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3Dプリンターで異世界調査はじめました!  作者: しゅーる君
調査報告書③
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調査報告書③ 腹が減っては戦が出来ません

【聖鑑定】

氏名:エレノア・クラーセン

レベル:20

性別:女性

年齢:21才

種族:ヒューマン

属性:火☆水☆風★土☆聖★闇☆

魔法:短文詠唱 回復魔法(キュアヒール)【天上の福音我がもとに参らん】

ギフト:闇夜の眼 夜間の視覚聴覚能力向上

所属:聖国国防軍

称号:軍曹



なるほど。

彼女が所属しているという国防軍というのは、

確かに実在しているらしい。

聖騎士団とどう違うのかはさっぱりわからないけど、

ともに国を守る組織だって事だろう。



「突然すみませんでした。援軍と期待させてしまいましたが、単独行動なんです」


「そっ、そうでありましたか・・・」


張り詰めた緊張の糸が切れたのか、

ぐったりとその場にしゃがみ込んだクラーセンさん。

あわてて近づこうとすると、

ボウガンをもったまま左手で僕を制止する。

右手は引鉄に指をあてたままだという事は、

まだ警戒を解いてはいないという事か。

上から見下ろす格好になったから見えちゃった彼女の深い深いその谷間に、

地球に生まれてよかったぁぁぁぁ!

って心の中で戦闘力(バスト)を叫ぶ。

ここは地球じゃないけど。


「・・・この建物にいらっしゃるのは国防軍の皆さんだけでしょうか」


「ええ、村人は全て退去させています。この先は激しい戦場ですから、我々は街道を封鎖している警備兵です」


「クラーセンさんを含め9人ってところですか」


「なぜそう思われますか?」


「魔素探知は僕の専門分野なんです。冒険者というより、調査が専業なものですから」


そういって彼女にもわかるように、

あえて魔素探知(マナソナー)の出力を大きな波長で広げてみた。

本番の探索では、相手に出来るだけ感知されないように、

魔素の波を打ち出すが、この能力を伝えるなら、

このくらい極端な方が分かりやすいだろう。


「・・・なるほど、それは便利な能力ですね」


「ええ、これだけでミスリルになれたようなものです」


ぐぅぅぅぅっ。


僕への警戒が幾分とけたからなのか、

クラーセンさんのお腹の虫が勢いよく鳴った。

聖都から来たことに「見え透いたこと」と言ってたから、

もしかして聖都に続く街道は分断されていたのかもしれない。

だとすれば、この村に簡単にやってきたのは迂闊だった。

まさか空から来たともいえないのだから。


「もしよろしければこれをどうぞ」


空間保管庫(ストレージ)からマーサさん用にと思ってたパンを取り出した。

この魔法を人前で使うのもどうなのかとも思ったけど、

この能力があるから調査と補給用の要員だと思われた方が都合が良い。


「あっ、ありがたい。この分隊ではもう5日間も補給が届いていなかったの」


クラーセンさんの呼びかけで、

宿にいた全員が食堂にやってきた。

まともなのはクラーセンさんの他は少し年配の男性がひとり。

あとは酷いけがを負っているものばかりだった。


怪我人にはどうかと思ったけど、

引っ越し祝い用に買ってあった、

ワイン樽も空間保管庫(ストレージ)から取り出した。

突然取り出した事よりも、目の前にワインが出てきたことの方に驚く面々。

僕が心配するよりすんなりと目の前の不条理を受け入れてくれたようだった。


「皆さん、パンはまだ沢山ありますから落ち着いて食べてください」


空間保管庫(ストレージ)には非常時のチーズと干し肉、

そして大量の水がストックされていたけど、

全てを出し尽くしてもまだ足りないと言った様相だ。

補給が絶たれて5日間と聞いたけど、

実際のところ、それ以前から十分な量が行き届いていなかったのだろう。

補給路をたたくというのは、

いつの時代でも戦争の常套手段である訳で・・・


「クラーセンさん・・・」


「エレノアとお呼びください。ランウォーカー殿。貴殿は我々の恩人だ」


「それじゃ、僕の事もボーズと呼んでくださいエレノアさん。実は僕が調べに行きたいのはウルトガ鉱山なんです。たぶん、皆さんの様子を察するにとんでもない状況になってるという事は分かるんですが・・・」


「まさか貴殿ひとりでウルトガ鉱山に参られる気ですか。そうだとすれば一切教える事は出来ません」



参ったな。

交渉はストレートにと思ったけど、

軍人のエレノアさんには真っすぐすぎたか。

でも、確かに僕一人でなにも準備をしていない状況で、

ウルトガ鉱山に突入するってのは無謀な作戦だ。


「いえ、僕は弱い人間ですから戦場の最前線にひとりでとかありえないです。ただ調査ですよ。場所と現在の状況を知りたいだけなんです」


「我々も最前線がどうなっているのかすべては分かりかねます。ただ、5日前までは補給物資を運ぶ荷馬車の隊が街道を賑わせておったのですが、突然のように姿を見せなくなり、我々の補給も恥ずかしながら・・・」


恥ずかしいのは、

そのはちきれんばかりの戦闘力を隠しているピチピチの迷彩シャツの事だと思うが・・・

思わずチラリと双丘を覗き込むように視線を動かしてしまったので、

その挙動をエレノアさんの女の感が看過してしまった。


「こっ、これは気配を完全に消してくれる魔法衣なのですが、私にあうサイズがこれしかなくてて・・・」


突然しどろもどろになったエレノアさん。

うーん、この戦闘力にしてこの反応。

まだ開発されていない匂いがぷんぷんと湧いてくる。


【・・・変態野郎】


話題を変えるために、強引に質問をかぶせてみた。


「聖都方面の街道で何か補給路を分断されるようなことって考えられますかね」


「・・・はい、ここから15キロほど南に下りますと「ハノーク砦」という関所があります。この3日間4名の偵察を向かわせたのですが誰一人戻っておりません」


「もしかしてそこが落ちたのかもしれないですね」


「ボーズ殿は砦を通ってこられたのではないのでしょうか」


「そこは僕の得意分野という事で。商売道具なものですからタネあかし出来ないんですよ」


「・・・そうですか」


「でも安心してください。物資の補給は僕が承ります。ここの状況も国防軍本部に伝えますけど、本部ってどこにあるんですかね」



僕のことが頼りになるからなのか、

それともあまりにも世間知らずからなのか。

驚いたり笑ってみたり、

この何日間か張り詰めていたものが弾けてしまったかのように、

エレノアさんは色々な事を教えてくれた。

平時であれば機密漏洩と同僚たちから責められたのかもしれないけど、

命を落としてからでは誰もそんな事を言うことは出来ない。

見て見ぬふりを、聞いて聞かないふりをしてくれたのは、

僕にとってもエレノアさんにとってもありがたい事だった。


ウルトガ鉱山は、この村から北に20キロほど行った山間(やまあい)にあるらしい。

カムラムカル川の手前に「カスケード砦」という関所があるのだが、

聖国が直営する魔石の生産拠点だ。

行き着くまでに何重もの関所や砦があるのは当然のことだろう。

現在、聖騎士団はそこを拠点にウルトガ鉱山を攻略しているのだとか。

そしてここで新たな真実を知ることになった。


「魔族が鉱山を襲撃してきたって聞きましたが」


「いえ、その逆です。鉱山から魔族が湧き上がってきたのです」


かつて聖者の墓所にできた大穴から、

大量の魔族が這い出してきたって伝説。

それと同じような事が、アルトガ鉱山に起こったという事なのか。


「生存者の話では『掘り当ててはいけないものを掘り当てた』『地獄の窯を開けてしまった』など一応に鉱山内部から魔族が出てきたとの情報であります」


「・・・地下から魔族ですか」


地下に魔族の世界があるというのだろうか。

もしくは地下にある魔石が魔族に変わるような異常事態(イレギュラー)が発生したのか。


「砦から取りこぼした魔族が、我々街道を警備していた国防軍と交戦となり、このあり様で。上級士官は全て戦死し、現在この部隊は私が指揮をとっております」


この村の兵士は、2中隊がほぼ壊滅し再編成した部隊らしい。

ほとんどが負傷兵であり、とても戦えるような状況ではないだろう。

どうしよう。ここは重傷者を中心に一度聖都まで空間転移(テレポート)するべきか。

それとも、退路を確保してあげることを優先すべきか。



「エレノアさん。ちょっとお願いがあります」


「はい、私でお役に立てることでしたら」


「僕とこれからハノーク砦までデートしてくれませんか?」



もちろん夜も更け切れていない真夜中の大人の付き合いだ。















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