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3Dプリンターで異世界調査はじめました!  作者: しゅーる君
調査報告書①
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調査報告書① 上層に到着いたしました

上層の検問所での1キロの道のりで、

僕は3度もスリの被害にあいそうになった。

そのすべてでサテラさんが食い止めてくれたのだけれども、

共通していたのは犯人が全て子供だったというこだった。


大人がスリをして捕まると、

窃盗罪として一発で犯罪奴隷となり、

鉱山での強制労働者となるか国境付近で時折起こる、

他国との小競り合いの際、最前線の軍役が待っているらしい。


だから、リスクとリターンを考えれば、

大人が窃盗の実行犯をするのは少ないのだとか。

それじゃ子供ならば許されるのかと言えば、

現行犯逮捕の場合、市民階級であれば再教育施設での収容となるのだが、

奴隷階級の子供であれば、奴隷市場に引き渡されるようだった。

奴隷なのに奴隷市場とはおもったけれど、

アンがそうだったように、

農奴の下で働く最下級の奴隷などは、

このような境遇の子が多い為、

人として最底辺の扱いとなる。


サテラさんが財布を取り戻してくれるものの、

決して子供たちを捕まえないのは、

そんな背景があるのだろうな。


「言い忘れたけど、ボーズくんのレベルにも問題があるのよ」


「レベル1ってことですか」


「門をくぐったところを、あの子たちの雇い主が「鑑定」のギフトでカモを見つけてるんでしょうね」


「じゃあ、あの子たちは黒幕に雇われた実行犯なんですか?」


「大人の悪いところだわ・・・」


地球で横行していた特殊詐欺事件でも、

黒幕と出し子って役割が分担されていて、

本当に悪い連中のところまでは、

なかなか捜査は及ばないものだ。

異世界でも同じような事が起こっているのは驚きだが、

調査報告すべき事案と考えれば切ない限りである。


「さあ上層の入り口、ウォールカルラが見えてきたよ」


今までの城壁より倍以上の高さがある巨大な城壁が見えてきた。

これまでの城壁は、大きすぎて一直線の壁にしか見えなかったのだが、

このウォールカルラは弧を描く円城である事がわかった。

魔法や魔素(マナ)の事をよく理解していない僕であっても、

この壁が今までの城壁とは全く違う事が理解できた。

それくらい壁が発するなんだかよくわからない

「見えざる力」の存在がビリビリと肌に突き刺ささってくる。


門番の検問も、今までの比ではなかった。

憲兵の数だけではなく、明らかに戦士のような屈強な男たちが混じり、

入門する手続きも「鑑定」ギフト持ちの憲兵による面接ではなく、

紺色の長いローブを纏った文官なのだろうか、

偉そうなお役人が魔法具による人物鑑定を行ってていた。

サテラさんは何の問題もなかったが、

僕の場合、検査官の顔色が急に変わったので、

人工物であると見抜かれたのかとドキっとしたけど、

15才の成人である僕のレベルが1であった為、

なんて使えない奴隷なんだと見下されただけのようだった。

アンの鑑定もお役人の顔色が変わったのだけれども、

目が隠れている長い前髪を強引にかき分けるように顔を眺めてから、

最終的には通行の許可が下りたのだった。

奴隷だとしても、女の子に対してあんな暴力的な振る舞いというのは如何というものなのだろう。

サテラさんも何も言わなかったところを察するに、

役人には逆らわない方がいいということなのだろうか。


とにかく、ようやく目的地の一つ手前の街である聖都上層部に到着だ。

門をくぐると、下層の雰囲気とは一変する。

大通りには店舗や飲み屋のような飲食店が連なっているのだけれど、

屋台の間を、人がごった返すような下層の賑わいとはまったく趣が違っている。

上層の市民権を持つ者だけが許される洗練された都市空間がそこには広がっていた。


下層とは違い、4階建ての住宅が多いのだが、

次の城門であるウォールキビオリまでの約1キロ距離。

下層に近い壁側には4階建ての建物群。

その半ばほどからは、四方を壁で囲まれた1戸建ての居住区が見渡せた。

市民権を持っていても、誰もが同じような生活レベルには無いってことなのだろう。


みとれていた為、ポケットの警戒をおろそかにしていたが、

上着の上から、財布がそこにまだあるって確認することが出来ほっと息をのむ。


「ここは下層より治安がいいから大丈夫だよ」


「でも、警戒を忘れるのは良くない事ですよね」


ふと隣を見れば、

普段ならキョロキョロと挙動不審なアンなのだが、

石のように固くなっていた。

手と足が同時に動いているのが分かった。

見知らぬ世界で緊張しているのは僕だけではないようだ。


それにしても、さっきのスリたちの子はみんな僕の事を狙っていたっけ。

当たり前に考えるなら、男である僕よりもアンの方がカモに見えなかったのだろうか。

それでも僕を狙ったとすれば、もしかしてアンのレベルって僕よりずっと高いのだろうか?

鑑定って便利な魔法が使えないから、

エミリーに頼んで分析(アナライズ)でもしてもらおうか。

しかしながら、エミリーがシステムダウンしていた時に、

勝手に使用した分析(アナライズ)機能のログによって、

サテラさんの3サイズを予想したという事がバレている。

チクチクと嫌味を言われる羽目になった事は記憶に新しい。

まして発展途上のアンを分析(アナライズ)するとなれば、

「人格破綻者」とか「幼女趣味(ロリコン)大将」などと、

あらゆる馬事雑言を並び立ててくるはずだ。


「ついたよ、ここが上層でのボーズくんたちの拠点で使ってもらう宿なの」


大通りの十字路にある「金獅子亭」は、

4階建ての石造りの宿屋である。

1階が食堂兼居酒屋というスタイルは「石の家」と同じなのだが、

なんといっても清潔感がある。

マーサさんには悪いけど、

田舎の民宿と高級ホテルくらいのレベル差がある。

これなら今夜の食事も安心なのだか、

こんなに高そうな宿屋であれば、

かかるお代の方も結構な値段じゃないのかと、

急に不安になってしまう。


「ふふっ、心配しなくても大丈夫。ここの宿のオーナーはベンツピルス家、私の実家が経営している宿なんだよ。だから聖都に滞在している間は宿代は気にしなくてもいいから安心して」


「・・・いいんですか?迷惑かけっぱなしなのに」


「ボーズくんは私の恩人だからね。このくらいの恩は返さないとね」


宿の手続きは全てサテラさんがやってくれた。

受付の従業員がサテラさんを一目見るなり緊張感を漂わせるところを見れば、

サテラさんの実家が経営している宿であるのは間違いないだろう。

ベンツピルス家って有名な事業家なのだろうか。


「それじゃ、ボーズくん。明日は朝9時にウォールキビオリの門の前で待ってて」


「サテラさんは宿に泊まらないんですか?」


「うん、これから聖騎士団に報告・・・というか、顛末書を出す手続きがあるからね。やだなぁ、絶対に怒られるよ・・・」


「僕が御一緒しましょうか?」


「ふふっ、ありがとう。でもこれは私の仕事だから大丈夫だよ。夕飯は食堂で食べてね。通りを西に行くと広場があるんだけど、今日は週末だから蚤の市やってるはず。屋台とかででいるからアンと行ってみれば」


「そうですね。折角ですからちょっと一回りしてみようかな」


「それと、滞在のメダルは肌身離さずだよ。日没までには宿に戻ってね。約束だよ」


「はい、わかりました」


「そうだ、明日はアンも一緒に来てほしいんだ」


「・・・アンもですか?」


「うん、二人でお願いね」


そう言い残し、サテラさんはウォールキビオリに向かっていった。

まぁ、今生の別れではない。

明日の朝にはまた再開できるのだ。

とにかく今はプリンターを部屋に下ろしたら、

この心躍る世界を隅々まで調べつくしてみたいところなのだ。


指定された部屋は4階の角部屋である。

渡されたカギを開けて中に入ると、

真っ白なシーツを纏った大き目なベットが2台。

部屋には今までの宿ではお目にかかれなかった、

暖炉や水回りまで完備されている。

タオルのような清潔な布まで準備されているとは、

なんとも至れり尽くせりなのである。


「おおっ、なんかテンション上がっちゃうよな、アン!」


アンがすっかり固まっている。

先ほどから驚きの連続なのだ、

このリアクションは当然の事なのだろう。


飯を食って水浴びをしたら、

この清潔なベットでぐっすると眠りたいものだ。



「・・・ん?」



まてよ。

今夜はアンと二人きりでこの部屋に寝るのか。

気まずい空気が漂い始める。








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