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3Dプリンターで異世界調査はじめました!  作者: しゅーる君
調査報告書①
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調査報告書① 妄想ファンタジスタ

目が覚めると、覚えのない天井が目に入る。

「石の家」の粗末な天井ではない事は確かなようだ。

そういえば「石の家」の天井は吹き飛ばされてたな。

マーサさん、きっとかんかんに怒っているだろうな。


ごめんエミリー、なんで僕は眠ってたんだっけ。

なんだかカラダが鉛のように重くて動けないや。

なにか大変なことが起こってた気がするけど、

いまはそんなことよりこうやって転がっていたい。

やけに上等な枕があるじゃないか。

こりゃ、あっちの世界にいた時より上等な枕だよな。

エミリーが気を利かせてくれたのかな。

人工知能(AI)なのによっぽど人間臭いのはなんでだろう。


「・・・大丈夫?」


「・・・あと5分」


布団を頭までかぶりたい。

こういう感覚って久しぶりだな。

こっちの世界で羽毛布団なんて贅沢は無理だろうから、

せめてこの柔らかな枕に顔を埋めて眠りたい。


「おい、ボーズ。いい加減にしろ!」


天国からいきなり現実世界に引き戻されたのは、

マーサさんのトゥーキックだった。


「ぐおぅぅぅぅぅ!」


そうだ。

さっき死ななかったようだが、

ババぁ扱いした罪で、いま殺される時をむかえたのであろうか。


「・・・なにするんですかぁ!」


思い当たる節は沢山あるけど、

さきほどの柔らかな最上級の枕が、

サテラさんの膝枕だとわかった瞬間、

マーサさんに目掛けて無詠唱魔法をぶち込みたくなった。


「ふん、それはこっちのセリフだよ」


あたりを見渡すと、

大勢の村人が身を寄せ合い固まっている。

なるほど、ここは教会か。

マーサさんとサテラさんが教会の中にいるという事は、

さっきの化け物たちは追い払えたという事なのだろうな。


「・・・村はどうなりましたか?」


「それは・・・」


口ごもるサテラさんを目で制し、

マーサさんが外を見ろと手で合図する。


「・・・そんな」


村の中心にある教会を除き、

ほとんどの家々が竜巻にあったように損壊している。

気が付けば、焦げ臭いにおいが鼻を突く。

教会も決して無傷ではないようだが、結界による神のご加護なのか、

こうして人々が逃げ込めるだけの形をとどめているようだった。


「・・・魔族だよ。こんな辺境の村なんか襲っても得るものなどありゃしないって言うのにさ」


「どうしてこんな酷いことを・・・」


「もっとも村の1/4はボーズがふっとばした訳だが・・・」


うっ。

しまった。

村の人までぶっとばしてしまったのだろうか?

魔族以上の悪行をはたらいたとすれば、

どんな拷問が待っているのだろう。


貴方(あなた)は何者なの?」


激しい鞭が僕のカラダを打ちのめす。


「ああサテラさん。もっとやさしくお願いします!」


うーん、それは拷問ではなくご褒美ともいえる。

この場に及んでも、妄想ファンタジスタと呼ばれる僕の欲望はとどまるところを知らないようだ。


「・・・無詠唱の魔法ってところかい」


「ありえません。聖騎士、聖国1000年の歴史でも、無詠唱の魔法ギフトを持つものなど・・・」


「なぜそう言い切れる?」


「常識的に考えても・・・」


「常識?あんたみたいな小娘がどれくらいの常識ってやつを知っているのさ」


「それは・・・」


「こんなゴミみたいに辺境の村に魔族なんて襲撃しない。それも「常識」だったろう。ここに魔族が現れると知っていれば、聖騎士団が1個師団くらいで押し掛けてきてたはずさ。今回はたまたま運が良かっただけだ。そこのボーズがとんでもない魔法を使った。それもあんたの言う「常識」とやらで説明がつくのかい?あの魔法が無かったら、あんたも私もあの魔族に殺されていた。そのことのほうが「常識」さ」


マーサさんの言葉に、ただうつむくサテラさん。

このばばあぁ、言いすぎだと思わず殺意を抱いてしまうが、

それをマーサさんにむければ、次こそ間違いなく殺されるだろう。


「思い込みって言うのは、時に自分を狂わせるものさ。自分が目にしたもの経験したこと以外、なにが真実なのかっていうのは良くわからないものなのさ。たとえばこのボーズのことだが・・・」


「えっ、僕はマーサさんの事を悪く思った事なんて一度もないですよ」


「ふん、いまクソばばぁって思ってたくせに」


「なんでわかるんですか!?」


「なにぃ、本当にそう思ってたのかい!」


五体投地で乗り越える。


「ふん、まぁいい。ボーズ、ストレイキャットは合計何匹捕まえてる」


「・・・うーん、1週間で50匹くらいですかね。たいぶコツは覚えてきたから、いまだと1日10匹はいけますよ」


「普通であれば10匹でレベルが上昇する。50匹なら最低レベル4にはなってるはずだが、ボーズのレベルを鑑定してみな」


サテラさんが僕の目を見て近づいてくる。

しかし、見れば見るほど綺麗な人なんだ。

戦闘で汚れているけど、その白い肌は透き通るようであり、

見つめられる碧眼の瞳には吸い込まれそうな魅力がある。

こんな人と一緒になれるのなら、調査なんて放り出して、

サテラさんに一生ついて行っても後悔はしないんだけどなぁ。


「・・・レベル1。ありえないわ」


「世の中の常識が非常識だってことの生き証人だよ。だから全属性適合って事だって否定する根拠はどこにもないってことさ」


言葉を失うサテラさん。

なんか僕の存在が非常識だっていうのは当たりなのだから、

ものすごーーーーい罪悪感を感じる訳で・・・

でも「実はアバターです♪」なんて事も言えない訳で・・・

音のない時間ばかりが過ぎていく事暫し、

見兼ねたマーサさんがやれやれといったように腕組みをほどいた。


「あんたの上司に聞いてみな。あいつなら世の中の非常識に通じているはずだからね」


「マーサさんはクルシェナイ伯とどのようなご関係なのでしょうか・・・」


「それは言わぬが花というものさ。まぁ、昔おなじ釜の飯を食った仲だとだけは言っておこうかね・・・」


「まさか、暗・・・」


「おっと、言わぬが花と言っただろう。そんなに知りたきゃ爺さんに聞いてみるんだね」


じっとマーサさんの目を見つめる姿は、

なにやら意を決したような凛々しさを感じる。

やっぱりマーサさんって只者じゃなかったんだな。

間違いなく怪物だ。(おい、殺されるぞ)


「・・・わかりました。それではお言葉に甘えさせていただくことにいたします」


「それはあんたの勝手だよ」


「はい、ではボーズさんをしばらくの間お借りしたいと思います」


「それがいいさ」


えっ、俺の事か?

そんな勝手を言われても、俺はまだ村の調査をしなくてはいけないんでけどなぁ。

って言っても、その村の大半が無くなってしまったからなぁ。

エミリーは再起動していないし、どうしよう。


「それじゃボーズさん。今から私と契約してたください」


「・・・なんだか分からないけどお願いします」


「今から私と隷属の契約をしていただきます」


「・・・隷属?」


「はい、簡単に言うと、私の『奴隷』となっていただきます!」



調査員。

奴隷へと転職することになった。






















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