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ミトスター・ユベリーン 立ち昇る太陽  作者: カズナダ
世界大戦
22/29

ルリエナ海戦4

 日本海軍第1次攻撃隊、攻撃開始直後


 ビルピッツワーグ級戦艦2番艦『ティルベマルク』・・・。

「見張り員は何をしていた!?」


 ルリエナ洋のど真ん中にニホンの航空機が現れるという、全将兵が予期することができなかった事態に、ティルベマルクの艦長『ロイマー』が怒号に似た質問を飛ばしながら艦橋に入ってきた。


 そして質問の返答を待つことなく窓の外を窺う。


 そこには、艦隊の主力である戦艦に群がる100機をゆうに上回る敵機の大編隊であった。

「一体何が・・・。-ッ!」


 バシュンバババババシュンババシュン


 敵の銃弾が艦橋のガラスを突き破る。ガラス片が艦橋内に散乱し、壁に当たって火花を散らす。ロイマーは身を伏せ銃撃から免れたが、航海長を含めた数名が戦死。それでも艦内通話機を手にする通信手に命令を下す。


「全艦対空戦闘!急げ!!」


 通信手はその命令を一言一句間違えることなく通話機に吹き込む。


 ビルピッツワーグ・・・。

 ティルベマルクは爆弾を投下されなかっただけまだマシであった。


 旗艦ビルピッツワーグには6機の急降下爆撃機が襲い掛かった。


 バゴォォォン


 敵機が投下した爆弾は右舷の中央部に命中。更に立て続けに4発が同じ箇所に命中し、最後の1発は至近弾であた。


「右舷副砲群、全滅!」


 しかし、右舷の15cm連装副砲4基が全て使用不可能になり火災も発生。轟々と燃え盛る炎の中から火だるまになりながら水兵たちが雪崩を打って現れる。


 水兵たちは皆一様に灼熱地獄から逃れる為海に飛び込む。力尽きたものはその場で焼死するが、海に飛び込んだ者も火傷で負った傷に海水が触れれば皮膚の細胞が死滅していく。その激痛は死よりも辛い痛みであろう。


「うぅっ!!」


 偶然にも上甲板に居たミールツは爆撃から難を逃れていたが、人体が焼けることで発生する強烈な悪臭によって吐き気を催す。彼の部下3人も同様だ。


「-ッ!!・・・はぁ。・・・はぁ。」


 ミールツは喉まで上がってきた嘔吐物を無理矢理飲み込み、呼吸を整えてから火災が発生していない左舷から艦内に入る。



 同艦橋・・・。

 ガーデルスは艦橋に入るなり右手に広がる光景に絶句した。まさか聖皇国が誇る主力艦が、居ると思っていなかったニホン軍の航空機に攻撃を受け炎上していた。


「敵機、低空で突っ込んでくる!!」


 艦橋右舷デッキの見張り員の檄が艦橋内に響き渡る。


 ガーデルスは艦橋何に立つ幹部たちとその方向を双眼鏡で確認する。


「奴等何する気だ!?」


「知った事か!全部撃ち落とせ!!」


 誰も予想していなかったがために、対空用として18丁も持ち込んでいた7.92㎜機関銃は据え付けておらず、それどころか武器庫から取り出されてもいない状態であった。


「一体誰が鍵持ってるんだよ!?」


「知るか!ぶっ壊せ!!」


「このっ!!」


 水兵たちは錠前の鍵がないと見るや、機関室から工具を持ち出し錠前の破壊にかかった。だが全金属製の武器庫の扉を閉める錠前はスパナやレンチ程度で壊せるほど軟ではない。


 そんなことしている間にも、敵機はビルピッツワーグとの距離を詰める。


 だが、敵機は100m程のところで海中に何かを投下し上昇を始めた。


「何を落とした?」


 単純な疑問であった。そして見張り員が海中を自艦目掛け向かってくる『何か』を見つける。


「魚・・・?」


 魚にしては長く、ウミヘビにしては太いし蛇行していない。魑魅魍魎なその物体がビルピッツワーグにもたらしたことは・・・。


 バゴォォォンバゴォォォォン


 二回の爆発であった。


「うわぁぁっ!!」


 巨大な水柱が出現すると共に艦全体を大きく揺らす。将兵全員が体勢を崩され、壁や床に叩きつけられ頭部から血を流すものも出た。


「うぅ・・・。」


 ガーデルスもその一人となった。


「提督!ご無事で-・・・ッ!!」


 ガーデルスを気遣った艦長は、艦橋の目の前を通り過ぎ様に銃撃した敵機に射殺された。


「ひっ被害は・・・?」


 それでも朦朧とする意識の中、ガーデルスは座乗する艦の被害を知りたかった。


「機関室、及び右舷外側の推進軸に敵の水中爆弾が命中!」


「艦内に大量の海水が浸入!!」


「船体が傾いています!このままでは転覆も・・・!」


 ガーデルスは艦内各所から挙がってくる被害報告の多さに絶望した。


 誇り高き聖皇国の戦艦群がニホン軍の攻撃に一方的にやられることなど、知る由もないし知りたくなかった。


 出撃の前日、ルッペ元帥は自分を止めようとした。直前にも警告した。だが全て無視した。それの何がいけなかったのか。皆口を揃えて言っていた、ニホンは他の列強より強いが聖皇国に劣る、と。自分もその一人だった。だがルッペ元帥一部の高級幹部や空軍連中は怖気づいたかのようにニホンを侮るなっと。


「ハッ・・・、ハハハッ・・・。」


 ガーデルスはもはや笑うしかない。笑われるのは自分なのに何故。部下からどうすれば良いかと問われても笑うだけしか出来ない。艦が傾こうが関係ない。


「総員たいかーーーんっ!!」


 傾斜が激しさを増し航海長が退艦命令を出した。艦橋が海中に沈むまでガーデルスの笑い声は尽きなかった。


 退艦できたものはビルピッツワーグの航海長を含め200人程。総人員の1割しか脱出できなかった。


 ティルベマルク・・・。

「シャルローグゼナウ、爆発!ビルピッツワーグ、沈没!」


「ビルピッツワーグが・・・。」


 沈み行くビルピッツワーグを見つめるロイマー艦長であったが、不思議なことにどうとも思わなかった。


「これより本艦が指揮を執る。各艦に伝えよ。」


 旗艦ビルピッツワーグと同等の装備を備え、目立った損傷が無いティルベマルクには、その役割は充分に担える。


 そして、損害の全容がまとまった。


「ビルピッツワーグ級2隻撃沈、シャルローグゼナウ級3隻撃沈。大破も3隻。」


 損害は戦艦のみで重巡以下の艦艇には目立った損害は無かった。蒸気帆船のことは一切気にしていない。


「駆逐艦に生存者の救助をさせろ。対空警戒を怠るな!」


 無論救出対象は聖皇国人のみ。そして7.92mm機関銃を据え付け終え、対空警戒を厳とする艦隊に再びニホン軍の大編隊が襲い掛かった。


「300機・・・。1時間たりとも待ってくれんとわ、な。」


 ロイマーはこの瞬間敗北を確信した。だが決して口には出せない上、転舵しようにも密集情態では身動きが取りずらい。前にしか進めないぐらいに。

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