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【暖冷椿の企み(不死身先輩編)】

葵「忙しいのに、時間取ってもらってすみません」

椿「いいのよ。後輩から、悩み事があるなんて言われちゃったら、駆けつけるに決まっているでしょう」

椿「それで、どうしたのかしら? どこか怪我でもした?」


葵「……とぼけないでくださいよ。全部、分かってますから」

椿「分かってるって何の話?」

葵「ちよから話を聞きました。万からも聞いてます。それ以外からも、いろいろと」

椿「あら、何のお話かしら? 私を送り出す準備かしらね?」


葵「そうやって悪者顔するの、似合ってないですよ。世界一お節介な先輩さん」


椿「あらら。アナタは見て見ぬふりはしてくれないのねぇ……」

葵「ええ、生徒会長として、話しておかなくてはと思いまして」


葵「それで、先輩の思惑通りに事が進んでるって感じですか?」

椿「ええ、予定通り。万とちよちゃんは上手くいくでしょうね。嬉しいことだわ」


葵「それは、万の好意を断るため?」

椿「意地悪な邪推ね。そうだと言ったらどうするの? 軽蔑する?」

葵「先輩は嘘が下手ですね。お節介なあなたが、そんなことするわけない」

椿「……あなた、本当に意地悪ね。生徒会長様がそれでいいのかしら」


葵「あのままだったら、小菊とちよの関係は消滅してた。破綻でも崩壊でもなく、ただの消滅。互いに禍根を残すことも無ければ、感傷さえ残らない。それを阻止するために貴女が動いたんでしょう?」


椿「あはは。まるで物語の犯人の気分だわ。でも、そうね。憂いていたというのは事実よ」


椿「あの2人は、いろいろな面で脆い。ある意味で言えば、相性が悪いようにも思えるわ。どこかで、そのすり合わせをしなくてはならなかったけれど、そんな都合のいい機会もない」

椿「だから、私は2人の間に立った。それが間違いだとは思わないわよ」


葵「間違いではないが、最善でもない。すれ違う2人をみて罪悪感を抱いた。だから、どちらにも接触せずに1人で黙ることを決めたわけですか」


椿「そうね。そこだけは私の筋書きとは違ったわ。思ったより長くなってしまったし、思ったより先に進んでくれそうで微笑ましいわ」


葵「貴女が考えるより、あの2人には助けてくれる人が多かっただけの話です。それに、こうして私は貴女が黙ったままでいることを許さなかったわけですから」


葵「先輩の筋書きとやらはめちゃくちゃになったんじゃないですか?」

椿「フフ、あのね、葵。この世界は小説なんかじゃないのよ。自分が考えていた通りに物事が進むなんて思うわけないでしょう。ただ余計な心配をして、要らない世話を焼いただけよ」


葵「もし、あの2人が上手くいったのなら、一緒におめでとうと言いに行きましょうか」

椿「そうね。それに、謝らなきゃいけないわね」

葵「謝る? うまく行っているのだから、要らないと思いますよ」


椿「フフフ。アナタは勘違いをしているわ」

葵「…………?」


椿「ただ私は、私が居なくなった後でもあの部活に私の居場所がなくならないようにしたかっただけ。あの2人が離れなければ、今までの楽しい関係を繋ぎとめられると思ったのよ」


葵「そう、ですか……」


葵「先輩、本当に嘘が下手ですね」

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