけない一線を越してしまったのだった。


「トランプ大統領について一言?うーん。ブルース・スプリングスティーンなんかは怒っているけど、あれも時代の有り様なんじゃないかと思うんですよ。つまり、不条理がどこかにないとまとまらない世の中になっちゃったんでしょ。その世の中の、雰囲気というものがトップを決めるんでね。動かなくなっちゃったのよ。アメリカは。色々、気にしすぎて。そこをバーンと突破して行ったよね」


というと、父は、母の奇行を誤魔化したのであるが、私は誤魔化されない。絶対に病院にゆくべきである。今日も、ネズミの揚げ物が皿の上に乗っていた。そんなものをどうやって食うのか。


 とか、思いながら角を曲がると、紫色の道が現れたではないか。その奥に立っていたのは、村越栄一先生だった。


「遅刻だぞ」


 村越は、バーコード禿だ。涙が出てくる。


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