表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3Dプリンターで異世界調査はじめました!  作者: しゅーる君
調査報告書②
69/539

調査報告書② アンを迎えに行きましょう

朝目が覚めると、

ソフィアが食事の真っ最中だった。

つまり僕の指をしゃぶっていたのだが、

魔素の残量を確認したところ、

エミリーが返事をしてくれない。

そう言えば、システムをオフにしてたっけな。

幸いなことに、ほとんど魔素は減っていなかったものの、

僕の意識がない時の食事も厳禁だと命令しておこう。

寝ている間に干物にされてはたまったものじゃない。


空間移転(テレポート)


約束の時間、聖域の大聖堂内にある祠堂に戻ってみると、

アンとペトラが僕の到着を待っていてくれた。

もちろんソフィアは留守番だ。

もっとも聖なる場所に連れてきたら、

いったいどんなことになるのか。

多少興味があったりもするのだが・・・



「ご主人様!」


「ボーズさん!」


若い女の子たちに同時に抱きつかれる経験ってのは始めてだ。

いや、初めてボーナスをもらった日、

夜の街で記憶をなくす寸前の僕は、

これ以上のモテモテぶりだったような・・・


【・・・黒歴史にも程があります】


【うるさい。切るぞスイッチ】


ふたりからほのかに香る石鹸の匂い。

よく見れば、少し化粧を施してもらっている様だ。

エリザベスさんから相当な待遇を受けていた事が見て取れる。


「ご主人様ぁ、ご主人様ぁ・・・」


アンが大粒の涙を流しながら叫び続ける。

あんなにも怖い思いをしたのだから無理もない。

僕の顔をみたら安心したのか、

込み上げる思いが溢れてくる様子だった。

頭を撫でてやって込み上げてくるものがなかなか収まらない。


ペトラもひたすら泣きじゃくっている。

魔法の実地訓練でまさか魔王と遭遇してしまったのだ。

学校に提出するレポートに、

「魔王と戦闘になりましたが生きて帰れました」

なんて書き込んだところで「ウソを書くな」

と落第点しかもらえないことは明白だ。

マーサさん達に預けた子供たちが新しい生活で頑張っている事で、

ペトラの意気込みも相当強かっただろう。


「ほんとうにありがとうございます。エリザベスさん。感謝のしようがありません」


「礼には及びません。魔王を討伐してくれたのですから、我々の方が手厚くお礼をするべきなのでしょうが・・・」


「ふたりカラダは如何でしょうか?」


「心配ないと言いたいところなのですが、しばらくは無理をさせず静養するように」


魔素探知(マナソナー)でふたりを探ってみるのだが、

アンの右目には魔眼特有の全てを見透かすような鋭さは無かった。

とても完全に回復しているとは思えなかった。

おしゃべりで明るかったペトラも、

言葉をどこかに置き忘れているような気配がする。

ここは焦らずゆっくりと次の事を考えるとするか。

まぁ「次にすること」がなんなのかわからないというのが問題なのだろう。


「エリザベスさん、黙っているつもりはなかったんですが、これ換金してもいいでしょうか?」


ポケットから吸血姫の魔石を取り出してみる。

血を思わせる深い深紅の魔石が輝いている。

マーサさんいわく、

宝石としても一流の輝きと稀少性があるらしいが、

この魔素を使用して作られた魔法具は、

いずれも伝説級のアイテムとなるらしい。

錬金術師垂涎の魔石なのだとか。


「・・・それは吸血姫(バンパイアプリンセス)を倒したときの魔石ですね。あなたからはすでにそれ以上のものを預かっています。それは自由に使いなさい。ただし一度にすべてを換金してはいけません。市場に出回る量を見誤ると不必要な争いが生じるものです」


「なるほど、今回は1つだけ換金しますが、聖都直営のギルドに持ち込んでよろしいでしようか」


「ええ、ギルド長には私から連絡を入れておきましょう。余計な詮索はされないはずです」


それはまったくありがたい。

アドリブが苦手な僕では、

どこでどうやってこの魔石を手に入れたなんてすごまれたら、

魔石を放棄して、思わず空間移転(テレポート)しちゃうかもしれないしな。


「それともうひとつお願いがあるんです。僕たちサテラさんの奴隷の身分って事で上層まで通行許可を貰ってるんですけど、長めに滞在する場合、いちいち申請手続が必要で面倒なんですよね。なんとかならないでしょうか」


「ええ。上層の市民権は許可しますよ。あなたは聖都を救った勇者様ですからね。私の司教枢機卿としての権限でボーズ、アン、それにペトラ・・・」


「えっ、私までいいんでしょうか!?」


「ボーズがそう望んでいるのですよ」


「すいません、ついでにもう一人、ソフィアって子もいるんですよ」


「もちろん許しましょう。滞在する住居も手配しましょうか?」


「いえ、許可をいただければ十分です。しばらくは金獅子亭に厄介になりますが、どこかいい物件があれば貸家でも物色します。もちろん定期報告は怠りませんから」


「あなたたちに女神クリージュカルニスのご加護があらんことを・・・」


ソフィアが聞いてたら気絶するな。

エリザベスさんが行政区の役人に伝言通知(メッセージ)の上位魔法を使用し、

細かく指示をしたかと思うと、慌てた様子で四人の文官が現れた。

市民権交付手続は厳格な審査の元、

最低でも1年以上かかると言われているところを、

ものの30分で完了することになった。

聖域に来ることのできないソフィアの為に、

明日の朝、文官のひとりが金獅子亭まで出向いてくれることになったのだが、

なぜ聖域に出向けないのか目で訴えているようだったが、

まさか吸血鬼(アンデット)なんですとは口が裂けても言えない。

ちょっと体調が悪いんですけど、エリザベスさんなんて言われましたか?

って逆ギレ気味に押し通すこととなった。

聖都で初めて市民権を得た吸血鬼(アンデット)となった事だろう。


市民権を登録する際、

僕とアンそしてペトラに家名を登録するように言われた。

登録後変更は出来ないという事だったが、

突然の出来事にかっこいい家名が頭の中に浮かんでこない。

アンもペトラも家名なんて想像もしていなかったと、

僕に名付けてほしいと懇願してくる。

文句は言うなという条件で引き受けたものの、

名前を付けるセンスの欠片も持ち合わせてはいない。


アンは赤毛から由来した名の由来から、

やっぱり【アン・シャーリー】か。

ペトラは困ったな。

たしか赤毛のアンが引き取られたのはグリーンケイブルズのカスバート家。

【ペトラ・カスバート】でいいか。そういえばソフィアは

【ソフィア・アンドルリーフ】って立派な家名があったな。

もとはいいところのお嬢様だったのかもしれない。

そして僕はと言えば・・・

まさか【ダイドージ】はないでしょう。

名乗るたびにいちいち面倒なことになる。

【あゆむ】だから【アユーム】。

だめだ、失笑が止まらない。

名乗るたびに悲しくなるから止めておこう。

【カケル】【アユム】と僕たち兄弟に名付けた親もセンスがなかった。

三人目の兄弟が生まれたら【スワル】だったに違いない。

うーん、どうしよう。

アンたちに適当に名前を付けていながら、

自分の名前に迷っているなど格好悪いな・・・


「・・・はやくしていただけませんか?」


「すみません、それじゃ【ボーズ、ランウォーカー】で」


と、聞く人が聞けばそれなりの意味が込められた名前だと気がつく事だろう。

【ボーズ・ランウォーカー】

家名持ちになったけれど、身分は立派な奴隷である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ