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生きとし生けるものたち  作者: 鹿角 望月
共に戦う者
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共に戦う者④

「俺はボサノバ達と一緒に村を出て、魔王軍に入る」


 今度はしっかりと、アカシアは自分の意思をミモザに伝えた。


 ミモザはそれを覚悟していたようだった。


 動揺を見せず、アカシアの覚悟を確認した。


「村を出るなら、二度とここには戻って来られない。それはわかっているんだろうね」


「わかってる。それでも俺は、村を出る」


「……そうかい。だったらアタシから言うことはもうないよ。好きにしな」


 冷たく言い放すミモザに異論を唱えたのはボサノバだった。


「そこで提案なんだが、アカシアにはこの村と魔王軍の繋ぎ役になって貰いたい。今すぐに何かをする訳ではないが、アカシアがこの村に入る許可が欲しい」


 この案は、ボサノバとサレアと考えた、抜け道のような方法だった。


 エルフ族のアカシアとしてではなく、魔王軍のアカシアとして村に入る。


 これが3人が考えた最善の方法だった。


 しかし、ボサノバの提案は、意外な形でローズに止められた。


「……そんな物なくても、好きに戻ってくればいいじゃないか。この村は魔王軍との交流を初めて、変わるんだ。掟もこれから変えていかないとならないからね」


「本当か!じゃあ……」


「いつでも好きな時に帰っておいで、アカシア。アンタはエルフで、この村の住民なんだから」


 アカシアはその言葉が嬉しかった。


 そこからボサノバ達はローズと魔王軍についての話や、ボサノバが狩猟の際に使う道具について話し合った。


 ボサノバは自分が持つ知識を惜しみなくローズに伝えた。


 その話は長引き、終わった時には日暮れ近くになっていた。


 ローズの家を出たアカシアは、家の横に屈む怪しい人影を見つけた。


「何してるんだ、カエデ」


 声をかけられたカエデは驚きながらも立ち上がり、誤魔化すかのように言葉を続けた。


「奇遇だネ、アカシア……こ、こんな所で、何してたの?」


 カエデは気まずそうに顔を背けて、とぼけた様子を見せた。


「盗み聞きでもしていたのか」


「……ちょっとだけ、2人で話さない?」


 図星を突かれ観念したのか、カエデは真っ直ぐとアカシアと向き直った。


 仮面の向こうから覗く瞳は覚悟を決めているようだ。


「俺も話したいことがある」


 2人が選んだ場所は、村のはずれにある、アカシアの家の木の上だった。


「いい場所だね、ここ。村が全部見える」


 枝の上に立ったカエデが村を眺めながら言った。


 この場所からなら村が一望出来る。


 夕日に照らされた景色は綺麗で、木々の隙間から広場に集まる村のエルフの姿が見える。


 広場では残った肉の加工の作業をまだ続けていたようだ。


「村の端に家が欲しいって俺が頼んだんだ。元の村でもそうだったから」


「そっか」


 2人はしばらく言葉を交わさなかった。


 しかし、妙な心地よさが2人の間にはあった。


 夕日も沈みかけ、辺りが暗くなり始めた頃。


「……俺、村を出ようと思ってるんだ」


 口を開いたのは、アカシアだった。


「魔王軍に入ってボサノバ達と一緒に、人間と戦う。危険なのはわかってる。それでも俺は、外の世界を見たいんだ」


「うん、わかってる。……ごめんね、盗み聞きなんかして。本当は、ずっと止めようと思ってたんだ……アカシアは私や、私の家族の命の恩人だから、危険な目に遭ってほしくない」


 アカシアは伝える言葉に悩んでいた。


 今思っていることの全てをカエデに伝えるにはどうすれば良いのだろうか。


 しかし、その答えは一つしかない。


「変わったよね、アカシア。……トネリコの魂石を迎えたから?」


 カエデはトネリコの魂石については知らないはずだ。


 トネリコの過去の真実は、ローズとミモザにしか話していない。


 それでも、何となく察していたのだろう。


「そうかもな。あれから、俺は変わったと思う。元々、村を出たい気持ちはあったんだ。でも、トネリコの事を知ってからは目的が変わったんだ」


 初めはただ、漠然と村を出たいと思っていただけだった。


 トネリコの魂石を通じて、トネリコの思いや人間の事を知ってから、その思いは変わった。


「今は、村の為に。それと俺が、もっと外の事を知りたいと思っている」


「その為に死んで、ミモザやローズを悲しませても良いの?」


 カエデは覚悟を確かめるように、アカシアの目を見ていた。


「そうならないようにはする。でも、死ぬ時は死ぬだろうな。……だからその時は、俺の魂石は、カエデに迎えてほしいんだ」


「私に?」


「ああ。ミモザやローズじゃなくて、カエデに。俺が見て来た物や、考えた事の全てをカエデに知って欲しいんだ。そして、カエデからミモザ達に、俺が見てきた事を伝えてほしい」


「……わかった。その時には。……でも、絶対に約束して。生きて帰って来るって」


 アカシアは答えなかった。


 慰めだけの無責任な返事はしたくなかった。


 それでも絶対に、帰って来る。


 いつかカエデが、自分の魂石を見る時に死ぬ気はなかったと、最後まで生きて帰ろうと足掻いていた事を知ってもらう為に。


「……そろそろ降りよう。暗くなって来た」


 アカシアはカエデに手を差し出す。


 カエデも答えずに、アカシアの手を取った。


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