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3Dプリンターで異世界調査はじめました!  作者: しゅーる君
調査報告書①
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調査報告書① 恐悦至極に存じます

ウォールキビオリから聖域に入れる城門はひとつしかない。

門から絶対聖域までは行政区が連なっているらしいが、

建物はすべて世界遺産級の荘厳さがある巨大な石造りである。

聖都は前身である王国時代を含め、1000年の歴史があると聞く。

これだけの建設技術を有していれば、

科学技術だって地球のそれに追いつくのも、

遠い未来ではないのだろうな。


荘厳な建物群にあって、一際輝く尖塔が聳える建物があった。

そこが聖都の核心部である大聖堂。

この国の叡知の頂点が集う場所である。

僕たちが到着すると、門番と思われる盾を持つ衛兵が僕たちの身分を問い合わせる。

ここでも魔法具による検査を受けたのだが、サテラさんの名前を確認すると、

態度が一変し、丁重な応対で中に入るように促された。

サテラさんの身分って、僕が考えてるよりも、

ずっと高いところにあるのかもしれない。


荘厳な建物の重厚な扉が開かれると、

神を祀る建物らしく、金銀で飾られているわけではないが、

なんとも言えない威厳のある空間が広がっていた。

天井を見上げれば、ドーム型の壁一面に、

戦いの様子が描かれている圧巻のフレスコ画がそこにはあった。

もとの世界でいうところの「最後の審判」のようなのだろうか。


「・・・1000年前、大魔王と戦った勇者様の聖戦図だよ」


サテラさんが説明する傍らで、

アンが力強く頷いているところを見れば、

この国の人ならば誰でも知っている勇者譚といったところなのだろう。

詳しく話を聞きたかったが、今はそんな場合じゃない。


エントランスの奥に大回廊が続いていた。

回廊の先に何があるのかが見えない。

それだけこの回廊が長いという事なのだが、

どれだけの労力と技術力があればこんな建築物わ造ることが出来るのだろう。

サラリーマン時代に営業で担当していたゼネコンのパワハラ課長を思い出す。

「うちの会社は建物じゃない。文化を創っているんだ。うちに造れないものは無い」

なんて傲慢な事を言ってたっけ。

これを見せてあげられるのなら、

間違いなく腰抜かす事だろうな。


回廊を支える円柱には、

さきほどの勇者譚のレリーフが刻まれており、

そのひとつひとつに伝説があるのだという。


「これは勇者様がはじめてこの世界に降臨した時の話だよ・・・」


この世界には8柱の神様がいたのだが、

そのうちの1柱が2000年前、突然として他の神々に戦いを仕掛けたらしい。

武を司る神と魔法を司る神は、奇襲を受けたため攻撃の第一波で消滅した。

残るは火・地・水・風を司る神々と竜神と言われる生命の神。

竜神は何事にも中立であり、智の神の反乱に対しても無関心だった。

戦いを得意としていなかった4柱は、互いを1柱の神と創造し、

異世界から勇者を召喚したというのがこの世界の勇者譚だった。

その戦いの結末というのはレリーフでは見て取れる事が無かったのだが、

そこは聖典などで熱く語られるべきクライマックスなのだろう。



「さてと、ようやく見えてきたよ。あれがキミ達の目的地、聖パルティスキ大祠堂(だいしどう)だよ」


大きなドーム状の建物の中に、

コバルトブルーの三角屋根を持つ、

石壁の小さい教会のような建物が見える。

大祠堂(だいしどう)という割には、

うちの田舎のじいちゃんの茅葺屋根の曲家と大して変わらない大きさだ。

むしろじいちゃんの家の方が大きいかもしれない。


「・・・いまちょっと馬鹿にしたでしょ?」


しゃべれない僕は全力で首を振り否定する。

となりでアンも同じことをしているが、

アンだってこんな大規模な建物の中に、

田舎の教会のようなものが建っているとは思わなかったはずだ。


「ごめん、しゃべるなと言ってたね。私も初めてこの建物を見た時はなんだこりゃって思っちゃったもの」


笑いが込み上げるサテラさん。

やっぱりこの人は聖騎士の凛々しい姿より、

笑ってくれる瞬間がいい。


「でもね。ここが聖域では智の頂点にあるのは間違いないの。大丈夫だよ、そんなに緊張しないで。絶対に悪いようにはしないから」


悪いようにはしない。

言い換えれば、悪くはないが良くもないと聞こえるんだよなぁ。

まぁ、推理小説はならずと言っていいほど、ミスリードに引っかかる。

騙されたのなら騙されたのだが、ここにはアンが一緒にいるのだ。

僕一人が逃げ出す訳にはいかない。


【マスター、全力でサポートしますが、次に緊急脱出を決断する事態は、私が判断を下しますのでご了承ください】


【ああ、分かってるよエミリー】


入口の扉の向こうに待ち受けていたのは、

20才くらいの男女二人が聖壇に並んだ長椅子に腰掛けていた。

大賢者さんのお付きの人なのだろうか。

お偉いさんなのだから、警護の人などが沢山いても驚きはしなかったのだが、

若い男女が二人きりというのも、なんだか拍子抜けである。

まぁ、女の人はぱっとみだけど、

戦闘力(バスト)は高そうだし容姿も年齢もストライクゾーン。

サテラさんという心の1番手がいなかったら、

迷わず電話番号を聞ぎだしたくなるハイスペックな女性である。


「猊下、お久しゅうございます・・・」


サテラさんが若いお姉ちぉんに向けて片膝をついて会釈する。


「大きくなりましたねサテラ。その子たちがサテラの願う子たちね」


「此度のサテラの働きは大変立派なものでしたぞ」


「クリシュナイ伯様、恐悦至極に存じます」


若いお兄ちゃんに頭を下げるサテラさん。

クリシュナイ伯って、確かマーサさんが

「まだ生きていたのかあのじじい」

って言ってた人だよな。

どう見ても20才そこそこの、

ひ弱な兄ちゃんにしか見えないのだけれど・・・


とにかくこの場にサテラさんの上司がいて、

仕事ぶりを褒めているって事は、

サテラさんがあの村にいたのは偶然ではなく、

僕を見つける事を目的として行動していたって事なのか?

まさか、アンが目的ってことは無いよな。



もしそうであれば僕がアンの奴隷になろう。






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