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3Dプリンターで異世界調査はじめました!  作者: しゅーる君
調査報告書②
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調査報告書② ミイラ取りがミイラになりました 

ずる賢い大人が、

幼気な子供たちを使ってスリを命じている。

そんな思い込みがあったせいか、

目の前で腰を抜かしている少女の姿に、

こちらとしても驚きは隠せなかった。


僕の指に込められた魔素(マナ)の量を感じ取るあたり、

この子が鑑定持ちの指示役であり、

魔力探知能力も秀でているのだろう。

思わず窓の外から飛び込んできたが、

この部屋は2階にある訳で・・・

突然入り込んできた何者かが、

とんでもない魔法を突き付ける。

ちょっとこれは可哀そうな状況なのかもしれない。



「・・・キミが黒幕ってことでいいのかな」


大人であれば、憲兵に突き出しても良かったのだが、

この黒幕も年端のいかない子供である。

将来ある身としては事を荒立てるつもりは無いので、

指先に集約した魔素をカラダの奥底へと戻しておく。


「ごっ、ごめんなさい、ごめんなさい!!」


ウェーブのかかるショートカットに、

栗色の髪が慌ただしく揺れている。

その髪の毛の間から、少し奇妙なものが飛び出していた。


「・・・猫耳?」


【マスター、どうやら亜人(デミヒューマン)猫人(キャットピープル)のようです】


へぇ。

獣人の若い女の子は初めて見た。

これまで街ですれ違う人ごみの中に、

幾人かの亜人はみかけてはいた。

いずれも男であり、労働層といえば聞こえがいいけど、

おそらく奴隷の身分と思われた。


マーサさんの村にも髪の毛に隠れてよく見えなかったけど、

獣人だと思われる老人たちは複数いた。

みんな白髪頭にしわくちゃな顔となれば、

獣人でも人間でもエルフでも、

みんな大差なく年寄りという種族になるから気にならかった。


この子の耳も、普段髪の毛で隠されているのであれば、

普通の女の子と区別することは難しいのかもしれない。

尻尾ってどうなっているのだろう。

まさか履いているカートをめくる訳にはいかないのだが、

これも調査なら致し方ないか。

ちょっと拝見いたしますよ・・・


【マスター、イエローカード1枚です。2枚で退場です】


「冗談だよ、冗談・・・」


エミリーに、思考が常に覗かれ放題だという事を忘れていた。

いつか思考を読まれないような魔法を手に入れなくてはいけない。


「・・・とりあえず、理由を聞いてもいいかい」


しゃがみ込んでいる女の子に手を差し伸べたのだが・・・


「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」


下の階から叫び声を聞きつけたのか、

階段を上ってい来る複数の足音が聞こえる。

あれ、この状況だと二階の窓から侵入した、

僕が不審者扱いになるのではなかろうか・・・


「とっ、とにかくもうこんな事しちゃダメだぞ」


慌てて2階の窓から脱出する。

大通りの人目が気になるが、

部屋に入り込んだ変質者扱いより、

二階から降ってきた不審者扱いのほうが少しはマシだ。


【マスター、不審者と変質者のどのあたりがましゆなのかご説明ください】


「少し黙っていてくれ」


階下では、アンが二階を見上げていたが、

彼女をこのまま放置できないので、

右肩に担ぎ上げて大急ぎで走り出す。

これじゃ変質者から不審者、そして人さらいと、

犯罪者の階段を確実に上っているように見えるが、

そんな事考えるより、

早くこの場を立ち去る方を優先すべきだろう。


しかし、黒幕の正体があんな若い女の子だったとは、

まったくもって驚きだ。

落ちないようにガッチリつかんだアンの腰が、

妙に柔らかくてくびれているのも驚きだったが。

よし、ごほうびに少しだけくびれているところを触ってやろう。



【マスター、2枚目のイエローカードは退場ですよ】


「うるさい、今はそんな状況じゃないだろう!」


猛烈な勢いで、人ごみを縫うように走り去り、

路地を何度も曲がりくねったところで足を止めた。


「・・・ここはどこだ?」


息が上がり呼吸が苦しい。

レベルが上昇しているのに、

こういうトラブル下では、

その恩恵が伝わってこない。

兄さんからは「魂の器」を成長させろと言われたっけ。

エンジンに見合う器でなければこの能力は発揮できないのだろう。


「ごっ、ご主人様、苦しいです・・・」


肩の上でアンが声を絞り出す。

彼女にしても、二階での出来事が分からなかっただろうから、

突然飛び降りてきた僕に抱えられて逃げ出すことは不可解な事だろう。

さっきまでは被害者の立場だったのだから無理はない。


「・・・ごめん、アン。今おろすから」


優しく彼女を地面に下ろすと、

路地の奥から小さい男の子が近づいてきた。


「・・・これ返す」


差し出された掌には銅貨が1枚。


「ああ、さっきの子か。それは僕のサイフを返してくれたキミへのプレゼントだ」


よかれと思って渡したものだったが、

彼にとっては随分プライドを傷つかせる行為だったようだ。

眉をひそめ、キッと僕を睨め付ける。


「ふざけんな、施しは迷惑だって言ってんだよ!」


10才くらいの男の子は、見た目は裕福層の子供のように見受けられる身なりだった。

いかにもな風貌の子供であれば、誰だってスリを警戒するだろう。

そういう意味で、これは彼らの作業着なのだ。

身分証明や滞在許可のメダルを持っていない者は、

罰金の即時納付が出来なければ、年齢にかかわらず犯罪奴隷が確定だ。

大人の犯罪奴隷のように、鉱山や戦場の最前線送りという事はないようだが、

その身分から脱出することは不可能に近いものとなるらしい。


「気に障ったのなら謝るけど、それはキミも同じなんじゃないか」


「ふん、捕まったら捕まったさ。俺の腕が悪かったってだけだ」


「でも、キミに指示を出した女の子の責任はどうなるんだ。もしかしてキミの姉さんなのかい?」


「なっ、姉ちゃんに会ったのか。まさか憲兵に突き出しちゃいねぇだろうな!!」


やはり、この子とさっきの女の子は繋がっていたか。

レベル1に見える僕のステータスって、

よっぽど美味しいカモに見えるのだろう。


「どうだろうね。そんなにあの子の事が心配なのかい?」


「当たり前だ、姉ちゃんに何かしやがったら、てめぇをぶっ殺すかんな!!」


「それは怖いな。それじゃこういうのはどうだい。姉さんに合わせてやるから僕たちに付いてくるってのは。もっともキミにその勇気があればなんだけど」


「おう、どこにでもついて行ってやらぁ!」


この子の頭をじっくり観察したけど、

猫耳のようなものは付いていない。

もちろん尻尾も確認できない。

おそらくだけど、あの女の子の事を「姉ちゃん」とは言ってるのだけど、

血のつながりは無いんじゃないかと思う。


とにかくスリの子供を連行しました。






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