第91話「ミオを探して」
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グループトークが動き出した。
ナナ〈私も既読にならない〉
カイ〈電話してみました。出ません〉
レイ〈ミオさんが住んでいる方角に、気配がありません〉
ソウが「気配って何ですか」とレイに返信しようとして、やめた。今はそこじゃない。
テル〈探しに行く〉
ソウ〈待ってください。横浜に行ったはずです。消えたビルの跡を探しましょう〉
全員からすぐに〈行く〉が返ってきた。
横浜の最寄り駅に、一時間ほどで全員が揃った。
テルが「待ち合わせもできるじゃないか」と言った。
「何も難しいことは言っていないですが」とソウが答えた。
「お前ら全員を一か所に集めるのが、なんか信じられない気がして」
「なぜですか」
「みんなバラバラじゃないか、普段。カイは体重気にして一人で走ってるし、ナナは遅刻ギリギリだし、レイはどこにいるか分からないし」
「でも来ましたよ」とナナが言った。
「そうだな」とテルが言った。「まあ、なるようになる」
建物が消えた区域は、駅から歩いて十五分ほどだった。
途中でニュースの速報が流れた。スマホの通知で確認した。
〈横浜の建物消失現場周辺で、今朝から物品の自然落下が報告されている。一定の区域内で重力の方向がランダムに変化しているとみられ、市は立ち入りを制限している〉
「……重力が乱れてる」とカイが言った。
「副作用ですか」
「過去の副作用が今になって出てるのかもしれません。建物が消えた場所の周辺で、空間が不安定になってる」
「危ないですか、近づいて」
「多分——少し、危ないです」
全員が立ち止まった。
「でも行きます」とソウが言った。
「行くんですか」とナナが聞いた。
「ミオさんがいるなら。もし危ないなら、早く連れて帰らないといけない」
「俺は行くけど」とテルが言って、ソウを見た。「お前は俺が何か使っても怒らないか、今日は」
「今日くらいはいいと思います」
「珍しい」
「非常時です」
区域に近づくにつれ、確かに何かが変だった。
ペットボトルが転がっていた。どこから来たのか分からない方向に転がっていた。電柱が少し傾いていた。木の葉が斜めに落ちていた。
「確かに重力がおかしい」とカイが言って、自分の周囲だけ重力を安定させた。「みんなの分も調整します」
「使ってますよ」とテルが言った。
「非常時なので」
「まあ、なるようになる」
空き地があった。
フェンスが張ってあって、立入禁止の看板があった。でも、フェンスの外から中が見えた。
コンクリートの地面だった。建物の基礎だけが残っていた。何もなかった。
ミオが、その前に立っていた。
フェンスの外で、ただ立っていた。
何かを言っていた。声にはなっていなかった。
「ミオさん」とソウが言った。
ミオが振り返った。
泣いていた。
「……ソウさん」
「来ました」
「来ちゃったんですか」
「全員来ました」
ミオが後ろを見た。テルとナナとカイとレイが、少し離れた場所に立っていた。
「……来ちゃったんですね」
「心配したので」とソウが言った。
ミオがまた前を向いた。空き地を見た。
「謝ってたんです」とミオが言った。
「消えたビルにですか」
「誰もいないのに——でも、謝らないといけない気がして」
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