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最強の成長するユニークスキル異界の心臓で、異世界無双 ~エルフ美少女に愛され養われ、精霊美少女にも愛されてハーレム状態~  作者: 手ノ皮ぺろり
第一章『精霊の森』九幕『死門くぐり』

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師の裏切り

 そのまま何度もスペルキャンセルの練習を続けたが、成果は芳しくなかった。偶然の要因に左右されているのか、十回の試行で、成功は二回と、とても実戦投入できる様な成功率ではなかった。


「うぅん。ダメだ。風の流れにマナが乗って、偶然に核を壊してるだけなのか? 全然せいこうしないな」


 まあ、大体これで簡単に魔法が消去できたら、敵にも消されちゃうよな。核を見つけ出す方法には、もっと決定的なモノがあるのかもしれない。他人の目から見た時に、核が発見できるのかも今は不明だしな。ジジが起きてればあいつに確認してもらう事も出来たけど、とりあえず今は修行に戻るか。


「さて、また足首に鉄をまとわせて……。今度は、さっきよりも上まで固めてみよう」


 吸い上げた鉄を下腿の中ほどまで到達させる。これなら先ほどの様に、ぐらつく可能性も低いはずだ。その状態でゆっくりと身体を前後に傾かせ、倒れないかを確かめる。


「ふむ。ちょっと食い込んで痛いけど、さっきほどじゃないな。でも、足が地面とつながってるせいか、少し傾いたくらいじゃ倒れないぞ!」


 だが、このまま腰を落として行っても、足の位置が動かないだけで、尻餅をついてしまうのには変わりがない。


「安定させるには、もっと膝の上あたりまで覆う必要があるのかなぁ?」


 ええと、待てよ。アイシャが読んでくれたデルライラムの書き込みの内容を思い出す。確か、一番目の方法は、足首への負担が強すぎて、耐えられないと書かれていた様な。


「この状態で、膝まで覆っても、負荷が強すぎて足首のあたりで瓦解するって事かな」


 先ほどの痛みを思い出し、背筋が寒くなる。


「あれより痛いとしたら、悲惨だな……」


 ジジとアイシャが家で見せてくれた方法では、アイシャが膝裏あたりと、尻を持ち上げて支えていた。ブランコみたいな物か。これを成功させるには、どんなアプローチがあるだろうか。


「ブランコみたいに吊り下げて支える? 椅子みたいに下から支える。ふむ。他には……」


 でも、椅子の様にする場合は、足を作って支えるのでは、正解にはならないだろう。


「それだったら、今の俺にも出来そうだもんな」


 まあ、あれこれ考えるよりまずは、膝を覆うのやってみるか。直立の姿勢で、膝下から膝上まで、先ほど下腿の真ん中あたりまで伸ばした筒とつなげる様に、意識しながら鉄を吸い上げて行く。


「うん。一回できればここまでの行程は、それほど難しくはない」


 目を開き、動きを確かめてみる。


 あれ?


 膝は固まって全く動けなくなっていた。


「そ、そうか! 関節ぶぶんに、可動するための隙間を作ってないと動けない!」


 よく考えてみれば、当然の事だったが、ここで、唐突な悲劇が襲い来る。

 維持に必要なマナが切れたのか、下腿を覆っていた鉄が掻き消え、感じていた重圧から解放された身体が、前のめりに倒れる。


「うわ、うわわわ!」


 鉄に覆われたままの膝が地面に打ち付けられ、悲鳴をあげる。


「ぐあああっ!」


 いってえ、いってえ、やべぇ! 痛みに呻きながらそのまま、地面を転げまわる。悲鳴に驚いたデルライラムが家から飛び出して来て、しばらくして奇異の目を送って来る。


「お前、一体なにやってんだ?」


 無様に転げまわる俺を見て、どんな表情をすればいいか分からない様だ。


「ま、まあ。無事ならいい。悲鳴が聞こえたもんだから、おどれぇたぜ」


 デルライラムは、そのまま「じゃあな」と振り向き、帰って行った。……師匠、冷たい。弟子が激痛にのたうち回ってるのに、無視とかぁぁぁ!

 痛みがおさまって来た所で、荒い息を整え、ゆっくりと吐き出す。


「ふぅぅぅ。……膝、割れるかと思ったぜ。間違いなく修行史上、最悪の事態だった」


 いつの間にか鉄が消え去っていたので、痛む膝を撫でさすりながら、思案する。


「今回わかったのは、生成物には維持できる時間があって、与えられたマナが切れると消滅するって事と、鉄をそのまま服の上にまとっただけじゃ、あんまり防御こうかにも期待できないって事かな!」


 思えば、鎧とかって、クッションになる様な服を先に着るんだっけ? 金属と身体が直接ぶつかったら防御どころじゃないのはよく分かった。


「当然、拳にまとわせて殴ろうにも、攻撃力を上げたつもりが、自分が骨折という事態にもなりかねねぇ。運が良くて、打撲や擦過傷か」


 硬化魔法ってのも色々と難しいんだなぁ。多分、適当に成形しただけで、身体のラインにも合ってない鉄板な所も問題なんだろうけど……。


「仕方ない、ブランコ試そ。……場所は、あの辺の木の下で」


 大きな木の近くへ移動し、張り出した太い枝が影を落とす真下に陣取る。そこで、木の枝と地面を交互に眺めながら、成功への道筋を組み立てて行く。


「枝に紐状に伸ばした鉄を引っかけて、その力で身体を支えるのがいいのか?」


 座面に当たる部分は、一枚の板にしておかないと、また食い込んで酷い事になるだろう。鉄は含まれる炭素量が増えると、硬くなって鋼になるけど、その分ねばりがなくなって脆くなるんだっけ。だとすると、そのままでいいのか? あ、でも、さっきまで作ってた鉄にどれくらい炭素が含まれてるかなんて分からないな。


「配合の比率なんて、流石に色の違いだけじゃ分からないよなぁ。……まあ、適当にやるか」


 ジジは色、匂い、手触りで精霊素が励起された状態の差違が分かると言っていた。もしかすると味でも分かるのかもしれないが、舐める気にはならない。


「匂いって、これは鉄臭い、これは炭素臭いとか嗅げば分かるのか? 手触りはどうなんだろ。もしかすると、手じゃなくてマナで触れるのかも」


 今まで何度も繰り返したやり方で、生み出した鉄球の輝きを見ながら、薄くマナをまとった左手でつついてみる。すると、表面に波紋が立った様に、波打つ。方向を変えて、色々な角度からつついてみるが、場所によって、反応が違った。


「どういう事だろう? 均一に合成できてないから、場所によって炭素の割合が違う、とかかな?」


 もう一つ別の鉄球を作り、それも同じように、つついて確かめる。


「あれ、こっちの方が起きる波紋が小さい気がするな」


 こちらの球も角度を変えて、つついてまわるが、全体的に、先ほどの球よりも反応が控えめだった。


「うぅん。これが硬さの違いだったりして」


 問題は、手で触ってみても、実感できないため、どちらが炭素量が多くて硬度が増している物か判別できない所だった。


「もっと何か、ヒントはないかな……」


 鉄球を目の前まで動かし、近くで表面の様子を観察しながらつついてみると、薄い膜の様な物が見えた。どうやらそれが波だっているらしい。

 球の表面の薄い膜が、真横から見える位置に動かして、再びつつく。目を凝らして見つめていると、場所によって、膜が波立ち始めるまでの時間に、僅かな差違があるのが分かった。加えて、指先で触れた時にだけ反応がある訳ではなく、離す瞬間にも、僅かに揺れ動いている。

 指が触れた時の反応と、離れた時の反応の時間差を、体感で覚えながら、力を入れたり、ゆっくりと突いたり、素早く突いたり、軽く突いたり、触れ方を変えてみる。それを何度も繰り返している内に、指先にある感覚が生まれているのに気付いた。


「え! 何か、ごく僅かな硬さの違いが感じられる様になってる?」


 鉄球を覆うマナの膜に何度も触れている内に、肉体ではなく重なる霊体がわの感覚なのだろうが、硬さを知覚できる様になっていた。


「はぇぇ。こんな事が出来たなんて!」


 それから鉄球を幾つか作り出し、それぞれの硬さを確認していき、最も柔らかく感じた物の硬度を脳裏に焼き付けて行く。そして、他の球も同じ硬さになるまで炭素の分離を繰り返した。


「ホントに、少量しか混ざってないけど、これは色で判別できるな」


 鉄球の中に、極小の砂粒の様に混じる、僅かに色の暗い部分を指先でより分けて、省いて行く。それを何度も繰り返した結果、それぞれの球の感じられる硬度は、ほぼ同じになっていた。

 そこで、再び頭上の太い木の枝を見上げる。


「あそこまで伸ばせる細い糸を作るんだから、硬度は低い方がいいんだよな?」


 目を瞑り、イメージを描いて行き、細く形成された鉄の糸を頭上の枝へ、マナの放射に乗せて、斜めに飛ばし、枝に沿わせて曲げる。片方が引っかかった所で、少し離れた位置に移動する。


「更に長くして垂れ下がらせるのは無理かな。こっちからも伸ばしてつないでしまおう」


 反対側から伸ばした糸の先に、マナを送り込み、そこで両側を反応させて結びつける。手から離れた状態で、マナの循環による成形を行うためには、極度の集中を要した。


「ふぅ。よし、後は、これを結ぶ座面を作って……!」


 残りの作業は、細い糸を生むのと比べれば、幾らか簡単だった。腰を浮かせた時に、丁度良く座れる高さの目星をつけ、尻に食い込まない様に、配慮した広めの鉄の板を作り、その両端を糸とつなぎ合わせる。

 意を決して、そこへおもむろに座った。頭上の枝が僅かに揺れた気がしたが、体重を預けても形成した金属が折れる事はなかった。


「おお、乗れたぁ!」


 浮いてるのとはちょっと違うけど、確かに安定して支えられてるぞ。構造物が消滅しない内に、デルライラムを大声で呼ぶ。


「師匠ッ! 見てください!」


 その声を聞きつけたデルライラムが、「何だぁ? 大声だしやがって」とこぼしながら、現れた。そして、こちらの様子に気付いたのか、少しずつ近寄って来る。な、何かドキドキするな。


「ふぅむ?」


 近くまで寄って来たデルライラムは、顔をしかめ、そっと糸に触れた。金属の硬度やねばりを確かめている様子だった。


「……ああ、まあ、これだけ細い金属の糸を作れたってのは、大したもんだ。だがなぁ、カイトよ。このやり方じゃ、頭上に糸をかけられる場所がなかった場合は、どうするんだ?」


 投げられた言葉の返答に詰まる。


「……残念だが、これが到達点じゃねぇんだ。もう一度、じっくりやり方を考えな」


 そう言って、帰って行くデルライラムは、一度たち止まり「まあ、鉄を自由に成形する部分は、クリア出来たみてぇだな」と独りごちて家へ入って行った。残された俺は、悔しさに震えながら、その背中を見送った。


「くそっ! ダメだった。……でも、これがダメじゃ、椅子もダメだろうし、どうすれば……」


 師匠の反応からして、この細い糸がヒントになってるのは間違いない。でも、これは引っ掛ける場所がないと――。


「あ!」


「そうだ!」


 何で師匠は、あの解剖学書をくれた!? あの本に記された人体の構造が、修行のヒントになるからだろ! そして、あのページに残っていた書き込み――! 第三の方法は、硬化魔法の範疇を越えるかもしれない。この言葉の意味がある方向への閃きを生んだ。それは、俺じしんが最初に魔法を覚えようとした動機の一部でもあった。身体強化魔法、その名称のイメージをゆっくりと脳内でなぞる。


「筋肉だ! 金属の糸を追加された筋肉みたいに作用させるんだ!」


 足首を覆う金属の筒が、追加された骨だとしたら、この糸を筋肉の様に使って、普段はつながってない部位どうしをつなぐ事が出来たら!

 頭の中で、完成形をイメージして行く。


「いいぞ、多少、不格好かもしれないけど」


 まず、爪先から足首、そして、下腿の裏側から登って行き、膝裏までを支える構造を生み出す。これが、追加された骨に当たる。次いで、腰回りにベルトの様に、周囲を覆う構造を築いていく。

 そして、徐々に腰を落として行きながら、膝裏を支える鉄板から、腰のベルトへと幾つもの糸を繋いでいく。


 痛い、身体が軋んでて、今にも後ろに倒れそうだ! でも――!


 つなぐ糸の数をどんどん追加していき、倒れそうになる身体をかろうじて支える。


「今は、ただ繋いでるだけだけど、これに引っ張る力を加えられたら……!」


 今にも瓦解しそうな無理な姿勢で、腰も完全には落とせていなかったが、もう一度デルライラムを大声で呼ぶ。しばらくすると、家のドアが開き、うるさそうに耳を塞いだ老人が現れた。


「おい、カイト。なんべんも大声で呼ぶんじゃねぇよ。耳がおかしくなるぜ」


 そして、こちらを見据え、眼光が鋭くなる。


「ほう? さっき失敗したばかりだが、もう出来たってぇのか?」


 デルライラムは近づいて来て、不動のポーズを取る俺の周りをゆっくりと歩いた。そして、口元に手をやり、髭を撫でる。


「ほぉう。下腿も真っ直ぐには出来てねぇ。腰も完全には落ちてねぇ……」


 や、やっぱりダメか!?

 ここで、デルライラムは不敵に笑った。


「いいぜ。満点には程遠いが、俺がやれと言ったのは、そういう事だ。……いいだろう。次の段階へ進むぜ」


 心の底から嬉しさがこみ上げて来て、思わず喜びの声を上げていた。


「や、やったぁぁぁ!」


 デルライラムは、腰にぶら下げられた袋の中身を漁りながら「そんなに嬉しかったかぁ?」と呟いた。


「そりゃ、そうですよ! 苦労した甲斐がありました!」


 無言のまま袋から取り出した不思議な形をした指輪を、俺の右の人差し指へ嵌めて行く。


「ええ? 師匠、何をしてるんですか?」


 この指輪、宝石が四つ嵌ってる? 片手に持った、小さなノミ状の工具が、宝石の内のひとつの側面へ当てられ、ねじを巻く様な動きの後に、ポロリと外れ落ちた。それを掌で受け止め、袋へしまい、また別の何かを取り出した。


「お前が、これほど早くここまで来るとはなぁ。夢にも思わなかったぜ」


 手に持ったそれは、先が鋭利に尖った、黒く禍々しい石だった。それを握りしめる手に力が入るのが、見ているだけで分かった。


 そして、驚愕の言葉と共に、俺の手首めがけて、その先端が突き立てられた!


「お前には、これから死んでもらうぜ」


 手首に激痛が走り、痺れが腕を駆け登って行く! それは、留まる所を知らず、だんだんと身体の中枢へ達している様だった。


「な、師匠、何を言って!? ししょ――」


 意識が遠のき始め、視界がぐらつき、脚から力が抜ける。

 暗くなっていく視界の中で、俺を見下ろす師の険しい顔が見えた。その光景を最後に、意識は闇へと呑まれて行く――。

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