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3Dプリンターで異世界調査はじめました!  作者: しゅーる君
調査報告書②
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調査報告書② 進路はしっかり決めましょう

サルドウスさんたち雷帝の剣の4名が金獅子亭にやってきた。

あれからまだ数日しか経っていないのに、

もう長い間会っていなかったような気がする。

短かい時間ではあったが、ともに死線をさまよった戦友であり、

語りたいことは山ほどある。


ビリアンティさん以外は、

ソフィアと会うのは初めてだった。

まぁ、トリスカイさんとセダさんを拉致した片棒を担いでいた訳で・・・

あの時はとても紹介するような雰囲気ではなかった。

ビリアンティさんが軽くウインクして見せるので、

ソフィアの詳しい話はまた別の機会にしておこう。

信頼のおける人たちには、

ソフィアが人間に戻ることを手伝ってもらいたい。

なにせその方法が全く分からないのである。

そう考えれば、このまま黙っているわけにはいかないのだ。


鍛冶工房をでたあと、僕は一度金獅子亭に戻り、

アンとペトラから大量のパンを受け取って石の家まで転移した。

ペトラについて行くかと尋ねたけれど、

短い時間では、子供達との別れが辛くなるからと、

日を改めて開拓村に顔を出す事にした。

まぁ、子供たちが寂しい思いをするというより、

ペトラの気持ちが溢れてしまうからなりだろう。


僕もマーサさんと顔を合わせるのは少し抵抗があったけど、

大量のパンを渡さなくてはいけないので嫌々ながらに再会を果たした。

マーサさんの顔をみると、思わず「ぷっ」と笑いが出た。

もちろん僕の頭にメガトン級のゲンコツか降り注いだのは言うまでもないが、

物理攻撃防御(アンチフィジカル)がまったく発動しなかったのはどういう事なのだろう。


部屋に戻ると、ソフィアがベットの上で、

壁に向かって体育座りをしている。

僕に対しての嫌がらせかと思ったけど、

スピースピーと寝息をかいていた。

これがソフィアの正しい睡眠姿勢だとしたら、

やっぱりコイツは普通じゃない。


「それじゃ、再会を祝してカンパーイ!」


蹴飛ばして起こしたソフィアを連れて、

8人による祝宴が開催された。

金獅子亭自慢の料理は、

分厚いながらもトロトロに煮込まれた、

シマウシの角煮とザリガニのような沼エビのフライ。

濃厚なチーズがたっぷりと掛かった根菜のグリル。

そして山盛りの魔郭公のから揚げだ。

農村部では贅沢な香辛料もたっぷりと使用されている為、

元いた世界となんら変わらない風味豊かな職が味わえる。


「いやぁ、まったく。ボーズは水臭いなぁ。アンちゃんやペトラちゃんみたいな可憐な女の子が仲間にいるのに、更にこんな幼くラブリーな美少女をパーティーのメンバーに入れてるんだからなさぁ」


酒が入ったこともあって、

サルドウスさんの危険な性癖が現れる。

こいつは真正の■リ■ンだ。


それを聞いたセダさんが上下にウンウン首を振り、

サルドウスさんの意見に激しく同意している。

まずい、こいつら【まぜるな危険】の人種である。


アンとペトラは病み上がりという事もあり、

今夜は葡萄ジュースを飲んでいる。

ソフィアは昼間も酒を飲んでいたので、

僕としては呑ませたくなかったのだけれど、

サルドウスさんから注がれまくり、

あびるほど飲み始めている。


となりのビリアンティさんは、

さぞかし面白くない事だろうと反応を見ているのだが、

そんなサルドウスさんの行動を何事もなかったかのように許容している。


はて。

看病していたビリアンティさんを見ていた限り、

このふたりは只ならぬ関係だと思っていたのだけれど。

そうか。これが大人の女性の懐の広さなのかもしれない。


もしこれがアンであったならば、

ポシェットから僕の知らない【呪われた魔剣】を取り出して、

めった刺しにされていてもおかしくはないからな。

その剣の名前は【魔剣ジェラシー】と名付けよう。


「ヘイ、ソフィアちゃん。今夜の俺たちの出会いは運命という名の歯車に引き寄せられた。そう思わないかい?」


「どちらかと言えば、レベルの高い殿方の血潮は【うんめい】そうで食べられないのが【歯がゆい】事だと思いますわ♪ヒックっ」


「そうかい、キミの事を新愛をこめてソフィーとよんでもいいかな」


「はい、ゾンビは系統的に同じであります♪ヒックっ」


うーん、アンデット全開トークであるが、

サルドウスさんが本物のアホで助かったな。


「ところでビリアンティさんたちはこれから何をなさるんですか?」


「しばらく休暇に入ろうと思うの。このところずっと仕事ばかりだったし、まとまったお金も手に入ったからね。ボーズくんたちはどうするの」


「僕たちも装備や道具を随分なくしましたから。補充を兼ねてしばらくは上層にとどまろうと思ってます」


そう説明すると、少しペトラが寂しい表情を浮かべた。

ペトラは僕たちパーティーの正式メンバーではない。

ギルドでミスリルのメダルを貰ってはいるが、

まだ彼女に渡してはいないのだ。


魔法学院の学生であり、本業は勉強する事だ。

下層のスラム街から抜け出せた幸運をつかんである訳で、

なにも好き好んでこんな不確実性しかない、

冒険者のパーティーに参加している必要はない。

もちろん短い付き合いではあるが、

スラムの子供たちや僕たちに優しく接することのできる、

素敵な女の子だって事はよく理解している。


マーサさんの村に子供たちと会いに行く時に、

同行するのはやぶさかではないけど、

一番大切な事は彼女が将来何になりたいかっていう事と、

それを叶えるには何が必要かって事だ。

聖者の墓所で遭遇した事件すべてを、

学院のレポートとして提出することは出来ないだろうけど、

この数日間の出来事は、

彼女にとってかけがえのない思い出になっている事を願っている。


ペトラに進路のことを聞きたい気持ちはある。

できればこのまま一緒に僕の調査探検に同行してもらいたい気持ちもある。

けれど、それをはっきりさせたら、

ペトラとの別れが現実のものとなる訳で・・・


「それでペトラは学院を卒業したらなにがしたいの?」


ビリアンティさんが凄まじい直球を投げ込んだ。

それも、どストライクど真ん中だ。

さすがビリアンティさん。

【魔乳の伝説】を持つ女だ。


「私はスラムの子供たちを助ける仕事がしたいんです」


「ずいぶん抽象的ねぇ。でもそれは今のままでもやってるじゃない」


「今までは人に言えないような悪い事もやってるんです」


「ペトラ、それは・・・」


「いえ、私はいい子じゃないんです!」


僕の言葉を遮るようにペトラが席を立って訴える。

突然の出来事に、他のテーブルに座る人も、

バカやってたサルドウスさんとソフィアのアホも。

そこにいる全員がペトラの声に驚いた。


「ボーズさんはずるいことしないのに、スラムの子供たちをすくってくれました」


「・・・ペトラ」


「お金持ちじゃないのに、格好よくないのに、身長も高くないのに、頭も良くなさそうなのに・・・」


おい、感謝の気持ちではなく、

ただ僕の事を(けな)してないか?


「子供たちを救ってくれました。聖者の墓所の時だって、役に立たなかった私を命がけで救ってくれました。はじめて公衆浴場に連れて行ってくれました・・・」


「ペトラ、よくわかったよ。落ち着いて座ってくれ」


「私、学院よりずっとボーズさん達と一緒に学んでいきたいです!」


「・・・ペトラ、学校がすべてじゃないわ。あなたのやりたいようにすればいいのよ」


「はい、だってボーズさんは私の初めての男性(ひと)だから♪」



「「「「「「「 えっ!? 」」」」」」」



その一言で、金獅子亭が凍り付いた。












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