調査報告書① 能力を鑑定してみましょう
「今夜のおススメは赤ウナギのパイとユールフィンカだよ!」
お金をもらって入浴できたことがよほど嬉しかったのか、
ネラちゃんのご機嫌は最高潮だった。
ウナギのパイ包は生地がちょっと堅めなのが残念なのだが、
ウナギ特有の濃厚な旨味と油がパイ生地染み込んで程よく調和している。
うーん、これならワインによく合いそうだ。
個人的には白ワインが好きなのだが、
こちらの世界でまだ白ワインはお目にかかれていない。
ネラちゃんに白ワインと言ったらヘンな顔をされてしまった。
もしかして赤ワインしか存在していないのかもしれなけど、
そういうところも調査の対象としたいものだ。
ワインの蔵元の見学も楽しそうだ。
アンはウナギを知らなかったらしいが、
濃厚な旨味に頬を緩ませているのだから、
ウナギの姿形はだまっておいてやろう。
聖都にたどり着く前に、道端で見かけた蛇に気絶するくらい驚いていた。
入浴したばかりで汚れる羽目になるのはあまりにも可愛そうである。
アンには昨晩よりずっと薄めたミード酒のソーダ割を頼んだのだが、
さすがに今朝の失敗が頭にあるのか、
今日はちびちびと口をつけるだけのようだ。
もしかして、本当に寝込みを襲われると警戒しているのだろうか。
そんな事は絶対にありえない・・・たぶん。
「このユールフィンカってなんだい?」
「塩漬けしたハムを茹でて外側にパン粉をまぶしたオーブン焼きだよ。マスタードを付けて食べるとお酒がすすんじゃうから♪」
「それじゃ、もう一杯ワインをもらおうかな」
「かしこまりぃ。それとボーズさん」
「なんだい」
「酔った勢いでアンを襲わないでね。アンの純潔を奪ったらサテラ様に言いつけちゃうから」
言いつけられる前に死ぬことになっている。
裸の付き合いとはよく言ったもので、
ほんの2時間程度一緒にいただけで、
アンとネラちゃんはすっかり意気投合している。
アンの身の上は知っての通りなのだが、
ネラちゃんだってこの年で働いている訳で。
決して裕福層に生を受けているわけではないのだろう。
それに奴隷制度が当然の社会構造というのもどうなのだろう。
元の世界には無かった魔法と魔素。
そして魔石の活用技術。
それらをもってしても平等な社会が成立していないなんて、
きっと兄さんが勇者なんて呼ばれているきっかけになったのも、
そこらへんが原因なんじゃないのか。
優しさだけなら日本一、いや世界一のバカ兄貴だもんな。
このちょっと酸っぱいっパンにユールフィンカを乗せて食べると、
なんだか日本で食べた某サンドウィッチ店の味と似ているような気がして、
なんだか元の世界に帰りたくなってしまう。
今までも帰りたいと愚痴をこぼして見せたことはあったんのだけど、
兄さんに会った事が本当に帰りたいという気持ちにさせているのかもしれない。
部屋に戻ると今夜も同じ部屋でアンと二人きり。
サテラさんにもネラちゃんからも釘を刺されている手前、
アンも気まずい思いをしているのかもしれない。
僕が酔いつぶれて寝入ったふりをすれば、
彼女も安心して眠りにつくことが出来るだろう。
さすがに僕はあんなことがあった後であり、
どんなにお酒が入ろうが、なかなか眠りにつくことなどできないんだ。
となりのベットでアンが眠りについたのを確認して、
兄さんの言ってた事を検証することにした。
「マスターご指示の通り準備整いました」
「ああ、それじゃ始めようか」
【聖鑑定】
兄さんが僕に託したギフトのひとつ。
魔法複製を発動した。
一度みた魔法が使用できるという反則級の能力なのだが、
サテラさんの鑑定より高度なエリザベスさんの聖鑑定を見ていたことは幸運だった。
これを自分に使用することで、今の僕がどのようなステータスなのかを確認することが出来る。
さっきの聖鑑定のステータスは、
おそらく兄さんが本物の偽物の能力で書き換えたものだろう。
僕が持っている羊皮紙に偽物ではない真実のステータスが上書きされるのか。
そして魔法のコピーが発動されるのか。
この二点の検証と、僕のカラダに流れる魔素のバイタルチェックの実験だ。
僕のカラダを光の輪が通過していくと、
羊皮紙に書かれた文字情報が変化していく。
「すごい、聖鑑定使えちゃったよ・・・」
羊皮紙を見ると、書ききれんばかりの文字が溢れていた。
必然的に文字も小さく、とてもこの暗い部屋で文字を読むことが出来ない。
「マスター、視覚モード切り替えます。羊皮紙の文字情報をモノリスのディスプレイに転写いたしますので、そちらをご覧ください」
【聖鑑定】
氏名:ボーズ
レベル:216
性別:男性
年齢:15才
種族:ヒューマンのアバター
属性:火★水★風★土★聖★闇★
魔法:取得した魔法の無詠唱
:召喚魔法(眷属召喚)
ギフト:偽物報告 アンチ鑑定能力
:限界突破 緊急時魔法効力の最大化
:自動追尾 魔法発動後の自動コントロール
:魔法複製 発動された魔法の複写使用
:真実の偽物 ステータスの隠蔽と詐称
:絶対魔法防御 対魔法攻撃の無効化
:物理攻撃防御 物理攻撃の99%ダメージ軽減
:耐性異常 物理魔法攻撃の付与効果無効
:魔素探知 魔力・魔素の感知・索敵・検索機能
:非表示
:非表示
:非表示
:非表示
所属:サテラ・ベンツピルスの奴隷
称号:聖魔の雛
「・・・正直レベルは16よりもう少し高いかなって思ってたけど216って滅茶苦茶だな」
「マスター、人の最高到達レベルは勇者ダイドージの100だとされております。その倍以上のレベルはこの世界の人々には受け入れがたい数値だと推測いたします」
「まぁ、僕は人とは呼べなないのかもしれないけどね。兄さんと会ったあと、あんなに恐ろしく見えてたクリシュナイ伯達が、そんなに怖い人たちに見えなくなってたからさ。棚橋研究員の疑似血液を除去してもらったおかげなのかな。今度会ったら棚橋研究員を殴ってやろうと思う・・・」
「ギフトの他、多数のスキルが存在しておりますが、どのような効果を発揮するのかは不明です」
「まぁ、無かったものとしてちょっとずつ試していくよ」
「ドクター大道寺から、ナビゲーションシステムのアップデートも実行されております。データベースに関わるものが多いのですが、その中で特に注目すべき能力がございます」
「へぇ。エミリーもレベルアップしてるんだ。黒いモノリスじゃなくて可愛い女の子として目の前に出現してくれるといいんだけどな」
「それはバージョンアップ前から可能な能力です」
「えっ、そうだったの!?」
「・・・このクズが」
「おい、今僕に失礼な事言わなかったか?」
「新しい能力というのは・・・」
流しやがった。
「自動運転機能です」
「どんな能力なんだよ。馬車を自動操車できる能力なのか?」
「いえ、マスターに変わり、私エミリーがカラダを動かせる能力です。例えば戦闘時における運動機能・戦闘スキルの委譲です。基本的にマスターの承認を必要としますが、マスターの意識がなくなった場合等例外もあるようです」
「それはありがたい。腕にはまったく覚えがないからな」
「威張らないでください。その外にも・・・」
「ちょっとまった。僕とエミリーの能力は後からじっくり話し合おう。それより先にやらなくちゃいけないことがあるんだ」
【聖鑑定】
光の輪がアンのカラダを包み込んでいった。




