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3Dプリンターで異世界調査はじめました!  作者: しゅーる君
調査報告書②
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調査報告書② 交渉はストレートにいきましょう

「・・・冗談は顔だけにしな」


この世界で東洋系の顔立ちって、

いまのところは僕だけしか見たことが無い。

もしかしてこの容姿というのは、

この世界では美的感覚的によろしくないという事か?


・・・まぁ、この際容姿の事はいいだろう。

今回の目的は別のところにある。


金獅子亭でも踊る子豚亭でも、

給仕の女の子はみな子供だった。

給仕の仕事は安い賃金の上、

大体が身分も最底辺の環境にある家庭の子供たちが、

その仕事を担っているとサテラさんから聞いていた。


しかしながら、賃金が安くても、

衣食住の保証は受けるため、

身寄りのない子ども達には人気の商売らしい。


マーサさんの宿にも給仕の子がいたらしいが、

領主への貢納が不足した年に、

親と一緒にどこかの工業都市に引っ越したらしい。

労働奴隷として貢納分の不足に対する見せしめという事だった。


「いつからボーズは人材あっせん業者になったんだい」


「ははっ、斡旋業者じゃないんですけどね」


営業の先輩から、

交渉術の極意について色々学ぶことがあった。

多くは先輩の経験則からの享受であり、

ほとんどが役に立たないものばかり。

でもひとつだけ、大いに共感できるものがあった。


【ここ一番の大勝負はシンプルに行け】


というものだ。

交渉術には技と駆け引きがある。

魔法もそうだし剣術だって同じなのだろう。


マーサさんのように、

百戦錬磨のつわものに、

僕なんかの技と駆け引きなど通用するはずもなく、

下層での出来事と、スリまがいのような事をして生き延びている子供たちの事。

そして誇張や詐称は一切なしの僕の思いの丈をぶつけてみた。



「・・・やれやれだよ、まったく」


「マーサさんには迷惑ばかりかけて悪いと思ってるよ」


「3人までだ」


「それじゃ・・・」


「うちが3人。よろずや屋と鍛冶屋、教会にも1人ずつ頼むとしようかね」


「ありがとう、マーサさん!」


「おっと、勘違いするんじゃないよ。この村は若いヤツが欲しいから受け入れるんだ。かといって、聖都中の孤児を押し付けられても迷惑なこった。もうこれ以上は受け入れられないってのが条件だ。まぁ、他の連中が受け入れるとなれば話は別になるがね」


目を合わせるとアンも自分の事のように喜んでいる。


「ただその孤児たちの移動はどうやるつもりなんだ。市民権も滞在許可もない子ども達だろう。城門で憲兵に見つかったら今度こそ最底辺の奴隷になっちまうよ・・・」


「ああ、そのことか。それは大丈夫。ちゃんと考えてるよ。それよりいつから連れてくればいい?」


「そうだね。この村は人手はいくらでも必要だ。まだまだ魔族に壊された建物の建設は終わらないからね。明日にでもといいたいところだよ」


「それじゃ明日からお願いできるかな」


「聖都に戻るだけでも1週間はかかるだろう」


ふふっと思わず笑みを浮かべ、

マーサさんの目の前でアンと手を繋ぎこう唱えた。


空間移転(テレポート)


マーサさんの視界から、

急に僕たちが消えている頃だろう。

僕には魔法複写(マジックコピー)というギフトがある。

一度見た魔法は無詠唱で真似をすることが出来る能力だ。

こんなスキルはレア中のレアであることは間違いない。

世の中にありふれているなら、魔法学院なんてものは存在さえしていない事だろう。

祠堂で兄さんが現れた時、一度見た事の無い場所に連れていかれたのだが、

この魔法による移転のようだった。

それに時間停止(タイムストップ)なる魔法もあるのだが、

これを使うと、僕の邪な妄想が暴走して魔道に落ちる手助けになりそうで絶対に使えない。

例えば、時間が停止しているすきに、

女性用の風呂場に侵入したり、

可愛い女の子に、あんなことやこんなことなどやりたい放題。

とにかくよほどのことが無い限り、

この魔法は封印しようと心に決めている。


その他に、マーサさんが厨房で使っていた、

火球(ファイヤーボール)」に魔族と戦ったときの「火弾(フィヤーショット)」、

サテラさんの「氷槍(アイスランス)」や「雷撃(サンダーボルト)」なんかも使える。

まだ使用したことは無いけど。


とにかく、子供たち安全に、

しかもマーサさん達に迷惑をかけないよう移送するには、

この「空間移転(テレポート)」の魔法がもっとも効果的だと思われた。

子供たちを受け入れてくれるマーサさんの大きなに心に、

この魔法を秘密にしておくという事は、

少し失礼な気がした訳で。

交渉事はシンプルでありたいからね。


「おかえりなさいませ、ボーズ様。いつお戻りでしたでしょうか?」


下層にある安宿、踊る子豚亭で借りている部屋から、

突然僕たちが部屋の中から出て来たものだから、

ここの女将さんが驚いた顔で僕たちを見つめる。

この魔法は移動したいときはどこからでも魔法が発動できるものの、

移動する先については融通が利かないことが欠点である。

もしかして移転先を決定する呪文ややり方があるのかもしれないが、

取説がないコピー魔法が故に、

いまひとつ詳しいところが分からない。

一度に運べる人数も分からないから、

慎重に対応しなくちゃいけない訳で・・・


転移したら、一緒に付いてきたのは手だけでした。

ってな事だけは絶対に避けなければいけない。

今のところ、入り口はどこからでもいいのだが、

出口は、マーサさんの村近くの「ゲート」の前、

祠堂の祭壇の前、そして前日僕が眠った場所の3つしかない。

実験で突然祠堂にでちゃったときは驚いた。

誰もいなかったから助かったけど、

何重の魔法による結界が巡らされていた聖域の中の重要拠点。

侵入者である訳だから、聖域を守護する魔法探知能力者は、

何者かが侵入したって気がついたかもしれない。

まぁ、そのあと会ったエリザベスさんが何も問い詰めなかったことで、

すっとぼけて見せたのだったが・・・


「それじゃ、アン。明日の朝、あの子たちを連れて再出発だ」


マーサさんには、黒くてかたい黒パンばゃない、

聖都の焼き立てのパンをお土産に持っていこう。



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