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生きとし生けるものたち  作者: 鹿角 望月
沼地の襲撃者
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沼地の襲撃者⑦

「ボサノバをゴブリンの巣に案内してほしい」


 それがローズからの指示だった。


 部屋には、ローズとミモザが並んで座り、対面にボサノバが座っていた。


 アカシアは、ボサノバの横に座って話を聞いていた。


 勿論、アカシアはゴブリンの巣の事は何も知らない。


 それは、ローズも知っている事だ。


 しかし、アカシアがボサノバと話をしたがっている事を察していた。


 アカシアもすぐに了承した。


 了承した後で、詳しい説明を聞いた。


 ゴブリンの巣は、ボサノバと出会った場所から少し離れた場所にある。


 今日の朝、それを見つけたエルフからの報告があったらしく、規模や大きさ、どれだけの数が居るのかまだわかっていない。


 冷静になって考えれば、そんな危険な場所に、素性のわからない人狼の魔族と行く事は危険だと思う。


 しかし、好奇心に囚われ、アカシアは考えなしに了承した訳ではなかった。


 ローズやミモザが言うからには何か理由があるのだろう。


 そして、それは多少の危険があっても、大きな怪我をする事はないのだろう。


 それだけの信頼があってこそ、アカシアはその任を受けた。


 ボサノバから詳しい話を聞くのは村を出てからでいい。


 しかし、一応、ここにいる全員に伝えておくべきだろう。


「そういえば、ボサノバの仲間はもう目を覚まして食糧庫の食べ物を食べ尽くしていたけど、良かったのか?」


 アカシアが発した言葉に、ボサノバは深くため息をついた。


「俺の仲間がすまない。食糧庫の物は、俺が責任を持って同じ物を用意する」


「そうして貰えると助かるね。さっきも言った通り、アタシ達はここへ来たばかりなんだ」


 ローズの声には少しトゲがあった。


 しかし、ボサノバは気にした様子もなく立ち上がった。


「俺の仲間、『サレア』は置いて行く。まだ怪我も回復していないだろうからな。すまないが、もう少し、面倒をかける」


 そう言い残し家を出たボサノバを追ってアカシアも家を出た。


 エルフだけが住む村では、ボサノバの外見は目を引く。


 ボサノバを見かけたエルフは立ち止まり、警戒心を隠す事なく視線を外さない。


 それすらも、ボサノバは気にしていない様子でアカシアに話しかけていた。


「この場所は沼地だったよな。どうやって住めるように変えたんだ?」


「俺たちは植物を操作できる。それと水の流れを変えたんだ」


 沼地の整地は、トネリコの記憶にもあった昔からの方法だ。


 アカシアが実際に見るのは今回が初めてだったが。


「そうか。やはり、エルフの魔法はすごい物だな……。そうだ。村を出る前に、サレアの様子を見てもいいか?」


「ああ、構わない。サレアもボサノバの事を心配していた」


「そうか……。いやしかし、見知らぬ村で目を覚まして、まずは飯か。アイツらしいな」


 ボサノバは笑っていた。


 その笑顔が邪悪なものに見えたのか、すれ違ったエルフが後ずさる。


 サレアのいる家に着いた。


 ボサノバは家の中で2人で話をしている。


 アカシアは家の外から会話を聞いていた。


 エルフに助けて貰った礼として、ゴブリンの巣を襲いに行く事になった事や、怪我の治療の話をしている。


「ねぇ、何があったの!」


 焦った様子で現れたのは、カエデだった。


 カエデも、サレアの様子を見に来ていたらしい。


「ボサノバと一緒に、ゴブリンの巣を襲いに行く事になった」


 アカシアは淡々と、ローズに言われた事をカエデにも伝えた。


 カエデは少し固まり、ローズの家がある村の中央に走っていった。


「悪いな、待たせた。行こうか」


 入れ替わるように家から出てきたボサノバと共に、アカシアは村を出た。


 ボサノバから聞きたい事は沢山ある。


 ゴブリンの巣まで遠いことが今は嬉しかった。

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