調査報告書② ソフィアを迎えに行きましょう
僕のギフトには真実の偽物と偽物報告という能力がある。
1000年生きてるエリザベスさんも見た事のないレアスキルらしい。
もっとも、僕のギフトは兄さんから譲渡されたものだろうから、
兄さんが同じ能力を持ってた事を、
エリザベスさんに教えていなかったのかもしれない。
最初にこの祠堂に来た時、
時間が止まったようになって兄さんの姿が現れた事。
エリザベスさん達は気がつかなった事。
アンだけは停止した時間でも意識があった事。
兄さんが勇者ダイドージだという事。
兄さんから色々な魔法を授かった事。
そして自分の事を殺してほしいと訴えた事を、
エリザベスさんに話して聞かせた。
まぁ、いろんな能力の譲渡を受けた事や、
アンの眼の事などもあるのだけれど、
細かいことは省略する事にしよう。
特に発動を見た魔法のコピー能力というのが、
この国、この世界にとって危険極まりない能力だって事は、
鈍い僕でも察することが出来る。
そんな噂が広まれば、
高位魔法は僕の前で誰も発動できなくなるだろう。
「・・・それであなたのレベルはいくつなの?」
「レベル216です」
「にっ、216!?」
美人で巨乳・・・は関係ないか。
綺麗なエリザベスさんの顔が無残にも崩れ去るような驚きっぷりだ。
まぁ、人の限界に到達した勇者ダイドージが100だと伝わっていたのだ。
実のところ兄さんがステータスを能力で偽っていた可能性は高い。
魔人と言われた吸血鬼の真祖だって70台。
それよりずっと強かった爆乳魔王は、
鑑定することは出来なかったけど、
100は遥かに超えていたと思う。
真祖の倍くらいだとすれば150程度か。
魔王クラスがそのあたりだとすれば、
経験を積むことでなんとかなりそうな気はするのだけれど、
今更兵士となってスクワットや腹筋から鍛えなおすというのは絶対に嫌だ。
「・・・まったく規格外ね。ダイドージも覚醒前は一人で魔王を倒すのって無理だったんだから」
「あれは作戦勝ちですよ。僕の事を舐めすぎてたんです」
「途中、あなたが消えたように見えたけど、あれもまだ秘密にしているスキル?」
・・・まずい。
時間停止まで使えると知られたら、
クリシュナイ伯直轄の諜報部で暗殺部隊に配属ってことにならないか!?
血を見るのはこりごりなんだけどなぁ。
「・・・まぁ、それは戦略上の秘密って事で」
疑いの視線を投げかけられるが、
僕に対してというより、兄さんとの思い出の中で、
心当たりがあるような感じのまなざしだ。
決して僕を糾弾するような事ではないのだろう。
「それで、兄さんは今どんな状況なんでしょう」
「・・・四大魔王の躯を憑代にして、その魔王さえを使役していた魔王の神、魔神がこの世界に現れたの」
「魔王より強い魔神ですか!?」
「ダイドージは戦場となったカシュパーレク大陸のカレカ砂漠に結界を張った。私たち全員をこの聖都まで転移させて。もちろん私たちはカレカ砂漠まですぐに戻ったけど、結界の中に入る事は出来なかった。ただ、戦闘音と思われるすさまじい爆音だけが1000年近くうなり続けているの・・・」
「まだ兄さんは戦っているという事ですか」
「ところが今から10年前、あの時倒したはずの魔王のひとりが復活し、私たちの前に現れこう告げたの。【勇者ダイドージは魔神●●●●●●様と融合し、新たな魔神が誕生された】ってね」
「・・・そんな」
「そして我々のもとに、初めて女神クリージュカルニス様が啓示を下されたの。【戦いに備えよ】と。それから私はここで次なる啓示をずっとまってるのよ。そして今回【聖と魔なる雛があらわれる】とお告げがあり、聖国全土にその天啓を受けたものを探したという事なの」
「・・・聖にも魔にもなる存在なんですか」
「だから、天啓を受けたものが魔族に捕らえられる可能性があったの。聖都には強力な結界があるから、魔王と言えど迂闊には近づけない。聖者の墓所など最も禁忌とされる場所なのに・・・」
「それで僕の事を監視・・・というか見守っててくれたんですね」
「アルはもっと疑ってたけど、あの能力じゃ脅威にならんなんて言ってたわ。魔王を一人で退けたって聞いたら腰を抜かすわね」
できればそのまま低い評価であり続けたいのだが・・・
心配する僕を察してか、かるくウインクして見せるエリザベスさん。
「大丈夫よ。アルの事は私に任せて。これからもキミの好きなようにお兄さんの事を追っていきなさい」
「・・・エリザベスさん。ありがとうございます」
「ただ、魔王の件だけは報告させてね。これは私たち全人類の存亡にかかわることだから」
「それはわかります」
そういって、吸血鬼の真祖からドロップした深紅の魔核を差し出した。
これが僕が魔人や魔王と遭遇したという勝利の証である。
「しばらく預かっておくわ。市場で売れば国の半分くらい買える値段がつくはず」
「えええええええっ!!!」
ということは、
海沿いのリゾート地にあるでっかい屋敷を買って、
ボンキュッボンな戦闘力がけしからん過ぎるメイドたちに囲まれて、
ご主人様、お食事が先ですか、お風呂が先ですか、それとも私たちにしますか的な、
あんなことやこんなことが満載のオゲレツ天国が満喫できるというのか!
【マスター、そこまでいくと手が付けられません。一度死にますか?】
おっと、取り乱しました。
「アルに報告したらちゃんと返すわよ」
「・・・いや、返さなくていいのでお願いがあるんですか」
「なにかしら。その価値に見合うお願いってことなのね」
「いえ、下層に住んでる認可外の子供たちの事です。エリザベスさんも状況はご存知のはずですが・・・」
「そうね。報告は受けているけど、まさかその子たちを援助しろって事?」
「ただ衣食住を提供してくれという訳じゃないんです。孤児院というか、学ぶことが出来たり、手に職を付けたり、近い将来に独立できるような養成学校のシステムを作っていただきたいんです。それに人手が足りていない開拓村が多いと聞きます。農村部の里親を仲介できるような行政部門もお願いします」
「・・・わかったわ。さすがカケルの弟ね。私たちとは発想が違うもの」
「いや、僕の頭ではやりたい事の上っ面しかわかんないんですよ。それで人に任せるんですから偽善なのかもしれません。おっと、もうこんな時間だ。長居してすみません。もうひとり知り合いに預けてきた子がいるんですよ。迎えに行くと約束しちゃって・・・」
「アンとペトラは明日まで預かるわ。朝になったら目が覚めるでしょう。その子の件も調べておくわ。聖域の禁書庫になにかヒントがあるかもしれない」
「さすがエリザベスさん。詳しく話さなくてもわかってらっしゃる。姉さんって呼んでもいいですか?」
「ふざけないで」
「・・・すいません、調子に乗りました」
「ところでキミの名前は?」
「・・・ボーズです」
「そうじゃなくて本当の名前。カケルの弟はなんていう名前なの?」
「僕の名前はアユム。大道寺歩です。」
「うん、知ってた。カケルから聞いてたから・・・」
それが僕と兄さんがこの世界に生きているという存在証明か。
エリザベスさんの目に光るものが溢れでる。
【空間転移】
薄暗くなった石の家。
突然店の中に現れれば客が驚くだろうから、
店の裏側に転移した。
なにせ年寄りの客が多い店だ。
驚いた客の心臓が止まったらシャレにならない。
次は間違いなくマーサさんから僕の心臓を止められる。
ソフィアは上手くやっているだろうか。
人間しては12才程度までしか社会に適応しておらず、
80年近くもあんな化け物たちとともに生活してきたのだ。
マーサさんのもととはいえ、
さぞかし窮屈な思いをしているのかもしれない。
ここが慣れないようなら、
聖者の墓所の宿まで戻ってみるか。
あらたな不安を解き放つべく、
石の家の扉を開いてみる。
「いらっしゃいませお客様ぁ。今夜のおススメは血が滴る・・・じゅなかった。肉汁が滴る肉厚な大角バッファローのステーキですよぉ。お飲み物は鮮血のような・・・じゃなかった。ニルダ地方の深いルビー色した赤ワインがおススメでーすってあれ?ご主人様だぁ♪」
白と黒のゴスロリ風メイド服に身を包んだソフィアが給仕を手伝っていた。
・・・随分馴染んでいたもんだな。




