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【超能力先輩と私】リメイク版

予告した通り、第一話に地の文をプラスしたリメイク版です!!

いろいろキャラの性格とか口調が違って、めちゃくちゃ書きにくかった……。

「ねえ、ちよ。超能力者って信じる?」


 高校生活の始まり。他にはなすべきことがたくさんあるというのに、幼いころからの親友である友田(ともだ) (かえで)はよく分からないオカルト話をはじめた。


「急に何の話?昨日の胡散臭い超常番組見てたの?」


 私は、昨日の夜に母が見ていた都市伝説などを取り上げていたテレビ番組を思い出す。

 否定するように首を横に振ると、楓のふんわりとしたウェーブの髪が揺れた。


「違うよ!! この学校、超能力研究会っていうのがあって、本物がいるらしいよ。超能力使って、お悩み相談みたいなことやってるんだって……」


「へー。なんか昨日のテレビより胡散臭いね」


 真剣な表情で、冗談みたいな話を始める。

 楓の隣に座っていた男の子も、話が聞こえていたのか、若干距離を開けた。知らぬ間にイタイ子扱いされているが、気づいた様子も無く話を続ける。


「それでさ、今日の放課後覗いてみない? ちよ、まだ何の部活に入部するか決めてないんでしょ?」


「まぁ、どうせ一年生のうちは部活に入らないといけないし、そういう変な部活の方が適当に参加出来て気楽かもね。変な先輩とかがいなければ入部してもいいかも…」


 私は、人と比べて少し背が低い。

 だから、運動系の部活には入れないし、興味がない音楽や美術系の部活に入るのも気乗りしない。どこか楽な部活に入って幽霊部員になろうと考えていたところだ。


「ついでに無くしたヘアピン探してもらおう」


 落ち着かないように髪の毛を弄る楓に、本物は居ないだろうとツッコミを入れた。


 さて、自己紹介が遅れたが、私は小桜(こざくら) ちよ。

 昨日から高校一年生になった15歳の女の子だ。年齢のわりに少し背が低いと言われることは多いが、超能力なんて使えない普通の人間である。


 あっという間に放課後を迎えて、楓と一緒に『超能力研究会』の部室を探す。

 校舎の端の方にある汚い準備室の隣の部屋。不自然に清掃された一室には手書きで『超能力研究会』と書かれていた。


「失礼しまーす……」


 怯えている楓が意を決したようにドアを開ける。

 教室の中は、やはり不自然なほど綺麗にされており、長机とソファ、安楽椅子、それ以外にもいろいろと意味不明なものが置いてあった。


 元々はもっと広い教室なようだが、それを隔てるカーテンで仕切られている。


「ん? 一年生か……。部活動見学ならお断りだよ」


「新入部員入れる気がない部活とか許されるんだ…?」


 安楽椅子に座って読書をしている男の先輩が顔をあげずに答えた。

 もう一人奥でテレビゲームを遊んでいるメガネの男はこちらに欠片ほどの興味も示さない。


「見学じゃなくて、ヘアピンなくしちゃって、超能力で探してほしいんですよ。って聞いてますか?」


 読書をしていた先輩が、ふとこちらを見上げ、私と目が合う。

 両肩を掴まれて、王子様のようなキラキラした笑顔で私を見つめていた。


「…う、美しい…。君、名前は!? 身長はいくつだ? 恋人はいるのか? 好きな男のタイプは? 超能力者とも付き合えるか!?」


「へ? 急になんですか!?っていうか、距離が近いです。離れてください!!」


 真ん中で分けた爽やかな髪型、優しげな目元、うっすらと紅潮している頬。


 それはまるで、ずっと憧れていた頼りがいのあるお兄ちゃんのような姿だった。


「ああ、すまない。取り乱した。あまりにも君が可愛らしいものだから…。とりあえず抱きしめさせてくれないか?」


 下心を含んだストレートな物言いに思わず身震いする。


「いやですよ!! なんですか、変態ですか? ロリコンですか? 犯罪者ですか?」


「あのー、私の話聞いてます?」


 置いてけぼりにされた楓が隣から文句を呟く。

 ヘアピンがないことが気になるのか、しきりに髪の毛を触っていた。


「あーごめんね。改めて、俺は超能力研究会部長の小菊(こきく) (よろず)。そっちで眼鏡を拭いている男が(きし) (もみじ)。失せ物探しのスペシャリスト。失くしたのはヘアピンといってたね。椛、探してやって」


「あ、よろしくお願いします。一年の友田楓です。失くしたのはピンクのヘアピンで、二時間目にはなくなってました」


「キョーミない。もう見つけた。女子トイレの奥から二番目の個室。ナプキン用のごみ箱のかげだ」


 メガネをかけ直すと、楓の言葉を遮ってぶっきらぼうにつぶやく。

 言いたいことが終わったのか、何事もなかったようにテレビゲームに向きなおって、続きを遊び始めた。その様子に小菊と名乗った先輩が肩をすくめた。


「嘘…。楓、この人たち絶対でたらめだよ。性犯罪者に、妄想虚言癖。ヤバい人しかいないよ!!」


 楓の言葉を聞いた名探偵というなら、多少は信用できるが、何の根拠も無く断言するのは不可解だ。まさか、本当に超能力を使ったわけでもあるまいし……。


「えと、一応探してみますね……。あはは……」


 気を遣った楓の苦笑いと共に、その場を立ち去った。

 念のためということで、1年生の教室の前にある女子トイレに入ってみる。たしかに一時間目が終わった休み時間、トイレに入ったような覚えがあるが、トイレの中でヘアピンを外すことはないだろう。


「ほんとに信じてるの? あるわけないじゃん」


 言われた通り、ナプキン用のゴミ箱を持ち上げて辺りを見渡す。いくら楓がうっかりミスの多い性格とはいえ、洗面台ではなく個室の中にヘアピンを落とすことはないと信じていた。


「あったら面白いじゃん? なくても面白いし。あ、見つけた!!」


「嘘でしょ!? なんでわかったんだろ」


「でもよかった。おばあちゃんが誕生日にくれた物だから、失くしたらショックだし」


 そんな大切なものを失くしていたのかと、楓の底知れ無さに恐れおののく。

 けれど、結果的に見ればしっかり見つかったので心底ホッとした。


「みつかりましたー? よかったらお話ししましょうよ。小桜さん」


 聞き覚えのある柔らかい声。

 思わずビクリとして方が震えた。


「え? あの先輩わざわざ追いかけてきたの!? 絶対ヤバいって…」


「見つかりましたー。ありがとうございまーす」


 のんきな顔をして、楓は返事をする。

 差して広くも無い女子トイレの中で声にならない悲鳴をあげた。けれど、見つけてくれたにもかかわらずお礼も言わないというのもおかしな話なので、仕方なく女子トイレを出て行く。


「それは良かった。友田、そのヘアピン、少し貸してくれ」


 外に出てすぐに猫背の岸先輩が手のひらを向けてくる。意味が分からなかったが言われるがままに楓はヘアピンを渡してしまった。


 必死な制止もむなしく、岸先輩がヘアピンを握り締めた。


 すると、突然に握ったヘアピンが輝き始めた。


 バシュン!! という奇妙な音と共に不思議な手品を披露した岸先輩の方を見上げると、私たちを気にするぞぶりも無くヘアピンを見つめていた。


「あーあ。好きになっちゃったか―。友田さん、ドンマイ」


「今の何ですか? 変な音しましたよ。ヘアピンが光ったのは、何かの手品ですか?」


「友田、このヘアピン貰うぞ」


「どうぞー。わたし、もういりませんしー」


「は!? ちょっと、楓、何言ってんの? 大切なものなんじゃないの?」


「えー、そうだったかな?覚えてないや。わかんない……」


 つい先ほど、祖母からもらったと話していた物とは思えないほどの無関心さ。

 とくに何かが変わったという様子はないが、明らかに岸先輩のせいであることはわかった。だが、どうすればいいかわからずに慌てていると、薄く微笑む小菊先輩が声を掛けてきた。


「ん-。たぶん、ヘアピンの感情が全部椛に移ったんだよ。椛が友田さんのヘアピンを好きになっちゃったから、ちょっと口説いて、まあ、あっけなく落ちた…的な?」


 ヘアピンの感情?


 飲み込み切れない私をよそに、岸先輩と小菊先輩が何かを話している。ヘアピンを盗られているというにもかかわらず、そっぽを向いたままの楓の肩を揺するが効果はないようだ。


「小桜さん、超能力研究会、入らない? 君の疑問も悩みも全部解決してあげられるよ」


「イヤに決まってるじゃないですか! いくら先輩の顔がいいとは言え、変な人達に囲まれて部活なんてできませんよ。それより、ヘアピン返してください! 楓の物ですから!!」


 我ながらおかしなことを口走ったような気がするが、気にせず岸先輩に詰め寄る。


 手を伸ばしてヘアピンを取ろうとするが、全く手が届かなかった。そんな様子を見て、小菊先輩はニコニコと笑みを浮かべながら楽しそうに眺めている。

 意地悪をする岸先輩の前で飛び跳ねていると、楓から手を引かれる。


「ちよ、もういいよー。返してもらっても、それ、もういらないから」


「ねえほんとどうしちゃったの? 岸先輩、楓に何したんですか?」


「俺は何もしてない。その女とヘアピンの間の関係を断ち切っただけ。簡単に切れる絆だったんだ。そこまで思い入れが強いものでもなかったんだろ」


「あはは、友田さんは他にもヘアピンを持ってるみたいだからね。日替わりで付け替えてるみたいだし、思い入れが薄いのもわかるなー」


 まるで、私の記憶を覗き込んだかのような物言いにゾッとする。

 声を荒げてなぜ知っているのかと問い詰めるが、優しい笑みを浮かべるだけで答えようとしない。


「んー。じゃ、超能力研究会に入ってくれたら教えてあげるよ。あ、オプションで身長も伸ばしてあげようか? ずいぶん思い悩んでるみたいだし。それとも、おっぱい大きくする? ロリ巨乳もウェルカムよ!!」


「顔が良くても変態はちょっと……。楓、行こう」


 これ以上話しても無駄だと悟って、少しでも関わりを避けるために楓の手を引いて逃げ出した。


 まさか、本物の超能力者?

 ありえない。そんなバカげた話があるわけが無い。


 自分にそう言い聞かせて、楓と一緒に学校を出て行った。

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