第92話「ミオの千年分」
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全員が、ミオの周りに集まった。
フェンスの前、コンクリートの地面の上に立って。誰も何も言わなかった。
テルが少し離れた場所にいた。カイが横に来た。ナナがミオの少し後ろに立った。レイが左側に立った。
「来なくてよかったのに」とミオが言った。
「心配したので」とソウが答えた。
「電話、出られなかったです。電池が切れてしまっていて」
「そうでしたか」
「連絡できなくてすみません」
「いいえ」
空き地をしばらく見た。
何もなかった。ただのコンクリートだった。建物があったとは思えない、普通の空き地だった。でも、確かにここに何かがあって、それが消えた。
「百年前、ここで複製をしていました」とミオが言った。
「何を複製していたんですか」
「食べ物と、家具と——小さな物を、たくさん」
「誰かのために?」
「この辺りに暮らしていた人たちのために。物が足りない時代だったから。何度も何度も、同じものを複製した」
「善意だったんですね」とソウが言った。
「善意でした。でも——結果として、空間が傷んだ。今日消えたのは、その傷が出てきたものです」
「ミオさん」とナナが言った。
「はい」
「今まで何回、世界が崩れるのを見てきたんですか」
「数えたことがあります。六回確認した。もっとあったかもしれない。一番古い記憶は——千年以上前です」
「千年以上前から、ずっと覚えてるんですか」
「私だけが覚えています。世界がリセットされると、他の全員の記憶は消えます。でも私は、消えなかった。なぜかは分かりません」
「……それは」とナナが言って、少し黙った。「ずっと一人でいたということですか」
「そうです」
「一人で覚えていることが——」とカイが言って、言葉を探した。「つらくなかったですか」
「つらかったです」とミオが静かに言った。「でも、この世界が続いていくのを見ることが好きだったから。消えてはまた始まって、また人が生まれて、また誰かが笑って——それを見るために、一人でも覚えていられました」
「じゃあなんで今回は」とテルが言った。「今回は違うんですか」
「今回は——みなさんがいたから」
全員が少し黙った。
「千年以上、知っている人が誰もいなかった。私が何者かを知っている人がいなかった。でも今回は——ここに来てから、初めて、全部話せると思いました」
「謝りたかったのは」とソウが言った。「過去のことを、誰かに伝えたかったということですか」
「そうかもしれません」とミオが言った。「消えたビルは何も言わないし、誰もいなかったけれど——でも、謝らないと、次に進めない気がして」
「次に進む、というのは」
「封印のことです」とミオが言った。「今まで謝れなかったことを全部——せめて形にしてから、手放したかった」
「そうですか」
「千年分あります。一日では足りないです」とミオが少し笑った。「でも今日だけは、ここに来てよかった」
「ミオさん」とソウが言った。「一つ聞いていいですか」
「はい」
「今回が——今までのサイクルと違う可能性は、あると思いますか」
ミオが少し間を置いた。
「あると思っています」
「根拠は」
「根拠はないですが——感覚として、今回は違う気がします」
「なぜですか」
ミオが空き地を見た。コンクリートの地面を見た。それから全員を見た。
「今回が——最後のチャンスかもしれない。そして——」
風が吹いた。
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