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錬金術の森~未成年孤児エルの半生~  作者: 一仙
第一章 森の迷い子
26/97

26.冒険者の始まり

いつもお読みいただきありがとうございます。今回の年末年始の間に最初から読み直し等をしたところ、共通しない部分や矛盾した点が出て来たのでいくつか訂正しました。大きな訂正箇所は後書きにて書かせていただいておりますので、ご確認くださいますと幸いです。

まだまだ色々と修正点あるかと思いますが、お気づきの部分がありましたらぜひお知らせいただけますと助かります。

 エルはレオ・ジュリアと共に1階のギルドホールへと降りてくる。2階に上がった時よりも冒険者の数は疎らになっていた。一人の職員が近付いてくる。ギルドマスターの部屋へと案内してくれた女性の職員だ。


 「レオさん、ジュリアさん、エルさん、何かお手伝い出来る事はございますか?」

 「サレンさん。エルに冒険者がどうやって生活しているのか教えてやろうかと思ってるんだが、職員の立場から教えられる事があったら補足してもらうってのはお願い出来るかな?」

 「もちろんでございます。エルさん分からない事があったら何でもご質問ください。」

 「はい!サレンさん、宜しくお願いします。」


 エルが深く腰を折り挨拶すると、サレンは少し驚いた表情を見せる。そして少し微笑むとエルの頭をそっと撫でた。


 「エルさん、私達職員にはそのような言葉遣いをしていただく必要はありません。私たちはエルさん達冒険者のお手伝いをさせていただいています。冒険者あっての冒険者ギルドですから、気楽になさってください。」

 「ありがとうございます。でも・・・冒険者もギルドの仲介が無くては仕事もそんなに簡単には見つかりませんよね?誰がどこで困っているか、それがどれだけの危険なのか、それはギルドからの依頼があってこそ冒険者は事前に準備が出来るのではないですか?だよね?レオ。」

 「そうだな。皆がそう言う考えでギルドと付き合えるともっともっと人々も冒険者に対する意識が良い方に転ぶだろうし、ギルドも仕事しやすくなるんだろうけどな。」


 サレンの心にあたたかな風が流れた気持ちになった。冒険者とはギルド職員達がどんなに心を砕き時間を費やしても、その依頼によっては簡単に命を落としてしまう職業だ。そんな仕事を続けていく中で職員に対して態度に我慢ならない冒険者に会う事もしょっちゅうだ。

 しかし、それでも職員はサポートをする事が仕事だ。『もう少し上手くサポート出来ていれば』『もう少し厳しく指導していれば』。そんな後悔はこの長いギルド職員としての年月の中で何度となく味わった。

 そんなサレンにとってエルの言葉は職員の日々の努力をこの年齢にしてしっかりと理解してくれている内容だった。そんなサレンの心を察してかジュリアはエルに真剣な眼差しで伝える。


 「エル様。そのお心、ずっと大切に養ってください。自分の為に誰かがあるのでなく誰かの為に自分が存在している、ギルドの協力無くしては冒険者は存分な力を発揮出来ません。そういった考えが出来ない不届き者がいる事も事実ですが・・・」

 「ありがとうございます。その言葉だけで我々の日々は報われます。今後も冒険者・街の為に頑張りますので、エルさんも冒険者としてご無理だけはなさらないようお願い致します。」

 「はい!さっそく質問良いですか?冒険者はどうやって依頼を知るんですか?」


 エルの質問にサレンが答える。サレンはまず依頼ボードの前へとエルを連れていく。ボードにはたくさんの羊皮紙が貼られていてその羊皮紙と共に番号の書かれた薄い木の板が釘で刺さっていた。何人かの冒険者がボードを見ていたが、サレンとレオ達の顔を見るとボード前を譲ってくれた。


 「エルさん。これが依頼ボードと言って現在ギルドに発注のかかっている依頼の中で冒険者を募っている依頼を張り出す場所です。受付に近いボードから白銀ランクから鉄ランクまで依頼が分かれています。」


 確かにボードは木の枠組みで組まれたボードがいくつか張られておりそのボードの上部に金属板が貼られている。今、エル達の目の前のボードには金色の板が張り付けられている。


 「ここはパーティーまたは個人のランクが金の冒険者たちに出されている依頼が張り出されています。依頼は討伐や採取・雑務等分かれており、依頼の羊皮紙の左上に書かれている絵で何の分野の依頼なのかを冒険者がパッと見て分かるようにしています。」


 羊皮紙の左上部に狼の顔が横に向いた真っ黒のシルエットのスタンプが押されていたり、一枚の葉っぱの模様のスタンプだったり壺の絵柄だったり、いくつか種類が見れた。


 「そして羊皮紙の脇に釣られている薄い木の板はその依頼に対して求めている冒険者の数ですね。数字のみで書かれている板は個人冒険者用、丸い円の中に数字が書かれている板はパーティー用ですね。」


 木の板には『1』や『③』のような数字が書かれている。


 「個人とパーティーでのランクの違いとは何なのでしょうか?」

 「個人ランクはまさにその冒険者一人の冒険者としてのランクを示す階級ですね。パーティーランクと言うのは冒険者同士でパーティーを組んでいる時のそのメンバーの総合力をギルドが判断し付けた階級、と考えていただいて構いません。」

 「パーティーに低いランクの人がいればたとえすごい強い人がパーティーにいたとしてもランクは下がると言う事ですか?」

 「ご理解が早くて助かります。ギルドの定めるパーティーランクに関しては『その依頼を受けるにあたってそのパーティーが無事に戻ってくる事の出来る難易度はどこか』と言う考え方が大前提で組まれます。えぇそうですね。『全員が無事に生還する事が大前提』でのランク基準です。たとえ白金ランクがそのパーティーにいたとしても銀ランクのメンバーが死んでしまう可能性があれば白銀ランクの依頼は紹介出来ませんし、ランクの決定もしません。」

 「なるほど・・・例えばレオとジュリアさんと僕が組んで依頼をしたいとサレンさんの所に来た場合はどれくらいのランクになるんでしょうか?」

 「そうですね。私に決定権があるのならば私は銀ランクの決定も難しいですね。出来ればレオさんとジュリアさんには有事の際だけ手助けしてもらって、エルさんには鉄ランクの依頼からしっかり冒険者のお仕事を経験していただきたいとお話させていただくと思います。」


 ただ依頼をこなさせるだけではない。低ランク冒険者がどうやってランクアップ出来るかを現実的に提案してくれる。一番簡単なのは高ランクの冒険者と組んでいわゆる寄生するようにおんぶに抱っこで依頼をこなしまくればランクは上がるのかも知れない。しかし、それでは本当の意味でその低ランク冒険者は経験を積んだとは言えない。だからこそ、サレンはエルがもしそのパーティーを組むのならばしっかりと底辺からの経験を積む事の大切さを理解させたいと思ったのだ。


 「そうなんですね!あっ、でもそんな組み方をする冒険者もいませんよね?」

 「いえいえ!白金と鉄ランクと言うのは確かにありませんが離れたランクの冒険者がパーティーを組むことは全然珍しい事ではありません。ジュリアさんもその一人ですよ?」

 「えっ!?そうなんですか??」


 エルは驚いて隣にいるジュリアを見上げる。ジュリアは少し恥ずかしそうにエルに説明する。


 「はい。私はこのワックルトに来る前、それはレオ達と創竜の翼を組む前ですね。まだ冒険者として駆け出しの鉄ランクでした。その頃に白銀ランクのオーレルと知り合い、一緒に依頼をこなすようになりました。そして銀ランクに上がった時にこのワックルトに来ました。その時にレオやダン達に出会い創竜の翼に加入したんです。」

 「そうだったんだ?」

 「レオとダンはその時には金ランクだったので、正直レオ達の足を引っ張っていたと思います。でも、レオ達は諦めず私とパーティーを続けてくれ、今は少しは胸を張れるようになったでしょうか?」


 ジュリアはそうふざけてレオに視線を送ると、レオは笑いながらジュリアの背中に手を置く。


 「何言ってんだ!あの頃から魔導師として大活躍だったじゃないか。今じゃ王国の冒険者の中で押しも押されぬ大魔導師さまだ。パーティーリーダーとして鼻が高いよ。」

 「レオさんもジュリアさんも本当に冒険者として立派に活動してくれています。今の白金ランクは当然の評価ではありますが、普通の努力で到達できるものではありませんから称賛に値します。」

 「サレンさんやメルカ様が目を掛けてくれたからさ。」

 「ふふふ。エル様、例えで言うならばもしレオさんとジュリアさんが金ランクでエルさんが銀ランクならば恐らくパーティランクは金になると思います。それは金ランク時代のレオさん達の依頼達成状況と銀ランクになる時のエルさんの依頼達成の予想状況で私が判断したら、と言う推測のお話でしかありませんが。」

 「と言う事はそのパーティーにどのランクの人が何人いるからこのランクって決め方ではなくて、やはりそこに至るまでの個人個人の依頼との向き合い方みたいなものが一番の判断条件って事なんですね?」

 「そう考えていただいて良いと思います。」

 「そっかぁ!頑張らないと!!」

 「ははは!!まぁ、ゆっくり気長にやろう。じゃぁ、今、エルが受けられる依頼にどんなものがあるか教えてやってくれないか?」

 「畏まりました。ではカウンターへ参りましょうか。」


 朝の忙しさから少し解放されたホールではレオ達が連れている子供に興味を示している職員たちのそわそわした様子が見て取れた。しかも案内しているのはワックルト冒険者ギルドの筆頭職員であるサレンである。あの子供は一体?もしかしてどこかの貴族の息子か?など憶測が飛び交う。そんな浮足立つ職員をサレンがチラッと目線を送ると蜘蛛の子を散らすように職員たちは通常業務に戻る。

 人影疎らなカウンターに向かい合って座るとサレンさんは後ろに控えていた職員と言葉を交わす。すると職員は大きなファイルを三つほど持ってきた。そのファイルに挟まれているのは大量の依頼用紙だった。それをめくりながら「そうですねぇ・・・」といくつかファイルごとこちらへ見せてくれた。


 「まずはこれでしょうか。用水路の清掃・防護壁の改修・そしてポーション用のポワム草の採取ですかねぇ。」

 「まぁ、妥当なトコだよな。用水路の清掃はどの町でも冒険者なりたての奴の為の依頼って感じだな。街の人からしても清掃活動してる若い奴を見つけると、あぁこいつが新しく冒険者になったのかって顔を知ってもらえたりもする。まぁ、通過儀礼って奴だな。」

 「じゃぁ、僕も最初は用水路の清掃かな?」

 「そうだな。それをすることで街の生活にも慣れるかも知れないしな。特にエルはワックルトに住んでる訳ではないから、受けておいて損はないと思うぞ。」

 「分かった。ありがとう。」

 「防護壁の改修は本当に力仕事なので前衛を務める冒険者たちにとっては鍛錬の場にもなるので非常に人気ですね。わたしも受けた事はありますが、あれはもう勘弁願いたいですね。」

 「次の日、筋肉痛で宿屋のベッドから起き上がれなくなってたな。」

 「そうですね。もう勘弁です。」


 カウンターに笑顔が咲く。その依頼の中で葉っぱのスタンプが押された羊皮紙を3枚カウンターの上に並べる。「ポワム草の採取」「ドクダミキノコの採取」「宵闇の根の採取」だった。エルはその3つを見てどんな植物かすぐに分かった。サームの家の近辺でよく採取している植物だった。


 「そして恐らくエルさんが一番多くこなすことになるのが薬草などの採取依頼ですね。サーム様から薬学の指導があるとの事も聞いてますので、ギルドとしても依頼しやすいと考えています。それにこの3種類に関しては依頼が張り出される事も多めなので、受けていただきやすい物かと思います。エルさんはこの3種類の植物は見た事がありますか?」

 「はい。まだお師匠様のお手伝いをさせていただくようになって2~3週間ほどですがこの3つはほぼ毎日採取してます。ただ宵闇の根に関しては生えているものが他の2種類に比べると群生している事が少ないのであまり取りすぎないようにとご指導いただきました。」

 「素晴らしいご指導です。駆け出しの冒険者はやはり達成報酬が欲しいので手当たり次第に乱獲してきて、しばらく生えてこないなんて悩みは王国全土のギルドが必ず陥る悩みです。なので、ワックルトでは植物の採取依頼はある程度コントロールしつつ依頼を張り出すようにしています。」

 「耳の痛い話だな。俺らも昔は乱獲しまくってサレンさんやメルカ様に叱られたよ。」

 「懐かしいですね。」

 「エルさんはサーム様からどのようなご指導をいただいてるんですか?話せる範囲で良いのですが。」

 「あっ、たぶん特別な事は何もしていないと思います。朝は森へ採取に連れて行ってもらって採取しながら錬金術師や薬師としての大切な心構えや気を付ける事を教えていただいて、珍しい植物や特に状態が良い物が有れば採る前に必ず絵を描くようにしなさいと教わりました。良い状態で生えている状態を記録として残しておく事は今後の採取の時にも役に立つからと。」

 「絵ですか。なるほど。たしかにそうする事で採取する冒険者が状態の悪い物を間引く事も出来て森の管理だけでなく納品の品質向上にも役立ちそうですね。なるほど・・・」

 「で、帰って来てからはお昼をいただいてお師匠様が製薬する予定があれば横について作業を見させていただき注意点などをご指導いただいてます。製薬作業が無い時は本を読みながら分からない事をお師匠様に質問している感じです。」

 「え??エルさんは薬学の本が読めるのですか?」

 「はい。あっ、専門的な言葉は分かりませんから、それはその都度お師匠様に教えていただきます。」

 「それにしたって・・・」


 と、言いながらサレンはレオとジュリアに目線を送ると二人はエルに気付かれないように静かに頷く。サレンはそれを察し、それ以上の追及は避ける。


 「なるほど。大変参考になりました。では、お時間ある時にぜひ依頼受けに来てくださいね!」

 「はい。宜しくお願いします。」

誤字脱字ありましたらご指摘お願いします。


※訂正点

①サームとオーレルの一人称が被っている為、セリフを分かりやすくする為に統一しました。

 『サーム=儂』『オーレル=ワシ』としました。これで会話が少しでも分かりやすくなれば良いのですが・・・


②帝国の都市ジェリドが冒頭1話では帝国南東部となっているにも関わらず、後では南西部となっておりますので『ジェリド=帝国南西部』で統一しました。こちらも西ドルア大陸の地図でも載せられれば分かりやすくなるのですが、絵心が恐ろしくないのでご容赦くださいませ。


③三つ目に関してはどこを直したとはありませんが、サームの森の小屋からワックルトまでの道程の所要時間を若干短くしました。それにより大陸全体を移動する時間も少し短くしていますので、訂正前のワックルトまでの所要時間で覚えていると、今後に大陸が偉く狭く感じたりワックルトまでがすごく遠い時間軸になってしまいそうなので、サームの小屋からワックルトまでは森の中は歩き平原部は竜車移動で『二泊三日』と覚えていただけると助かります。


長々と訂正説明失礼いたしました。今後とも宜しくお願い致します。

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