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3Dプリンターで異世界調査はじめました!  作者: しゅーる君
調査報告書②
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調査報告書② 聖なる墓所を見学しましょう

なんだか分からない女の意地の張り合いのり結果、

ベットとベットの間の床で一晩を過ごすことになった。

上から見れば川の字となって寝ている睦ましい光景だが、

横から見れば天と地ほどの高低差がある状態だ。


真夜中にアンからベットに寝てくれと懇願されたが、

寝ぼけたふりをしてやり過ごした。

ペトラが目を覚ました時、

僕とアンが同じベットで寝ているならば、

この先同じ部屋で一緒に寝るなんて事は無理だろうし、

マーサさんの村に同行するのだって、

お互いに気まずい雰囲気になる。


頑なだったアンも一日中歩き通しで疲れているらしく、

僕のつれない様子にようやく諦めて眠りについくれた。

ペトラはベットに横になると早々に可愛い寝息を立て始めている。

鍛え方が違うと言っても、歩き通しが疲れるのは皆同じなのだろう。


狸寝入りでアンを先に寝かせたものの、

僕だって肉体的にも精神的にも疲れてる訳で。

いざ寝ようと思ったら、あっという間に深い眠りにつくことが出来た。



そして僕は懐かしい夢を見た。

田舎の死んだじいちゃん()の夢だった。

じいちゃんの家は東北の田舎町にある。

茅葺の屋根をトタンに葺き替えた曲り屋の古い家。

じいちゃんとばあちぉんがいる炬燵に、

丸々と太った三毛猫が丸くなっている。

炬燵の上にはミカンとせんべいが当たり前のように置いてある。

これも日本の田舎の原風景。


あの猫はいつも寝てばかりだったな。

それでいて僕が近づくと尻尾をパタパタと動かしてくれる。

見た目は寝ているように見えるのだけど、

実のところはずっと僕を観察していたのだろうな。

なんだこのガキはってな感じでさ。


そう、あの尻尾ってこんな感じだったな。

フワフワで真っすぐ伸びた黒い尻尾。

尻尾の先まで撫でてやると、

滑らかな滑り心地なのに、

尻尾の先から根元に手を向けると、

逆立つ毛並みが嫌なのか、

本気になって僕の事を噛みついてきた。


だから優しく優しく、

ゆっくりと触れるか触れないかの力加減で・・・


「・・・んっ、あん♪」


・・・はて。

猫ってこんな鳴き声だったか。


「・・・あっ、ああ、くぅん。ダメっ」


随分色っぽい鳴き声になったものだ。

よし、もう少し強めに撫でてやるとしよう。


「・・・あっ、はあん、ぁああああん!」


随分さかりのついた猫だな。



「・・・ご主人様、なにをなさっているのですか!」



はっと目を覚ますと、

僕の手にはベットから伸びている尻尾が掴まれていた。

尻尾が伸びるその先を確認してみると、

ペトラの可愛いピンクのパンツがあった。

常夜灯の明るさにしてある魔石灯が、

薄暗く部屋を照らしている。

そこに右目から禍々しい魔素を放出しているアンの姿。

その姿を見たのを最後に記憶は朝まで完全に飛んでいる。

僕には物理攻撃防御(アンチフィジカル)の能力があるけど、

ボディに強烈な一撃を食らったようなダメージが残っているのは何故だろう。

何が起こったのかアンに聞くことは絶対に出来ない。


それは怖いから。

怖すぎるからだ。


ただ朝になってから気がついたことがある。

こんなことなら下層の安宿「踊る子豚亭」まで、

僕が空間移転(テレポート)すればよかったという事を・・・



日の出とともに開門となる聖者の墓所への城門。

まだ夜が明けやらぬ中、僕たちは宿を出発した。

朝食を食べる習慣がないこちらの世界だが、

今日も一日歩き続けることになる。

アンがポシェットから、

パンと屋台で買った燻製肉を取り出してくれた。

アンも僕と一緒の生活で、

朝食の習慣にはすっかり馴染んでくれたようだ。

僕が指示をしなくても3人分の朝食を準備してくれる。

その所作を見る限り、昨夜の件をまだ根に持っている感じには見受けられなかった。

ペトラも寝ぼけた僕に、

尻尾をもてあそばれていた事には気が付いていないようが、

その事をペトラに聞く訳にはいかない。

アンがまた焼きもちを焼くかもしれないからだ。

今日はペトラとばかり話をするなんてことは無いようにしよう。

まさかアンがあんなに焼きもちを焼くとは思いもしなかった。

兎にも角にも、年頃の女の子というのは難しいものである。


宿から歩く事30分。

ようやく城門が見えてきた。

日の出とともに開門となると聞いていたけど、

その重々しい門は固く閉ざされている。

僕たちが検問所を訪れると、

中にいる憲兵たちはなにやら慌ただしい様子だった。


「すいません、聖者の墓所まで行きたいんですけど・・・」


「すまんがちょっと取り込み中だ。少し待っててくれ」


初老に差し掛かる白髪交じりの衛士が、

検問所の奥にある待合所のような部屋を指さしてくれた。

その部屋には4人の先客が開門を待っていた。

ぱっと見た目が20代前半の冒険者のパーティーのように見える。

ギルドが定期的にアンデットの駆除を行っていると聞いているが、

そのクエイストを契約した人たちなのだろうか。


「・・・お前たちも墓所に行くか?」


金髪のスケールメイルに身を包んでいるイケメンが、

僕に話をかけてきた。


「ええ、聖者の墓所の聖堂を見学に・・・」


そう答えると、彼らは顔を見合わせて大笑いする。


「いや、悪い悪い。まさかこんな状況の時に物見遊山のバカがいるとは思わなくてな」


否定は出来ないけど、

初対面の人に向かってバカとは無いだろう。

アンとペトラも怪訝そうな顔色を浮かべている。

けれど、ここで反論してもいいことなどひとつも無い。


「勉強不足で申し訳ありません。この状況ってどんな事になってるのか、教えていただけませんか?」


白のローブを着た銀髪の魔導士、

すさまじく戦闘力(バスト)がでかい女性が答えてくれた。

あなたにだけ部分的な聖鑑定してもいいだろうか。


「この1ヵ月で冒険者の多くが行方不明になっているのよ。私たちはギルドからのクエストを受けて調査に来たの」


「行方不明って、墓所には隠れられそうな場所ってあるんですか」


「聖堂のある場所までは草原が続いているわ。ところどころ岩が飛びたしてはいるけど、そんな何人も隠れられそうな場所がないのよ」


「それで検問所が騒がしいんですかね」


イケメンが面倒くさそうに話す。


「・・・昨日30名の調査隊、聖都の行政府の役人ご一行様だが、日暮れの閉門まで帰ってこなかったらしい。そっちも俺たちと同じ調査だったらしいがな。聖騎士が6名、魔導士が6名、戦士が16名の編成だからな。このメンツで全滅なんか考えられん。もしそうだとすれば、俺達だってヤバイからな」


「という状況だから、社会見学にはお勧めできないって訳ね」


まさかその聖騎士の中に、

サテラさんが含まれているって事は無いのだろうか。

僕の隷属契約はまだ生きているということは、

サテラさんが死んではいないという証明なのだが、

一抹の不安が頭の中を(よぎ)ってしまう。


「・・・それじゃ完全に閉鎖って訳無じゃないんですね」


「おい、話を聞いていたのか。開門されてもどういう状態なのか分からんのだぞ。異常事態(イレギュラー)の可能性もある」


「キミ、レベル16じゃここのアンデット駆除も大変だよ。悪い事言わないから」


このおっぱ・・・もとい、お姉さんも鑑定持ちか。

表面の情報ばかりで判断すると痛い目に合う。

これは自分への戒めでもあるな。


「ご心配ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。こう見えても僕たちはクリシュナイ伯の直属ですから」


クリシュナイ伯の名前を出したのは、

この人たちに虎の威を借りて煩わしい説明を省きたかったのだ。

まさか僕がレベル216だなんて言えるわけがないのだから。

でもそれは逆効果であったようで、

かえって彼らの興味をそそる結果となってしまった。


正確にはクリシュナイ伯の直属の部下、

サテラ・ベンツピルスの奴隷なんだけどね。

東村山農業大学を東大と略したのと同じレベルだろう。

罪悪感はまったく無い。


「それではこれから開門する。ここから先は全て自己責任となる。その勇気を示すものだけが門を潜ることを認めよう」



ようやく僕の最初の目的地、

聖者の墓所への扉が開いた。











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