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3Dプリンターで異世界調査はじめました!  作者: しゅーる君
調査報告書③
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調査報告書③ クエストを受けようか迷います

鍛冶工房レブロンを後にして、

性懲(しょうこ)にもなくボスフェルト家に舞い戻る。

僕にはひとつ確認したいことがあった。


ポーさんは何故主人のディックさんが、

「死んでいる」と知っているのかという事だった。

雇った冒険者の遺体があったと聞いているが、

主人の遺体は無かったと聞いていた。


雇われの従者であれば、

遺体が出てこない限り「生きている」と願うのはあたりまえであり、

そう簡単にあきらめる事は出来ないはずだ。


まして、主人が帰還しなくなってから60年。

最近そう思い始めたのであれば理解できるが、

この60年ずっと主人の亡骸を探すクエストを発注している。

「死んでいる」事に相当の確信がなければそのようなオーダーは出来なかったはずだ。


まぁ、モンスターハウスにいる魔法使いの老婆の噂話と、

サイドテールの可愛い女の子の差異はあるけど、

そこらへんはなんとなく想像は付いている。

僕と同じようなギフトをもっているのだろう。


見える人には真実が見えるが、

見えない人には偽りしか見えない。

あんな女の子が大きな屋敷で独りで暮らしているなんて広まったら、

なにかと物騒であるのは、あちらの世界でもこちらの世界でも共通したリスクなのだろう。


正直あの屋敷は立派すぎる。

僕たちには身の丈以上の環境だ。

たとえ借りることが出来たとしても、

あまりの生活環境の違いから、

僕はともかくとして、アンやペトラは落ち着くことは難しそうだ。

ソフィアが住んでたのは真祖の屋敷っていってたから、

案外モンスターハウスには馴染むのかもしれない。

それにあいつは暗い部屋にベットがあれば、

どこでも寝れるタイプだしな。


コンコンコンっ。


「・・・はい、ボーズ様。ずいぶんお早いお帰りですこと」


「ひとつ聞いてもいいですか?」


「はい、どうぞ中にお入りくださいませ」


先ほどのリビングの同じソファーに腰かけて、

同じアールグレイのようなお茶を入れてもらう。


「・・・聞きたい事とは」


「何故ボーさんはご主人が亡くなったと知っていたのですか」


交渉の基本。

シンプルイズストレート。

隠し事はマイナスである。

特にボーさんは魔素を操る達人だ。

僕の聖鑑定も受け付けないばかりではなく、

魔素探知(マナソナー)が干渉できないような魔法障壁を幾重にも纏っている。

エリザベスさんのそれとも全く違った系統のように思われた。


僕は言葉で情報を得ようとしたが、

同時に魔素探知の感度は最大限まで高めている。

相手に気がつかれないように。

かつ高出力となると、なかなかコントロールが難しい。

でも、このところの剣術の訓練のおかげなのか、

集中力が増しているように思えた。


気がつかれていない。

そういう自信はあったのだけと、

ボーさんが不敵な笑いを浮かべる。

探り合いというのは先方も一緒のようだった。


「よろしい。真実を知りたという事以外に他意はないようですね・・・」


「もちろん。その答えを聞いてからクエストを受けるかどうか返答します」


「この屋敷の使用人は2人。ハウスキーパーのこの私と、コックのマリルー」


「・・・その方はこのお屋敷にはいらっしゃらないようですが」


「ああ、もうずっとお料理をすることが無かったものですから、へそを曲げて隠れているのです。でもご安心を。我々二人はこの屋敷から出ることが出来ないのですから」


「もしかしてお婆さんだったりしますか、そのマリルーさん」


少し驚いたような顔をして僕を見つめるボーさん。

小さいカラダがより小さく見えた。

そして爆発するようにカラダを大きく揺らして笑いだす。


「あはははははっ、確かに私もマリルーも100年近く存在していますけど、見た目は私と同じくらいの女性ですよ、マリルーは」


「あなたたちはいったい・・・」


「ご存知ありませんでしたか。私は家妖精(ブラウニー)のポー。そしてマリルーは家事妖精(シルキー)です」


「すみません、初めて伺いました。つまりあなた方は妖精さんなんでしょうか?」


「私たちは精霊使いディック・ボスフェルト様と契約した精霊。上位の妖精と言ったところでしょうかね。まぁ、ディック・ボスフェルト様より作り上げられた人工精霊と言えばおわかりでしょうか」


妖精だの精霊だの。

お初にお目にかかるものばかりなのだが、

吸血鬼や魔王そしてけしからん爆乳達と遭遇している僕にとっては、

さほどの驚きは感じることはなかった。

つまりそういう生命体がいるんだなってところだ。

魔王と遭遇してしかも戦っているという事が、

どれだけの経験になっているのだろう。

たいていのことには動じないようになっている。


「精霊使いはご存知?」


「いえ、それも初めて聞きます」


「大地や大気、そして宇宙から。魔素を集め微精霊を使役する。それが精霊使い。魔法使いは己の内なる魔素を使いますが、精霊使いは世界の魔素を使います。これが大きな違い。結果として発動する術式は魔法のそれとあまり変わりないんですけどね。そして上位の精霊使いは、我々のような人工精霊までも使役することが出来ます・・・」


「・・・それがなぜ亡くなったと分かるのか」


「契約は魂と魂の結びつきで成立します。私たちの魂は今もって精霊使いディック・ボスフェルト様と繋がっております。私たちが存在しつづけている事こそがその証明なのです」


「それでは生きているんじゃ・・・」


「いえ、魂はこの世の中に存在しておりますが、肉体はその魂を繋ぎとめておりません。これは我々だから感じる事なのです」


「・・・クエストの遺骸を探せというのは」


「もうずいぶん前の事です。ご主人さまのカラダから魂が抜き出たというのは。肉体の欠片も残っていないのかもしれません。でも確かに魂はこの世界に存在しているのです。どうか、主人ディック・ボスフェルト様の囚われの魂を開放してほしい。それがクエストの真の目的です」


なんとも悲しいクエストの目的なのであろう。

主人により作り出された人工精霊。

それが主人の魂を見つけてくれなんて。

ずいぶん(たち)の悪い冗談だ。


修行中の身の上とすれば、

とても手におえるようなクエストではない。

それに、こんなクエストの内容を、

アンやペトラには聞かせたくはない。

彼女たちが経験している道のりにも、

悲しい人の死にまつわる思い出が詰まっているのだから。



「・・・事情はわかりました」


「では、クエストをお聞き受けいただけますでしょうか」


「残念ですが、私では役不足だと思います。圧倒的に経験が不足しています」


「・・・左様でございますか。無理強いする訳には参りません」


「でも、ご主人の魂がどこでどんな風になっているのか。調べるお手伝いは出来るかもしれません」


「それだけでも構いません、どうかディック様をお探しくださいませ」


「それでは、ディックさんの魔素が込められた導具なんかありますかね。できれば武器のようなものだとありがたいんですけど」


「お待ちくださいませ」


ポーさんが、奥にある主人の書斎から、

紫色の布にくるまれたものをうやうやしく運んできた。

中を見ると、ミスリル銀に光る錫杖がある。

随分凝った細工が施されているけど、

実際に使用していた形跡がある。

この錫杖にはディックさんの魔素の残滓が残っていた。


「それで、最後にディックさんが出かけられたのはどのあたりなんでしょうかね」


「ご主人さまが向かわれたのは、この聖都西側にある『聖者の墓所』です」



・・・またそこかよ。



「それではよろしくお願いいたします、ボーズ様」


「ええ、僕の本職は調査員ですからね・・・」



クエストを受ける前に場所を聞くべきだった。




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