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3Dプリンターで異世界調査はじめました!  作者: しゅーる君
調査報告書①
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調査報告書① 襲撃の目的とは

また気絶したのだろうか。


先ほどから意識は戻っているのだけれど、

カラダがまったく言う事を聞かない。

まるで金縛りにあっているかのようだ。

どういう状況なのかよくわからないが、

さきほどから頭に感じるこの柔らかな感触は、

なんだか思い当たる事があったような・・・



「・・・気が付いた?」


サテラさんの膝枕だった。

あわてて飛び起きるのだが、

なぜもう少し意識がないふりを出来なかったのか。

猛烈な後悔の念が押し寄せてくる。



「サテラさんこそ大丈夫ですか?」


呆れたような表情を浮かべ、

それは私のセリフだと言い返される。

またこの笑顔を見られただけでも僕にとってはご褒美なのだ。

さっきの異形の戦士は蜥蜴人(リザードマン)という魔物だった。

魔物の中では知性が高く、

剣や鎧で武装しているだけではなく、

集団で人や家畜を襲う事があるらしい。

街道沿いは魔獣除けの聖碑が等間隔整備されており、

日中襲われることはめったにないらしいが、

知性をもった魔物などには効果が薄いらしい。


襲われたのは、ここから10キロほど離れた開拓村から、

農作物を移送していた荷馬車だった。

二頭引きの荷馬車3台で村を出たらしいが、

この馬車以外の人たちは、残念ながら助けることは出来なかった。

馬が2頭助かった為、

動かせる荷馬車に亡くなった人の遺体を乗せて、

開拓村まで戻っている途中であった。

僕は荷馬車に揺られてサテラさんから膝枕という、

絶好のシチュエーションだったのだが、

隣には物言わぬ姿となったご遺体が2体横たわっている。

こんな状況では、とてもじゃないがサテラさんに甘える雰囲気ではない。


荷馬車の御者席には小学生みたいな女の子が座っていた。

後ろの荷馬車を操車しているのも同じくらいの女の子だ。

後ろの荷馬車にはご遺体が4体横たわっているようだが、

遺体にかけられてある麻袋の端から見える足の数でそう分かるだけで、

その袋の下の状況がまっとうな形を保っていない事は、

容易に理解することが出来た。

こんな怖い思いをしたのだから、

馬車を操車して女の子たちも相当辛いはずだ。

操車する手が小刻みに震えている。



「あの化け物は作物を奪うのが目的だったんですかね」


「・・・ええ、そうね」



御者の女の子を気遣いながらそう答えるサテラさんを見れば、

奴らの目的が穀物ではなく、別なところにあった事がうかがえる。

つまり、あの蜥蜴人(リザードマン)が人間種と交配できるって事なのだろう。

この子たちはまだ小学生くらいの年齢である。

やりようのない怒りが込み上げてくる。


だが、魔物とはいえ僕の魔法があいつらを殺したのは間違いない。

僕は他人を傷つけることは嫌いだ。

痛い思いはしたくも無いし、

されたくも無い。


あの時、僕が魔法を使わなければ、

間違いなくサテラさんは殺されていたはずだ。

目的が女の子だとすれば、サテラさんも殺されなかったかもしれないが、

生き残ることより酷いことをされていたのは想像できる・・・



「うっ!」



突然の吐き気で胃の中にあるすべてのものを吐き出す。

かろうじて荷馬車の外にカラダをむけることが出来たのだが、

今更になって体の奥底から、とてつもないもやもやとした何かが突き上げてきた。



これが恐怖なのだろうか。

これが生きるか死ねかという境界線なのだろうか。


魔物であっても僕が殺した。

最初の魔法を使った時も、

一瞬で消し飛んだからよく分からなかったけど、

あの魔族だって僕が殺している。


これは許される事なのだろうか。

これは正義だと証明できるのだろうか。

殺さなければ殺されていた。

たかが調査員のこの僕が、

ここまでこの世界に干渉してよかったのだろうか。



目の前の視界が暗くなっていく。

世界がグニャグニャに捻じり曲がっていく。

涙なのか、鼻水なのか、(よだれ)なのか。

五感のすべてがコントロール不能となり暴走していくようだ。

全身が大きく震えている。

何が起こっているのか。

何が起こっているのか。

何が起こっているのか・・・



僕が僕でなくなってしまう。



「ボーズくん、落ち着いて!」


気が付けば、サテラさんが僕の事を抱きしめていた。

泣きわめく子供を抱きしめるように強く強く抱きしめてくれた。

カラダからどこか遠くの世界に飛び出そうとしている僕の心をつなぎとめてくれた。


「大丈夫だよ。ボーズくんは皆を助けてくれたの。私を助けてくれたの。誰もキミの事を責めたりなんかしないから!」



僕が助けた。

僕が助けたのか。

そうか。

この世界では殺さなければ殺されるかもしれないのだ。

地球では絶対にありえない相手を殺すという行為。

僕はその覚悟も無しに、

踏み込んではいけない領域へと足を踏み込んでいるのだ。


サテラさんが目の前で殺される世界。

そんな世界は何があっても了承する事は出来ない。

あの開拓村から1歩踏み出したという事は、

覚悟を決めなくてはならなかったという事か。


目の前の闇が急激に晴れていくのが感じられた。

そして、いま僕の状態というのもよく理解することが出来た。


すさまじいポテンシャルを秘めたサテラさんの双丘に、

顔が深く深くめり込んでいる。

なんたる柔らかさなのだ。

なんたる戦闘力なのだ。

そしてこの大きさ。

まったくもってけしからん!

まったくもってけはからん!!

まったくもってけしからん過ぎるぞぉ!!!


こうして精神のバランスを取り戻した瞬間、

別の理由で昇天しそうになるのであった。

もちろん、しばらく混乱が続いているふりをしたことは言うまでもない。

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