【私とキス】
ち(先輩からデートに誘われた……。え、今日の私、変じゃないよね? 寝癖ついてないか5回は確認したし、汗臭くないよね? スカートに皺とかないよね?)
万「えと、ちよ? 大丈夫?」
ち「……!!!!!!」ビクゥ
ち「だ、大丈夫です!!」心臓バクバク
万「じゃあ、行こうか」
ち「たしか、映画を見に行くんですよね?」
万「そう。前にちよと友田さんが見たいって言ってた映画」
ち「もしかして『完全恋愛2』ですか? 先輩、恋愛映画見て楽しめます?」
万「普段はミステリーしか見ないけど、今日は参考にできると思うから」
ち「さんこう……? どういうことですか?」
万「あ、いや、何でもない。言葉の綾みたいなもんだよ」
ち「綾って女誰よ!!」
万「おっと、言葉が通じないタイプの方だった~」
ち「……せっかくのデートなのにいつもと変わらない会話ですね」
万「発端はちよだけどね!?」
万「それじゃ行こうか」スッ
ち「手……? え、あ、はい!!」
ち(すごいサラッと手繋いできた……!? 部室でもよくやってるけど、それとは違うよね? 恋人繋ぎだもんね? そういう意味だよね?)
ち(って先輩耳真っ赤!! 激辛ラーメン食べたんですかっていうぐらい赤い!!)
万「そ、そういえば、今日は晴れてよかったね」
ち「そ、そうですね~」
ち(まさかの天気デッキ!? 先輩ってもっと会話上手な人ですよね!?)
万「そういえば、この前話してたマンガの新刊は買えたの?」
ち「結局本屋5軒回っても買えなくって、いやいやネットショッピングで買いました。店舗購入者限定のストラップ欲しかったんですけどね」
万「あらら、それは残念。まぁ、超能力で探しても見つからなかったからね~」
ち「そんな人気ですか!? 転売ヤーから買うのは嫌だし……」
万「映画見終わったら、一応本屋覗いてみようか」
ち「え、わざわざ付き合わちゃってごめんなさい。良いんですか?」
万「俺も欲しい本があったから大丈夫だよ」
ち「あ、そうだ。今年も海に行くんですかね?」
万「生徒会がやってる海浜掃除のボランティアのこと? 予定は立ててるみたいだよ。今年はいくつかの部活動に応援要請をするって話してたけど」
ち「あ、野球部のマネージャーやってる友達が、愚痴ってましたね」
ち「……もし、生徒会から依頼が来なかったら、2人で海に行きましょうね」
万「そうだね~。夜の砂浜で花火とかやってみたいかも」
ち「めっちゃエモいですね!!」
映画館にて
万「映画、高校生2枚でお願いします」
ち「あ、コレ生徒手帳です」
店「かしこまりました~。高校生2枚で2200円になります」
ち「先輩、日曜日だったらカップル割もあるみたいですよ」
万「あ、本当だ。今度は日曜日に来ようか」
店「……え?」
万「さっきの店員さん、俺のこと不審者を見るような目で見てたね」
ち「私、そんなに幼く見えますかね」
万「身長のせいだけじゃなくて童顔だからね」
ち「私があと5年老けてれば誉め言葉でしたけど、今の私には馬鹿にしてるようにしか聞こえませんよ」
万「可愛いよって誉めてるつもりなんだけどな~」
ち「うっ……!! い、いいから映画始まりますよ」顔真っ赤
3時間後……
ち「うーん!! 映画面白かった~」
万「結構面白いね。ケンのこともナオキのこともめちゃくちゃ応援しちゃったよ」
ち「めっちゃキュンキュンしました!! 3も楽しみですね」
万「ドラマ2クールやって映画2本やっても完結しないんだね……」
ち「まぁ原作が続いてますからね。完結したら揃えるつもりです」
万「ところで完結の兆しは見えてるの?」
ち「……まだまだですね」
万「そこまで描くなんて作者すごいね……?」
ち「案外楽しく書いてるんじゃないですかね」
ち「それにしても映画館の隣に本屋並べるって、絶対思惑ありますよね」
万「まぁ、両方の売り上げに関わってるんだろうね」
万「あ、そういえば、このミステリー話題なんだっけ。知らない作家さんだけど買ってみようかな」
ち「案外衝動買いとかするんですね?」
万「まぁ、まだ触っただけだけど、結末までわかっちゃったし……」
ち「相変わらずの不便体質。それでも買うんですね」
万「うん。意外と面白かったから」
万「あ、そろそろ夕方か。って、もう18時!?」
ち「だんだん陽が伸びてきてますからね。お昼食べてからの集合でしたし、長編映画を見た後なら納得ですよ」
万「ちょっと瞬間移動したいから、着いてきて」
ち「え、どこ行くんですか?」
万「ついてからのお楽しみ」
シュン!!
ち「わ、え? う、海の上!?」
万「多分太平洋ぐらいかな~。一応、日本の領域からは出てないと思うけどね」
ち「私、今、海の上を歩いちゃってます!?」
万「うん。俺の超能力で海の上を歩けるようにしてみた」
万「手を離したら海に落ちるから気を付けてね」
ち「でも、先輩なら助けてくれますよね?」
万「当然」
ち「なら、ちょっと安心しました。アハハ、夕焼け、綺麗ですね~。あ、反対側から月が見える!!」
ち(きっと、世界で私と先輩だけが見てる、2人きりの幻想的な景色……)
万「ちよ、こっち向いて」
ち「はい……? ん……!?」
夕焼けに照らされて、海の上で私たちはキスをした。
少し強引で、けれど、優しい手つきだった先輩の温かさを、私は永遠に忘れないだろう。
「ちよさん、改めて言わせてください。好きです。いつも可愛くて、俺の隣で笑ってくれる君が好きです。怒ったときに頬を膨らませるところも、俺が能力を使うたびに心配そうに見てくる姿も、全部、全部を愛しています。ずっと、傍に居てください」
「……なんですかそれ、まるでプロポーズじゃないですか」
突然の告白。
太陽が沈み切って、満天の星空が海に反射しているのを見つめる。嬉しさのあまり目から雫が零れてくる。軽く拭いながら、先輩の――万くんの顔を引っ張った。
触れるだけの軽いキス。
「私も万くんのことが好きです。ずっと、傍に居させてください」




