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ミトスター・ユベリーン 立ち昇る太陽  作者: カズナダ
世界大戦
23/29

ルリエナ海戦5

 帝国海軍 第2次攻撃隊・・・。

 村田重治(むらたしげはる)大尉の率いる第2次攻撃隊300機はヨル艦隊の戦艦群に止めを刺すべく落雷の如く襲い掛かった。


 だが友永大尉の報告とは異なり、雲層を突き抜けた機から順に敵艦から放たれた曳光弾に襲われた。


「報告が違う!敵は対空兵装を持っていないんじゃなかったのか!?」


「落ち着け!どうせ苦し紛れの機関銃だ!当たりゃあせん!!」


 対空射撃を掻い潜った九九艦爆はほぼ無傷の敵戦艦4隻に250kg爆弾の集中投下を開始した。勿論今回も重要防御区画(バイタルパート)へ攻撃を集中したが4隻の内3隻が5万t級戦艦であるためそう簡単に撃沈させてはもらえない。かに思われた。


 ドガァァン


「爆弾1発!敵戦艦艦橋に直撃!!」


 艦橋には操舵から通信まであらゆる設備があるが、逆にそこが機能しなければ残った船体など頭の無い蛇。全く役に立たない。


 船内最後尾の応急操舵機を使えばそうとも言い切れないが、船外の船員と機関室員の息が合わなければ曲がる事さえ難しい状態だ。そんな状態で急降下爆撃や雷撃を回避するなど不可能であった。


「雷撃隊に伝えよ。あの艦はもう取るに足らん。目標を変えよ、と。」


「はっ。」


 もはや漂流するだけの敵艦に魚雷を打ち込むよりは、脅威度は小さいものの重巡洋艦に狙いを変えたほうが戦力を低下させ易い。そのことから5万t級戦艦への雷撃を中止させた。


 この艦爆隊の攻撃で敵戦艦1隻を航行不能に、3隻を大破に追い込み、2隻を撃沈した。


 雷撃隊は残るは大破した戦艦4隻と重巡洋艦への攻撃を開始した。


「投下っ!」


 3機編隊の九七艦攻が5個。完全撃滅のため左右から波状攻撃を仕掛ける。いくら回避運動を取った所で15本もの魚雷を回避しきれるわけなく、右舷に3本、左舷に4本の魚雷が命中した敵艦は、成す術なく沈没する。それも4隻。


 また、17隻の重巡洋艦への攻撃も熾烈を極め、瞬く間に14隻が撃沈、残りも大破となった。


「全機、反転離脱!」


 爆弾と魚雷を投下し終えた第2次攻撃隊は上昇し、後から上昇してきた戦闘機隊と合流。機首を母艦に向け飛び去った。


 攻撃開始直後


 ヨル聖皇国艦隊 ティルベマルク・・・。

「撃てーーっ!!撃ち落せー!!」


 据え付けた機関銃は毎分1200発で7.92mm弾を撃ち出す。その発射音は聞く者を恐怖で包み込むであろう。まるで布を力ずくで引き千切ろうとす爆音から、第1海洋界の各衛星大陸の兵士達からは『鳳鳥の金切声』と恐れられている。


 だが、いくら連射できようが当てられなければ意味は無い。そもそも高速で飛行する、それも真っ直ぐ前に飛ぶ敵機に対し対空砲1つが3000発撃って1発でもあたれば御の字と言うぐらいに命中率は激減する。


「グライベールホルスト大破!ザクバーデンセン沈没!!」


 次から次に挙がってくる被害報告にロイマー艦長は目を閉じた。


「艦長!このままでは全滅します!撤退を-」


「何言ってる!ここで引き返そうものなら、世界最強海軍の名に泥を塗ることになるぞ!許可はしない、全機撃ち落せ!!」


 撤退の進言を副長が止めた。副長の言うことにも一理はあるだろうが、ここまで一方的だと全滅してもおかしくないと言うのもあながち間違いではなかった。


「・・・。」


 ロイマーは静かに窓の傍まで歩み出した。


 そして・・・。

「敵機突っ込んでくる!!」


 ロイマーが歩みを止めた直後、敵の急降下爆撃機が艦橋の目の前まで接近し、爆弾を投下した。


「(ここまでか・・・。)」


 死を悟ったロイマーの耳に艦橋の幹部達が伏せろだの逃げろだの言っているのが聞こえたような気がした。気がしただけで特に気にしなかった。


 何故なら・・・。


 バゴォォォォォン


 全て終わるのだから。


 重巡洋艦『ローンヨルク』・・・。

「ティルベマルク艦橋に爆弾命中!」


 窓ガラスも装甲板も粉々に吹き飛び、艦橋だった場所から炎と黒煙が上がる。おそらく全員戦死したであろう。


 1回目の攻撃で大破したビルピッツワーグ級戦艦2隻も沈められ、残る3隻も使い物にならなくなった。シャルローグゼナウ級も同様で2隻が大破した状態で海に浮かんでいた。


「左舷より敵機、突っ込んでくる!」


 海面すれすれを3機の航空機が自艦目掛け真っ直ぐ来る。そのまま体当たりでもするかのように。


 だが1回目と違い、今回はそれらが何をしようとしているかは、艦橋やデッキに居るもの全員がわかっていた。


「ビルピッツワーグを沈めた水中爆弾搭載機です!」


 たった2つで、復元作業を怠ったにしても旗艦を沈めたあの水中爆弾。戦艦の装甲で耐えられなかった水中爆弾。重巡がそんなもの1つでも喰らえば撃沈すらありえる。何としても回避しなければならない。はずなのだが・・・。


「駆逐艦が邪魔で回避運動が取れません!」


 前にしか進めないほどに密集していたことが災いし舵を切ることが出来ない。できることは敵機が爆弾を投下する前に撃ち落すことだけ。


「弾幕張れ!!」


 片舷4丁の7.92mm機関銃が一斉に火を吹き弾幕を形成する。1秒間に20発の速さで銃弾が降り注ぐ。陸戦なら脅威であろうが、ここは海の上。ファランクスや戦列歩兵ではなく高速で飛行する航空機が相手であるため効果が薄い上・・・。


「銃身破損!!」


 摩擦熱で銃身が割れ、射撃不可能に陥る。それも戦果を挙げられないうちに4丁が全て・・・。


 敵機はそのまま突き進み水中爆弾を投下した。


 前述の通りヨル艦隊は前進しか出来ないほどに密集しているため回避など出来ない。


 バゴォォォン


 船体中央部に命中し、機関室は機能停止し左に大きく傾いていき・・・。


 ドガァァァァァァァァン


 火薬庫が爆発し、ローンヨルクを木っ端微塵に吹き飛ばした。


 最も悲惨だったのは援軍と言う名目で弾除けとして編入させたテル連邦とメル合衆国の1万隻もの蒸気帆船であったであろう。


 装備する大砲はヨルの駆逐艦に弾かれ、木製の装甲では機関銃にすら貫通される上、速度では勝てるはずがなく、ましてや対空装備など皆無であった。


 60機の敵航空機に向けられる武器と言えば単発式歩兵銃のみ。対空砲で3000発撃って1発あたれば良いほうなのに、これでは牽制にすらならない。


 1回目の攻撃から生き残った8000隻も溶けるように数を減らし、あっという間に1000隻が撃沈。3000隻が炎上した。


 駆逐艦『キャトル』・・・。

 救助されたビルピッツワーグの乗員は目の前の光景にショック死するものまで現れる始末であった。


「航海長・・・。」


「ミールツ、生きてたか・・・。」


「これは・・・。」


 ルテレベーラで見た最強の艦隊の中核である戦艦が全てニホンの航空機に殲滅され、重巡洋艦も14隻を一気に失ったことで対艦戦闘力は事実上消滅した。


「今の状態で敵艦隊との戦闘は危険です!撤退しましょう!」


 ダメもとでミールツはビルピッツワーグの航海長に撤退を進言した。


「・・・。」


「航海長!このままでは悪戯に兵を犠牲にするだけです!千人の仕官の死で数十万の兵が救われるのなら、自分は処刑されても、一向に構いません!!」


「・・・。君は優秀だ。」


 ミールツは航海長の言ったことを聞き取れなかったが、口の動かし方で何を言っていたのか大体察し、その真意を理解した。


「私の名義で撤退を指示しろ。1隻でも多く生きて帰るのだ!!」


 航海長名義とは、全て罪状を航海長ただ一人が受け入れるということだ。ミールツは命令の承諾と告別の敬礼を捧げた。


 艦隊は最後尾の船舶から順々に散り散りになりながら敗走・・・。して行きたいところであるが、まだ4000隻以上も残っている状況は簡単に敗走させてくれない。


 そして・・・。


「敵駆逐艦せっきーーーん!!!」


 追い討ちを掛けるようにニホン海軍の駆逐艦が現れた。


「高速戦隊、迎撃せよ!!」


 ヨル聖皇国の軽巡洋艦と駆逐艦で構成される高速戦隊が殿軍(しんがり)として前に出る。一人でも多くの成長の兆しがある兵卒を逃がすまで死に物狂いで戦う。その気概を敵艦隊に思い知らせるため。

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