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口寄せ
初めてそれに気付いたのは周でした。
よく目を凝らすと屋敷の表口近くに黒い煙のようなものが漂っている。門扉に差す木漏れ日の光と陰がつくる妙な加減とも違って、その色は空から積もり地から湧くようにゆっくり濃さを増して、しばしば向こうを見せなくします。
「かなえ?」
不意に口をついて出ていた妹の名に応えてそれが形を象ったとき、それはやはり紛れもない顔形をしていたのです。
「あまねーーたすけ、て」
「かなえっ」
伸ばした手がそれに触れようとした間際、陰が象った妹の像はまたも消えてしまいました。呆然とも残念ともしないで表口脇の勝手口から屋敷に駆け込んだ周は、父 文武に言います。
「父さんっ、かなえが、かなえが死んだっ!」
「見たのか?」
「み、見ました」
「寄せたのか?」
「よ……寄せましたーーごめんなさい、つ、つい」
「……表口から入れてやりなさい」




