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3Dプリンターで異世界調査はじめました!  作者: しゅーる君
調査報告書②
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調査報告書② 下層の治安を調べます

ウォールカルラの城門を出て、下層の街に出る。

時計でいうと、6時の方角から9時を経由して11時の方向に向かうのだが、

東周りはスラム街のようなエリアがあり治安もすこぶる悪いらしい。

職人や工場で雇われている奴隷たちの居住区のようだった。

正規の手続きを踏んでいない入城者もいるみたいだが、

誰もその実態を知るものはない。


西周りは一般市民でも比較的裕福層が暮らしている地区らしく、

比較的治安は良いとの話なのだが、

北東方向にある「聖者の墓所」までは退部遠回りとなってしまう。

さて、どちらを選ぶか・・・というより、

西周りを選ぶしかないだろうな。


そのまえに、僕にはちょっとした実験を行おうと思っている。

僕のギフト、つまり固有能力(ユニークスキル)である、

本物の偽物(トュルーフェイク)を発動させて城門をでできている。

今僕のステータスはレベル1と表示されている。

属性は火属性1つだけ。

ギフトや魔法は空欄にしている。


この1か月間、仕事で何回か下層に来たことはあるのだけれど、

一度もスリの被害にあったことは無かった。

そういえば、サテラさんがスリからサイフを取り返してくれた時は、

僕のレベルは1に見えていたはずだ。

成人の窃盗罪は重罪であり、

犯罪奴隷として厳しい罰がまっていると聞いた。

しかしながら、身寄りのない子供たちを使ってスリや窃盗を指示する、

元の世界の特殊詐欺のような犯罪集団がいるようなのだ。


僕にぶつかってサイフをスった子は10才くらいの子供だった。

人のレベルを測る鑑定スキルを持つ大人が、

ターゲットを見つけて、指示を出しているのだとすれば、

レベル1という僕のステータスを読み取って、

必ずやカモと判断するだろう。


子供たちをどうのこうのすることは考えてはいないのだが、

その指示を出す汚い大人は許せそうにもない。

ギフトとスキルと魔法。それらすべての訓練。

そして下層の治安の実地調査を行ってみたい。


「アン、ちょっと僕から1mくらい離れて付いて来てくれ」


不思議そうなアンをよそに、

僕は振り向くことなく前をすすむ。

ちょっとした実証実験となるのだが、

僕が持っているのは、ポケットにお金の入った革袋ひとつだけ。

ショートソードやその他の荷物はべ全部アンがもってくれている。

もちろん大荷物をアンに背負わせているなんてことは無い。

彼女の固有能力(ユニークスキル)妖精の小箱(フェアリーボックス)のすごい力による恩恵だ。

アンが常に身に着けていたポシェット。

中身が何もなかったように見えたのだけど、

アンがポシェットに手を入れると、

必要なものだけが取り出せるという、

いわば四次元ポケットのような能力だった。

このポシェットだけが使える能力という制約は無いようなのだが、

いまのところ、収納したものを必ず取り出せるのは、

あのポシェットだけらしい。

間口が狭い分、大きな荷物は格納できないのが珠に傷だが、

秘密が多い僕たちには、強力な能力なのだ。



「・・・早速お出ましだ。エミリー、鑑定スキルを使ったヤツをマークしててくれ」


【了解。目標マーク完了。追跡モードスタンバイ】


屋台が連なる人通りの多い大通り。

屋台の合間の路地から急に子供が飛び出してきた。


どんっ。


「あっと、ごめんよ・・・」


「ちょっと待った。キミ、それは僕のサイフだ」


不意につかまれた左手首。

右手には僕の革袋が掴まれていた。

まぁ、中にはたいした金額が入っている訳ではない。

実験が失敗する可能性だってあるのだから、

中身は小銅貨ばかりで子供の小遣い程度にしかならない。


そんなことより、僕はどうしても突き止めたいことがある。

鑑定スキルを使用して、こんな子供に危ない橋を渡らしている黒幕の存在。

掴んだ子供から革袋を取り返し代わりに銅貨1枚を握らせる。

そしてある方向に向けて走り出した。

レベル216の身体能力。

誰の目にも止まらぬ速さ・・・といいたいところなのだが、

実のところ、身体能力的にレベル216を実感できるような事はあまりなかった。

エフワンのエンジンを三輪車のシャーシに乗せているという感じなのか、

なにやらバランスが悪くてその圧倒的なポテンシャルを発揮することは出来ないでいた。

でも、カラダのシンクロ率が上がったおかげで、

魔素(マナ)のコントロールはなんとなくわかってきた。

レベルが上がったから強くなるのではなく、

強くなったからレベルが上がるという観点から言えば、

今の僕は魔素(マナ)と魔法の力のみでレベル216となっているのかもしれない。


そんな今の状態でも、普通の人よりは何倍も早く動けるようだし、

魔力探知(マナソナー)の能力で、黒幕だと思われるヤツの位置も特定している。

あの建物の2階にそいつは隠れている。

きっと実行犯が失敗しているのは確認していただろう。

部屋から逃げるつもりなのだろうが、逃がすつもりは毛頭ない。

見ず知らずの家に玄関から堂々と踏み込むのは忍びないので、

空いている2階の窓から失礼する。

その程度の跳躍力くらいは今の僕でもできることだった。


【マスター、目標が逃走を始めようとしています】


そんなことさせるわけにはいかない。


「・・・動くな。キミには聞きたいことがある」


窓から部屋に飛び込むと、

黒幕より先に部屋の出口に背を向けた。

フード付きの黒いローブを着こんでいる為、

顔が良くわからないが、随分小柄な指示役である。

こいつにあの子供たちがスリや窃盗を強要されていたのかと思うと、

思いっきり殴りたくなる衝動に駆られる。

こいつには鑑定のギフトがあるのだ。

魔法の心得も多少はあるだろう。

警告の意味を込めて、右手の指先4本に魔素を凝縮して練りこんでみた。

すると抵抗することなくヘナヘナとその場にしゃがみ込んだ。

この世のものとは思えない恐怖を頬に浮辺ているところを見ると、

魔法の心得どころか魔法の探知能力も十分備えている手練れなのか。


「抵抗したり逃げ出したりすればこれをぶち込む」


ふっ、我ながら格好をつけた。

刑事ドラマを見すぎたかもしれないが、

いちどこんなセリフを言ってみたかったんだよねぇ。

まぁ、レベル216の魔法である。

相当怖い思いをしているみたいだが、

これも自分の行いによるところなのだから、

大いに罪を反省してもらわなければいけない。


「ひっ、こっこっこっ、殺さないでぇ!」


ローブのフードがずり落ちた。

恐怖に引きつるその黒幕は、

僕とアンと同じくらいの女の子だった。





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