調査報告書② ソフィアの希望を聞きましょう
ベットの上です巻きにしたままのソフィアが気になって寝付けないので、
おとなしく眠れるかと尋ねてみると、コクコクと頷かれた。
もちろん口にもグルグル巻きの状態で拘束しているのだけれど、
まぁ、アンデットだから死ぬことは無いだろうな。
拘束をほどいてやると、
少し拗ねた表情を見せるが、
おとなしく薄い布団を頭までかぶると、
僕とは反対側を向いてしまった。
少し意地悪すぎたのかと罪悪感を感じ始める。
それにこんな薄い布団なのに、
ソフィアの着ているものと言えば、
とても保温性があるとは思えないあんなものだ。
せめてサテラさんくらいの身長と戦闘力があれば、
襲い掛かる自信・・・もとい、可能性があるのだけれど、
この幼女のような身長と、
発展途上中の戦闘力では、
襲われることはあっても、
僕が襲い掛かる可能性は絶対に無い。
まぁ、悪い子じゃないという事はわかるんだけど、
なにを考えているのかいまひとつ理解に苦しむところがあるな。
エリザベスさんに人間に戻る方法を調べてほしいと間接的に頼んではいるけど、
その事を知ったらソフィアはどう思うのだろうか。
88才の実年齢で、攫われたのは16才。
人間に戻れたとしても、
72年の時が過ぎている訳で・・・
年齢的にもご両親はこの世にはいないだろうし、
兄弟だって存命していたとしても高齢である。
大体70年以上前に失踪した女の子が、
当時の姿で戻ってきても、
だれも信じる事なんて無いだろうな。
つまり、ソフィアには帰る場所が無い。
アンやペトラ達と同じ境遇ってことになるのか。
魔石灯の薄明りの中、
ソフィアが横たわる肩のラインが小刻みに震えているのが分かった。
「・・・寒くないか?」
「・・・・・・」
「・・・寝たのか?」
「・・・・・・」
「悪かったよ。謝るから機嫌直してくれ」
「・・・そっちにいっていいなら許してあげる」
「いやらしい系は禁止だからな。そんな事をしてたらマーサさんに二人とも殺されるぞ」
「わかってますぅ。少しだけぎゅっとして欲しいだけです・・・」
そういって僕のベットに飛び込んできた。
発展途上の戦闘力なのだが、
小さいカラダゆえに大きく見えるってのには厄介だ。
僕の腕の中で見下ろすように見えちゃう双丘。
つい実地調査を開始したくなる調査員魂が疼く。
アンをこの体勢で抱きしめた時には、
まったく見かける事の出来なかった谷間という絶景だ。
まぁ、アンの場合は最近まで栄養摂取環境が悪かったのだから、
これからの伸びしろに期待したいところである。
【マスター、調査員を都合よく解釈しすぎじゃありませんか?】
【ナビシステム、スイッチ・オフ】
ぶちっ。
これで邪魔者は消えた。
しかし、プラチナブロンドなのか銀髪なのか不思議な髪の毛だな。
毛先にウェーブが掛かっているのは、
この世界でも美容室なんてのがあるのだろうか。
まぁ、くせ毛だとしても美少女の王道をいく容姿だよな。
そんな目をウルウルさせられたら、
ちょっとだけよとクラっときちゃうかもしれない。
「・・・ご主人様ぁ」
「なっ、なんだソフィア」
「ふふっ、ご主人様のカラダ、暖かい・・・」
「おいこら、そんなに引っ付くな」
「私は心臓が止まっているから、魔素を摂取しないと凍えちゃうの。ご主人様の魔素はベルクソン様のものと全然違う。すごく温かい・・・」
「・・・そうか」
「あっ、いけなーい。私ったらご主人様の前で昔の男の話をするなんて♪」
「・・・その言い方、止めてくれないか」
まったく、少し気を許すとすぐこれだ。
確信犯ならすぐに消し飛ばせてやるところなのだが、
コイツの場合、悪気があるという事ではなさそうだ。
悪意を持って天然を装う事もなく、
天然を人工的に作り出すことも無い。
そう、コイツの正体は天然中の天然。
キングオブ天然という残念な存在でなのであろう。
「・・・ご主人様?」
「明日は武器を調達に行く。聖域まではいかないからソフィアもついてくるか?」
「お留守番じゃなくていいの?」
「そうしたいなら留守番でもいいけど、ソフィアはどうしたい」
「ご主人様がお許しいただけるなら一緒に買い物がしたいです」
「それじゃ決まりだ。アンとペトラを迎えに行ったら、みんなで買い物に行こう」
「アンが言ってた公衆浴場にも行ってみたいです・・・」
「そこで売ってるパンは凄く旨いぞ。マーサさんもそこの土産を楽しみにしてるんだ」
「それと、金獅子亭のご馳走も食べてみたい・・・」
「ネラって女の子がアンの友達なんだ。ソフィアもすぐ仲良くなれるさ」
「それからそれから・・・」
ソフィアの夢を聞き続けた。
ソフィアにもささやかながら夢があった。
彼女のもっているこの世界の知識とは、
アンとペトラから聞いた一夜の情報の中にしかないのだが、
それでもやってみたい事、見てみたい事が、
こんなにもたくさんあるって事に驚いた。
僕もソフィアもいつの間にか眠りについたのだが、
こんなにやりたい事がある女の子の夢は、
かなえてやりたいと思うのが男ってヤツの性なのだろうな。
「・・・人間に戻して見せる」
その言葉をソフィアが聞こえていたかどうか、
神のみぞ知るほど小さい声の決意だった。




