共に戦う者①
アカシアは自分の家に戻り、落ち込んでいた。
理由はもちろん、村を出るとローズ達に伝えることができなかったせいだった。
なぜ伝えられなかったのか。
アカシアはもう何度目かもわからないため息をつき、部屋の隅に座り込んでいた。
いっそ、このまま何も言わずに出ていってしまうか……。
トネリコのように……。
その時、アカシアの家の前で声が聞こえた。
「アカシアー、いるかー?」
聞き馴染みのない声だった。
外に出てみると、サレアの様子を見に来ていた名前の知らないエルフだった。
アカシアの顔を覆う仮面をまじまじと見つめている。
「あぁ、やっぱりお前の仮面すげぇな。ちょっと手伝ってくれよ」
アカシアの返事も待たず、エルフは踵を返して歩き出した。
アカシアも断る理由もないのでとりあえず着いていく。
たどり着いたのは、村の広場だった。
この場所は村の子供が遊んだり、何か作業をする時に使う場所だ。
そこに数人のエルフに囲まれるサレアの姿があった。
「何をしているんだ?」
「今、サレアに仮面を作ってるんだ。コイツだけ顔を出してるのも変だろ?でも、なかなか気に入ってくれないんだ」
確かによく見ると、エルフ達はサレアを囲んで仮面を作っている。
「アカシアも仮面を作ってくれよ」
仮面作りに集中していたエルフ達もアカシアが来た事に気付き、顔を向けている。
見ているのは、アカシアの仮面だ。
他のエルフが着けている物や、今、掘っている物と比べるとあまりにも違いがあった。
「……ああ、そうだ。名前知らないよな。俺はクヌギだ」
アカシアを連れてきたエルフはクヌギと名乗った。
クヌギに釣られるように、他のエルフ達も名前を名乗る。
なぜかここにいる全員は、アカシアの事を知っている様だった。
「サレアの怪我はもう良いのか?」
「……お腹いっぱいになったって言って、外に来たんだ。アイツ、お前がいなくなった後もだいぶ食ったんだぜ」
食欲があるのは怪我を治す為か、それとも、鬼人族独特のものだろうか。
しかし、最後に見た時よりも顔色は良くなっていた。
「なぁ、それよりも早く、仮面を作って見せてくれよ。どうやったらそんなに良い仮面が作れるか、みんな知りたがってるんだ」
誰かの前で、自分ではない誰かの為に仮面を作るのは初めての経験だった。
今までずっと、1人で生きてきたつもりだった。
1人だったから、誰かに期待される事もなかった。
みんなの視線を感じながら、仮面を作り始める。
魔法を使い、植物を成長させる。
選んだのは黒い木だった。ボサノバと同じ色なら並んだ時に仲間であるとわかりやすいと思った。
大まかな形を整えて、土台ができればあとは細かい調整のために削っていく。
仮面の表情はあまり派手すぎず、しかし、一目見れば魔族だと気付くようにしよう。
サレアの額の右側には薄桃色のツノが生えている。
そこにはツノを通すための穴を開けた。
それと相対する位置にも、もう一本、木でできたツノを取り付ける。
ツノの木は桜色にした。薄桃色のツノとよく合うだろう。
サレアのための仮面はあっという間に出来上がった。
仮面を作り終えた時には、そこにいる全員がアカシアの手元を見ていた。
「それ、ホントに貰って良いの……?」
いつの間にかそばに来ていたサレアに、アカシアは照れ臭さを隠しながら仮面を手渡した。
「着けて貰えると、嬉しい、です」
サレアは受け取った仮面を手の中でまじまじと観察している。
そして、ゆっくりと丁寧な手つきで仮面を被った。
アカシアの想像以上に、サレアによく似合っていた。
「やるじゃねぇか!アカシア!」
周りの男のエルフはアカシアの肩を叩き、女のエルフはきゃあきゃあと黄色い歓声を上げている。
広場での騒ぎを見に来たエルフ達も話を聞き、サレアの仮面を見て驚いていた。
そうして一騒ぎしたあと、解散したアカシアは自らの家に戻り、食事をしたあと、すぐに眠りについた。
今日は色々な事が起こった。
ボサノバやサレアと出会い、ゴブリンの巣を壊滅させた。
疲れのせいだろう。
その日は久しぶりにゆっくりと眠りにつくことができた。




