逃走線 3
雑誌、現代思想のドゥルーズ特集をダラダラ読んでいたら、「逃走線なんて具体的に存在するわけがないだろ!!」という強烈な文章に巡り合った。私はこれを読んで額を打った。蜃気楼のようなものなのだ。妄想の産物なのである。法華経に、化城喩品という話があって、砂漠の中で死にそうになった時に、城の幻を見て、それを目掛けて歩く、そして、命拾いをする、という筋なのであるが、つまりこれ、方便というやつである。マッチ売りの少女が、凍える中でマッチを燃やして、明るい団欒を想像する。これもそうだし、感想欄に感想をくれたSさんの青春の頃の少女の思い出なんてのもこれも歴とした逃走線なのであった。私にも高校時代に、情熱的に好きになった女性がいたのであるが、彼女は、若き日の宮沢りえのように美しかった。宮沢りえは、ハーフなのだと言う。今で言うとミックスか。北野武も惚れたと、どこかで語っていた記憶がある。三井のリハウスに出てきた制服姿の彼女は本当に、絵に描いたような美しさで、「機動戦士ガンダムW」のリリィナを想起させる。まあ、私の職場にも美人はいくらでもいるのであるが、歳をとると、人間、そういう妄想の楽しみというのは沢山あるもので、それを妄想するだけで、いくらでも時間を過ごせたりもする。ここから、話は、ヘンリー・ジェイムズ、カフカ、そして、イランにとってのホルムズ海峡、という話に移ってもいいだろう。面白いのは、明らかにイランの「ホルムズ海峡、襲うぞ!コラ!!」という恫喝は、大いなる逃走線なのであった。それを言ったら、核兵器なんてのも逃走線ではないか。何故、トランプは北朝鮮を空爆しなかったか。核兵器がスタンバイOKになっていたからである。今回のイラン空爆の背景にはそれがある。トランプ大統領の行為は、単なる暴君の暴挙では全然ない。トランプが人気なのは、秩序に向かってのカオスなのである。逃走線というのは、秩序体系、権力体系を否定する。そういう意味では、プーチン大統領のウクライナ侵攻も、ロシアの側からしたら、秩序への挑戦なのである。だから、プーチンの支持は、いつまでも衰えないのである。なお、この二人の例は、厳密には逃走線ではないが、何故、人気があるのか?ということを書いている。それにしても、この世の中に、逃走線というのはいくらでもある。それは、秩序体系が世の中を覆い尽くすことなど、できやしないからである。これを個人に言い換えると、完璧に幸せな人生も、完璧に不幸な人生もない。何故なら、どこかにカオスをもとにした、亀裂があるからである。




