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安宿(やすやど)  作者: ウィリアム輝夫
ノート 1
33/70

逃走線


 まあ、わかってみたら大したことではないのであるが、幽霊と思ったら柳だったみたいな諺があったけど、この『逃走線』というのは、今の時代に、本当によく引用されている概念なのだ。ポストモダンの代表格、浅田彰が「逃走論」というのを書いている。そういうものの感想をネットで調べても良い。あるいは、もっとわかりやすいのは百田尚樹氏の「逃げる力」という本であろう。実物は読んでないが、感想欄などを読むと、殆ど、逃走線のことを語っている。おそらく彼の小説も逃走線のことを語っている。数年前のドラマに「逃げるは恥ではない」みたいなタイトルのドラマがあったが、あれなんかもそうだ。公共広告機構のCMかな。サッカー選手が出てきて「いじめられたら逃げろ!」と言っていたのを記憶している。あれなんかも逃走線である。ラジオの人生相談、あれは、答えを見つけるモノではなくて、相談者の逃走線を見つけるもの、と捉え直すと面白い。そう考えると、そこからズレている人のどれほど多いことか。回答が説教臭くなるのは、実は回答者が逃走線を使っているのである(笑)。なお、岡田斗司夫の人生相談はちゃんとその人の逃げ道を作っている。夫婦円満の秘訣は?お互いに逃走線を持っていることである。中国の古典で、孫子が言っている。「相手に逃げ道を作ってあげなさい。そうしないと、必死になって反抗してくる」相手に逃げさせることが戦略の一つになっているのである。マキャベリも言っている。「人々から嫌われるのはいい。恐れられるのはもっと良い。だが、憎まれてはいけない」ことほど、作用に、色んなことが逃走線の発見、ということを言っているのである。逃げる、といことは、そこから離れるという意味だけではない。つまり、圧迫された、抑圧された状態があったとして、いかに、自分の心が安定できる状態を見つけるか?と言うことなのだ。孟母三遷の教え。という言葉もある。モーゼの出エジプト記もそうであった。富野由悠季の「イデオン」というアニメもスペースラナウエィである。あれは、しかし、とんでもないことになるが。カフカのあの暗い小説群と、逃走線がどう関係してくるのかというと、抑圧された閉鎖社会というのは、どこの社会もそうなのであるが、そこにおいて、どう、人が歩いてゆくのか。何をするのか。を描いているのである。ただし、あそこには私もなければ人もいない。抽象機械のようなものがあるのみ、というところが、却ってリアリティになっているのであるが。

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