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3Dプリンターで異世界調査はじめました!  作者: しゅーる君
調査報告書①
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調査報告書① 下層に到着いたしました

第一の城壁ウォールバルカを超え、

第二の城壁ウォールタリンに到着する間、

延々と続く麦畑には驚かされた。

城壁に囲まれた土地に、

人を襲う魔獣のような危険なものはいない。

城壁の上には、ドーム状に空間障壁の結界が巡らされており、

物理的な壁という守りに加え、

魔法で空からの守りも完璧なのだとか。

もちろん地下からの侵入もできないように、

結界は地下まで施されているのだから、

この聖都の堅牢さと馬鹿でかさには脱帽なのである。



「ここからは魔獣より対人で気をつけて・・・」


サテラさんが言わんとするのは、

盗賊やスリなどの犯罪者への注意なのだろう。

考えなしに向かってくる魔獣と違って、

人は知性を持っているだけに(たち)が悪いのかもしれない。


まぁ、プリンターは僕以外の人が見ればタダの重い箱であり、

とても魅力的なものには見えないし、

持ち合わせのお金も僅かばかりだ。

アンだって唯一の荷物はボロボロのポシェットひとつ。

中にお金が入って入るが、

外見的にとても盗みたいという代物ではない。


仮に盗賊と遭遇した場合、

慌てた僕が魔法を発動して、

うっかり殺しちゃったなんてことが起こりかねない。

そっちのほうが心配なのである。


ウォールタリンの検問所にも、

ギフト持ち憲兵による「看破の瞳」のチェックがあった。

鎧を着て「聖騎士」と名乗るサテラさんへの対応は、

最初の検問の時とは大違いだった。

同行者である奴隷の僕たちも、

憲兵が一見しただけで、

問題なく二つ目の城門を潜ることが出来た。

こんなに厳重な聖都の警備を目の当たりにして、

サテラさんに連れてきてもらわなければ、

絶対にたどり着けなかったと、

あらためて感謝するのであった。


開かれた門の中には、

次の城壁であるウォールカルラまでの1キロ程度の半径を、

聖都中心部を取り囲むように居住区である街が広がっていた。

円を描くように整然と石畳のメイン通りがあり、

道には深く馬車の(わだち)が刻まれている。

その両側には、実に様々な人々が行き交う姿がそこにあった。

中世のヨーロッパそのものの街並みが、

いかにも異世界ファンタジーを感じさせ、

僕の眠っている厨二心を呼び覚ます。


見渡す限りすべて建物は2階建てだが、

多分、城壁より高い建物は建てちゃいけなのだろう。

宗教都市だけあって、教会の数も多い様子であるが、

いずれも高さは2階建ての屋根と同じ高さであった。


道中を一緒に旅をしてきた馬たちとも、

ここでお別れすることになった。

軍属以外、これより先は商人の認可を受けたものか、

職人の運搬用の認可を受けた馬車しか通行することは出来なかった。

延々と続いた麦畑のような距離を歩くのであればウンザリするところだけれど、

次の城壁まで1キロ程度であれば、

プリンターを背負って移動するくらい、

まったくもって問題ない。


乗馬用の馬ではなかったことと、

オンポロの荷馬車であった為、

門前にある馬の仲買人から、

足元を見られたような値段で買い取ってもらった。

馬2頭と荷馬車1台で金貨1枚と銀貨4枚。

相場がわからないから断定できないが、

高いなんて事は無いだろう。



「サテラさん、すごい人がいますね。お店や屋台もいっぱいあるし・・・」


アンもこんなに大きな街には来たことが無らしく、

あたりをキョロキョロ見渡しながら挙動不審な動きをしている。

けれど、屋台のいいにおいがする店の前では確実に足を止めるのだから、

結構食いしん坊なのかもしれない。


「ここは職人さんが多い街だからね。上層で買うよりお得な掘り出し物なんか多いから、私たち駆け出しの聖騎士でもけっこう買い物とか利用しているんだよ」


「へぇ、魔石を使った生活家電なんかも売ってるんですね」


「聖都の魔石製品のほとんどはここの職人街でつくられているの。聖都の主要産業なのよね」


魔石の回収は聖都直轄のギルドが独占している理由がそこにある訳か。

聖都にはギルドとよばれる商業組織が存在している。

国を運営しているのは中央行政府という日本でいう所のお役所なのだが、

経済を運営している統括組織がギルドという事だった。

このギルドには金融・商業・人財の3部門から構成されており、

魔石や魔核の管理は金融ギルドが。

食糧や物資の物流は商業ギルドが。

冒険者などの登録やクエストの発注・受注は人財ギルドが担当している。

その本部は聖都上層にあるらしい。



どんっ。


考え事をしながら歩いていると、

なにかにぶつかる衝撃を感じた。


「にいちゃん、ごめんよ!」


横道から走ってきた男の子と出会い頭にぶつかった。

といってもすんでのところで身をかわしてくれたので、

軽くぶつかる程度の接触しかなかった。

ここまでの道のりで、

元気のいい子供に遭遇したことは無かったので、

なんとなく微笑ましく感じてしまう。


「元気のいい子ですね」


「職人街にはノルマが達成できなかった農奴たちの若い人たちが、労働奴隷として貢納されている事が多いんだ。その人たちはお給料が貰えないから生活は苦しくって・・・」


「奴隷って給料もらえないんですか?」


「所有物に食事を与える責務はあるけど、使用人と奴隷は違うのよ」


アンが給料の受け取りを頑なに拒んだのは、

このルールがある為だったのか。

もっとも、サテラさかから転貸しているのだから、

僕の奴隷に給料を払っている訳じゃない。

転貸している限りは僕の使用人って事で続けていこう。


「だから、労働力にならない小さな子どもなんか、今みたいに悪いこともしちゃうんだ」


そう言って、僕の全財産が入った革袋を、

目の前に差し出してくれた。

まさか、さっきの子供はスリだっていうのか。


「なかなかのスピードだったけど、相手が悪かったね。はい、ちゃんと気を付けてって言ったばかりだよ」



この世界で生きていく事っていうのは、

兎にも角にも難しいものらしい。





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