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安宿(やすやど)  作者: ウィリアム輝夫
ノート 1
37/81


 ここ半年くらい私の心を占めていたのは、Sさんだった。本当に美しくて、私は彼女の存在に助けられていたし、恐らく彼女も私のことは好きだったのだろう。しかし、どうもアプローチを間違えてしまったようで、彼女の心の引き出しを開けることはできなかった。彼女は本当に自然体で素晴らしかった。と、こうやって空疎な美辞麗句を書き連ねても伝わらないのであろうが、余りの感動と寂寥に、私はもはやこの一連の出来事を書くのが億劫になってしまっている。ただ一人の女性がいた。ということだけで良いではないか。他に何がいるのだろうか。彼女を心の中で送り出してあげる。他に何もすることはない。……初めは、彼女はたんなる仕事場の職員の一人だった。多くいる人物の中の一人であって、全く意識していなかったのであった。ただ、何かの説明を求められてそれが結構入り組んでいたので、私が少し思い出し思い出ししながら話したら、彼女が目を輝かせてそれを聞いていたのが、とても面白かったのである。そんな大したこともしていないのに、体を躍り上がらせるようにして、「ありがとうございますっ」と言って去っていったのであった。彼女の中で、何か感じるものがあったのだろう。そして、その次の日くらいに、「いやあ。本当に、ここに赴任して何ヶ月か経ったんですけど、慣れないんですよねえ」ということを話してきたのであった。あんまりその現場では、女性の職員が私に話しかけてくるなんてことはなかったので新鮮だった。そもそも、私は身長が183もあって熊男みたいになっているのだ。なかなか普通の女性は話しかけてこないし、私の方でもそんなに雑談は好きではないので、話したことはなかった。私は、「自分の受け持っているところしか知らないですよ。そっちのことは全くわかりません」と答えたのであった。それから、彼女の謎の積極的なアタックが始まったのであった。いや、何でこんな私に、とは思い、困惑したのであるが、たとえば、「私って血液型Oなんですよ。あなたは何型ですか」とか聞いてくるのであった。私はB型と答えたのであった。余談であるが、最近、B型は年収が百万円低いみたいな話を聞いたことがある。確かに、何かB型は、他の血液型と比べて軽く見られがちである。それが影響しているのではないか。明るくて社交的で、と言うが、私は全くそんなことはなかったのであるが……。と、までは語らなかったが、表面的なことを話していたら、「実は私、献血が大好きで、六十四回行っているんですよ」と、言い出したのであった。


 

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